クールに振舞うのは大変なのだ。
追いかけてきた瀬奈は、
「ちょっと、待ちなさいよッ!」
あたしはピタッと止まる。
「なに?」
よくやった、あたし!!
冷静な声を見事だしたっ!
「なんで、抜け忍になったの!?」
抜け忍って言うのは、暗忍から抜けた人のこと。一代前のボスが少年漫画好きで、○○○という漫画のマネをして「抜け忍」になったのだそーだ。
「あなたにいう必要がある?」
顔と声はクールさを装う。
内心は、今にでも吹き出しちゃいそう。
気を抜くと口元が緩みそうになる。あたしは慌てて頬の内側を噛んだ。
「言わないんだったらいいわよ!あなたはどうせ生け捕りになるわ」
おっと。まだ瀬奈について話してなかったっけ??
苗字は中野。得意なのは遠距離攻撃(たぶん。授業聞いてなかったから分かんな~い!)。何でも、剣の暫撃がどうのこうの?みたいな感じだったと思う。
成績は真ん中よりちょっと上。飛び級メンバーの一人だ。
もっとも、うちの学年は飛び級メンバーが五人しかいないんだけど。
相手が剣を抜いた。
マジでやる気なの!?住宅街なのに!?
まぁ、今の世の中、大砲撃たれても大丈夫な家のはずだけど。外で剣同士で戦ってもばれない、ハズ・・だよ。
ギラリと相手の剣が光る。うひょー。真剣だ。あ、ほんとの剣って意味だからね!?
あたしも負けじと、パーカーの内ポケットに手を伸ばし、武器を出す。
こっちは扇だ。鉄製の、何十キロかする重いやつ。
「いくわよ」
幾分か怠けた感じもする。こいつ、あたしが強いって事知らないな?
目にも留まらぬ速さで剣が振り下ろされる。
「おっと」
あたしは家の屋根から飛び降りた。
そしてそのまま、ダッシュで瀬奈の元へ。
「霞の舞」
呟いて、袂からもう一つの扇を取り出し、呆然としている瀬奈の首の後ろに叩き込んだ。
瀬奈が倒れた。
よっしゃー!
勝ったぁ!
なんて思っていることはおくびにも出さず、また降り始めた雨の中、あたしは走った。
後ろでなんかごちゃごちゃ言ってる大人たちがいるけど、気にしなくていいよね?
だって、追いかけてきた自分達が悪いし・・・。
あたしがあの時取り出したのは普通の扇子。それを首の後ろに叩き込んで、相手を気絶させる技だ。
奈々はきっと先に行ってるだろう。目指すのは、空深駅。
の中の、ある組織のアジトだ。