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2_ 然の出来事(1)

「ついに来たか」

「……きちゃった。てへぺろ☆」

 どんな場所を想定したセリフだ相方よ。……相変わらず場違いな奴がいることは置いといて。


 半日ひたすら森の奥へと突き進んでやっとそれらしき場所にたどり着くことが出来た。と言っても深い瘴気の霧のせいで堀と跳ね橋っぽい何かしか確認できない。

 奥には城か砦みたいなものがあるんだろうか?霧が濃すぎて全体像がわからないのが若干恐怖でもあるけども。

 まぁ今更恐怖したところで仕方がないわけで。

 ただ、不思議な事にここまで敵が出てこなかった。

 予想外れもいいとこだ。てっきり高ランクの魔物や魔人がうろついてるもんだとばかり思っていた。

 それがびっくりするほどに全く現れない。魔王とか偉そうな奴には大抵部下とかいるんじゃないのか?昔はあちこちたくさんいたらしい魔王も今じゃ淘汰されてここだけだから、あんまり最近流行の魔王事情なんてわからんのだよね。困ったもんだ。


 とりあえず前に進まない事にはどうにもならないと慎重に跳ね橋に足を踏み入れ……

「うっ」

 途端に、周囲が変化した。

 霧が溶けるように散り散りになり、視界が鮮明になると、さっきまでそこにあったはずの堀も跳ね橋もすべて消えていた。

 古風な木のドアが1個だけ。

 後はすべて真っ白な小空間に放り込まれた。


 「はあああああああ!?!?ちょちょちょ待て待て待て。何だここは!?」

 と声に出そうにも驚いて声すら出ない。思考だけが先へ先へと急かされて冷静さを掻き消していく。

 と、飛ばされた!?

 魔法を行使した相手も感知出来ないし詠唱すら聞いてないのに、いつ俺は魔法を使われた?

 この世界じゃ魔法にしても魔道具にしても詠唱は必須だったはず!?

 湧き上がる疑問が恐怖に代わるのを必死に抑えつつその先にある扉に目を凝らす。


 そして。

 ヤバいやばいやばいあれ。絶対危険がダメあぶないっ!!!

 どう見てもあのドアは罠だろ?

 隣を見ると相方はもう姿を消していた。こういう所だけは無駄に出来の良い相方だ。危険を感じて身を潜めたのだろう。

─どうする?やっぱりボクが開けたほうがいいのかな?

 それでも相方はこそっと相談してきたけども。いや、まだだ。敵が姿見せてすらいないのに、こちらの手札は切るべきじゃないと直感が告げる。

 これほど大掛かりにしかけておきながら顔も見せないで殺すとか、どうなんだ?あるのか?実際ものすげーありそうだけども。

 いやでもそんな実力差があって殺すなら、たぶん初手で殺してるんじゃないのか?この飛ばされる魔法を一瞬で構築するくらいならたぶんとっくに俺なんか殺されてるはず。というか、そう勝手に結論づけて落ち着かないとやってられない。

 何より相棒は奥の手だ。そう簡単に使えるかっての。

「とりあえずはちょっと大人しくしてろよ?」

 腰に括りつけられた魔道具袋に祈るように手を当てて、相方に呟きながら何とか落ち着きを取り戻す。

 

 試しに腰袋から採集用のナイフをドアに投げてみる。

ドアに刺さるように投げたのだがキーンと音を立てて弾かれ、目の前で落ちた。あのドア自体が魔法なのか?


 どうみても罠だが、いったい何かあるんだろうか?

 クソがっ。その挑発受けてやる。

 諦めからの投げやり精神は俺の十八番だろう?開き直って行こうじゃないか。


 落ちたナイフを回収し深呼吸で息を整え覚悟を決める。

 扉を今度こそ慎重に開け放った。


 ……。


 現在進行形で今これから何を言おうとしてるのか、自分でも整理出来ていないのだけど。

 なんだっけ?

『トンネルを抜けるとそこは女子更衣室だった』

 みたいな有名な文章があった、はず。

 初めて聞いた当時は「ソンナ馬鹿ナ!」とか思っていたのだけど。あるんだね。そんな馬鹿みたいな世界、本当にあるんだね。


 ドアを開けたらそこは紛うことなき喫茶店だった。


 女子更衣室じゃなかったのが悔しいが、それは置いといて周りをみるとメニュー表まである。コーヒーにもやたら種類があった。テラス山産、ミジュー高地産などなど。各地のコーヒーが売りの喫茶店だった。ってあれ?ミジュー高地ってあれ130年前に魔人戦争で消滅したんじゃなかったか?気のせいか?

 だがそんなことをすべて脇に置いて真っ先に考えるべき問題となっているのは目の前の光景だった。


「……だから、ご主人様に捨てられたらもう私は女郎蜘蛛として生きるしかないのよ!!」

「ひぃい。それだけはヤメテケロ、マイハニー。ボクは見捨てたりしないよ?」

 カウンターの椅子に腰かけて会話する謎の物体が二つあった。


 さて、どこからツッコめばいいんだろう。

 まずこっちを完全に無視してる。俺は敵として認識されてないんだろうか?いやそれが百歩譲って問題ないとしてもこいつら一体何なんだ!?もはや人間じゃねぇし!


 一方は、人間の言葉を操り、椅子に腰かけているカエル。身長は小学生くらいだろうか。しかしなぜか当然のように服着ている!?

 わかりやすい所で言うなら『小さい頃、絵本に出てきたカエルくん』って言えばいいんだろうか?

 もう一方は、カエルくんの相方のがまくん、などではなくメイド服を着た金属っぽいロボット!?だった。これも例えていうと、『地球の為に80から2引いたあたりの住所からごくたまに息子を助けに来るお母さん』をかわいくした感じだ。

 手足はつなぎ目のないツートンカラーの全身タイツさんなんだけど恐ろしい事にどうみても目の前のそいつは全部金属光沢を放っている。この世界にきて10年あちこち転々としたが、ピンクとブルーの淡いパステル光沢とか、当然そんな金属みたことない。

 そしてごくごく典型的なメイド服を着ているのだがなぜかそれまでパステル金属光沢を放っていた。……意味不明だよな。果たして一体俺は何を見ているんだろうか?

 というか動いてしゃべれるカエル&金属ロボとか、今どきの魔王って奴はこんなんなのか?でなければ、こいつらが魔王の部下なのか?


「じゃあもういっそご主人様のツチノコで一緒に星屑ロン※●スしましょうよ☆」

「ぴゃああああああああ。イヤンイヤン」

 そしてどう見てもこいつらの関係性がバカップルにか見えないんだが、これは……。


 もうわけわからん!!!

 くっそ早速テストに出やがった。フラグ回収速すぎだろ。

 とりあえず、何か触れてはいけないものなんだろうという事だけは整理が追いつかない頭でも理解できたので、そっと帰ろうとして忍び足で後ずさろうとしたのだが。


「「もう扉ないよ?」」


 二体同時に言われるまま振り返ってみると、つい今しがたまでここにあった扉は既に消えていた。

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