三者面談3
数日後、返事が続々届いた。それを見ると、学校がめんどくさいとか、友達がいないとか、学校が怖そうだからとか、何と無くとかあった。
想像していたような答えもあれば、想像していなかった答えもあった。想像していない答えがあっただけに、どうやって説得すればいいんだろうかと自宅の部屋でアンケートとにらめっこをしながら頭を抱えた。そこで、大塚先生に相談することにした。
「もしもし、大塚先生?」
「お、田辺じゃないか、何だ、どうかしたのか?」
そこで、私は今回の事を話した。もちろん、作戦の内容もかいつまんで話した。
「そうか・・・、偉いなぁ、お前は。そうだなぁ・・・、今、時間あるか?会って話した方が早いだろう。」
大塚先生と食事をすることになった。場所は、私の家の最寄り駅のすぐそばのファミレスだ。ファミレスに着くと、まだ、大塚先生は来ていなかったので、先に席について大塚先生が来るのを待つことにした。
それから、十数分がたって大塚先生が到着した。急いでお互いに注文をすることにした。大塚先生はかなりおなかをすかせているようで、ハンバーグセットに大盛りのライスとドリンクバーを頼み、私はスパゲッティボロネーゼとドリンクバーにした。
一段落したところで、水を取りに行き、戻ってくると、大塚先生は水をさっそく一口飲んだ。
「えっと、学校が怖いって言う生徒かぁ、確かに、あの学校は怖いって噂も流れてるからなぁ。でも、これは、生徒がお前に会えば何とかなりそうな感じだけどなぁ。」
「どうして?」
「あの学校は、ろくな先生がいないってよく言うからな。でも、お前は違うだろ。ちゃんと生徒に向き合ってるじゃないか。他の先生はこんな事をしないんだしな。」
「生徒が、そういう風に考えてくれれば、何とかなるかもしれないね。」
「そうなんだよ。それと、今度はと・・・友達がいないかぁ・・・。これは、総合学習の時間とかにグループ分けの学習をするとかで何とかならないかなぁ?」
急いで私は、鞄からメモを取り出しグループ学習のことを書き出した。
「それにしても、学校がめんどくさいとか何と無くは困ったなぁ。めんどくさいって言うんじゃ、学校にきてくれないだろうからなぁ・・・。何と無くも同じだろうし。」
大塚先生が頭を抱えてしまった。何年も教師をやっている人が困っているんだから、私なんて困るに決まっていると言ってもいいだろう。何と無くは、あの五人に何とかしてもらえるかもしれないけど、めんどくさいことは困ってしまう。
「そうだなぁ、何とか親に説得して学校に来てもらえるようにしてもらいたいが・・・。」
「でも、親を頼ると言っても、親を本当に頼れるものなのかが問題なんじゃない?」
注文していたハンバーグセットとスパゲッティが並べられた。大塚先生は、無器用にハンバーグを切り分けておいしそうに食べ始めた。
「そうだなぁ。学校の楽しさを伝えれば、来てくれるんだろうけどなぁ。」
スパゲッティを飲み込んで、ドリンクバーのアイスティを一口飲んで口の中を空にした。
「教師の私でさえ、慣れない学校だから、難しいかもしれないけどね・・・。」
慣れない手つきで何とかハンバーグを切りながら、大塚先生はゆっくりとハンバーグを口に運ぶと、すぐに、ライスを大きく頬張った。それをおいしそうに飲み込む。
「そこを何とかやってみるんだよ。あの学校でもお前のクラスに真面目に授業を聞いてる生徒がいるだろ?そいつらは学校の事を楽しいと少しは思ってるかもしれないじゃないか。」
あの五人に助け舟を出すとは。最初から出しておいたから何とかなるかもしれない。