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三者面談1

 私のクラス――他のクラスもだが――には、来ていない生徒が多い。三十人クラスだが、そのうち来ていない生徒は十二人。小林先生に「来るように呼びかけてみては?」と言う事を何度も言ってはみたものの、もちろん、受け入れてはもらえなかった。でも、私は、どうしてもみんなに学校に来てもらいたいと思い、三者面談をやろうと思ったのだ。

 普通の学校だったら、三者面談どころか、家庭訪問をやる。私の学校は両方とも無いのだ。家庭訪問をやるには、生徒がいろいろなところから来ているだけに難しいかもしれない。だけど、三者面談だったら父母の方から学校に来てくれるのでこちらは可能ではないかと思った。

「小林先生。」

 職員室で、小林先生にもう一度お願いしてみることにした。

「どうしました?」

「三者面談のことなんですけど・・・。」

 まだ、そこまでしか言っていないのに、小林先生はすぐに返してきた。

「あぁ、それだったらやりませんよ。うちの学校はそう言う事はやらないことにしてるんですから。やるのは三年生だけですよ。」

 小林先生は、私と目を合わせようともしなかった。三者面談をやるのは三年生だけというのが、この学校の方針なのだ。それを変えることはできないということらしい。

 肩を落として自分の席に戻ると、久保先生がやってきた。

「田辺先生、無理ですよ。ここの学校は、一、二年生は生徒と先生の二人で面談をやるだけなんですよ。それだって、強制じゃないから誰もやらないと言うのに。」

 この制度自体がそもそもおかしいと思う。生ぬるいことをやっているから、教師はなめられっぱなしになるのだろう。

「久保先生は、それで良いと思っているんですか?」

 私は、強く久保先生にそう言った。久保先生は、後ずさりして、引きつった顔になった。

「はぁ・・・、そりゃあ、良いとは思いませんけど、それが学校の方針なんで・・・。」

 気が弱い久保先生らしく、学校の制度を変えようとは言ってくれなかった。

「それだから、この学校は変われないんです。私は、やりますよ、何が何でも。そして、クラス全員が集まれるようにするんです!」

 力強く握りこぶしを天井に突き上げ、言った。

「確かに、僕だってそうしたいんですよ。でも、生徒が引き受けないと思いますが・・・。」

 背を丸め、久保先生は軽く頭をかいた。


 家に帰ると、まだ学校に来ていない生徒に手紙を書くことにした。

 安月給には厳しいが、自腹で切手代も払わなくてはならない。経費としたいところだが、あの学校のことだ。経費にしないうえに、三者面談自体をつぶされかねない。

 私は、一日で書き終えると、次の日の朝にポストに投函した。

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