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三者面談4

 と言う事で、一週間、放課後に三者面談を行うことになった。しっかり、あの五人も残ってくれている。

「何で、俺たちまで・・・。」

 風間君は、まだ嫌そうだった。しかし、早川君と鈴木君は、観念したようだ。

「ま、良いじゃないか。俺は、田辺ちゃんのお願いだから聞いても良いかなって思ってるよ。田辺ちゃんがいなかったら、お前らを刺してたかもしれないし、友達にはなれなかったと思うからなぁ。」

 早川君のセリフにはとても説得力があった。今では、自分がしたことを軽く言えるようになっているのだから、それだけ彼も成長したということだろう。

「そうだな。田辺ちゃんは、他の先生と違うし。助けてやろう!」

 風間君もようやく協力的になってくれた。

 さて、最初の親子がやってきた。最初の子は、和田義行。この子は、学校を怖がっている子だった。

 五人は、廊下にいて、教室の中で三者面談を行うことにした。

「和田君ですね。えっと、和田君は、学校が怖くて来ていなかったと。」

 和田君は、下を向いて小さく頷いた。

「大丈夫よ。実際に、学校に来て見てどう?そんなに怖いとは感じなかったんじゃないかなぁ?」

 と、聞いてみると。

「今は、放課後であまり生徒がいないじゃないですか。ここの学校は、授業もろくに受けられないとか聞いてますし。」

 親の台詞だった。学校の悪い評判は、当然親の耳にも入っていた。

「まぁ、そうですが。では、なぜ彼をこの学校に入れたんですか?」

 私がそう聞くと。

「この学校って、学校に行かなくても卒業出来るらしいじゃないですか?」

 ろくに出席を取らない、成績が悪くても何とかなるという噂はかなり広まっているようだ。楽して学校を卒業できるということがわかっていることもあって、この学校に子供を入れたということらしい。

「まぁ、そう言う噂はあるみたいですけどねぇ。」

 冷や汗をかきながらそう言った。

「和田君は、学校が怖くなかったら来てくれるかなぁ?」

 親の言葉を無視して聞いてみた。この親は、何を言っても無駄だと思ったからだ。

「うん・・・。」

 うつむいたまま、軽くうなずいてくれた。本当は、学校に行きたい、そして、友達を作りたいときっと思っているのだろう。

「この学校って、怖い生徒もたくさんいるんじゃないですか?」

 母親が子供の意見を覆した、その時・・・。

ガララ・・・

 あの五人が入ってきた。

「この学校は、怖くなんかないよ。」

 白田さんが真っ先に入ってきてそう言った。

「そうだよ。ろくな学校じゃないかもしれないけど、別に怖くなんてないよ。一緒に学校に行こうよ!」

 風間君は、笑顔でこぶしを握っている。

 すると、和田君が彼らを見て、こわばっていた表情を変えた。この学校のイメージが変わったということだろう。

「俺、明日から学校に来ようかな。」

 と、小さな声で言った。やったね!

「俺、早川、よろしくな!」

 早速、早川君が自己紹介をした。みんな、続いて自己紹介をした。そして、五人の輪の中に普通に和田君は入っていった。

 和田君たちが教室から出ていき、次の生徒が入ってきた。次は、中野優。女の子だ。友達がいなくて不安らしい。下を向き、もぞもぞしている。

「友達がいないのは、みんなそうなのよ。」

 と言うと、中野さんの親は。

「そうよ。ここは、いろんなところからみんな来てるんだから、ね?」

 この親は、一緒に説得してくれるようだ。

「総合学習の時間でグループ学習をしようと思っているし、きっと友達も出来ると思うわ。」

 そう言うと、ちょっとは来ても良いかなって感じの表情になってきた。そこで、白田さんと福島さんを教室の中に入れると、二人が中野さんに積極的に話しかけてくれた。みるみる中野さんの表情が明るくなっていくと、母親の表情も緩んでいった。


 次の日、学校に行ってみると、ちゃんとあの二人が来ていた。そして、五人組が七人組に変わっていた。今日の三者面談は七人が協力してくれる事になった。

 今日、最初の面談者は井上幸助。彼は、めんどくさいと言っていた生徒だ。髪の毛がボーボーと伸び放題で、いかにもめんどくさいといいそうな雰囲気だった。

「学校が、めんどくさいのね。」

 そう聞くと頷いた。とても難しそうな雰囲気がする。親も気が弱い人のようであまり口出ししない。

「めんどくさい言っていっても、井上君の家から学校まではそんなに時間はかからないでしょう?今日は、どのくらいかかったの?」

 そう聞くと、下を向いてしまった。あまり遠くはないはずなのに、なぜかうつむいたので、焦ってしまう。

「二十分位。」

 ぼそりと吐き捨てるように井上君が言った。

「二十分くらいでめんどくさいって言うな!俺なんて、毎日一時間もかけて学校に来てるんだぞっ!」

 すると、勢いよくドアを開けて早川君が入ってきた。

「んな事言ったってさぁ、かったりぃんだからよぉ。」

 井上君は全然来る気がなさそうだ。早川君の言葉も受け入れてはもらえなかったようだ。

「家でも、この一点張りなんですよ。」

 親も困っているようだ。すると、教室内に七人全員が入ってきた。すると、井上君の顔が変わった。

 さっきは、嫌々な表情だったのに、今は晴れやかな表情になっている・・・。井上君の目線を追ってみると、中野さんを見ている。どうやら、中野さんに一目惚れしたらしい。

「俺、明日から学校行くよ。」

 ポーっとした顔でそう言った。中野さんのおかげでもう一人学校へ来てくれることになった。

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