霜1日目
霜
1日目
霜のような形で砂漠の地面から生えたそれはあまりに巨大だった。
砂の風が荒れ狂う中、一人の男が一頭のラクダを連れてその霜へと歩いている。
ラクダの背や胴体には大仰な荷物が括り付けられていた。
男の顔には防砂用のゴーグルがあり
鼻や口は布で守られている。
羽織られたマントが風に煽られ、ちらりと銃器が見える。
砂風によって消されるであろう足跡が続く中、遠くに見える霜柱にいつになっても到着しないので辟易としていた。
水ももうやがて尽きる。
補給出来れば良いのだが。
風は落ち着き、日も落ちてきた頃やっとの事でその柱の根元に着いた。
近くで見るとただの壁である。
ガラスのような質感の壁を反時計回りに移動することにする。
どこかに地質学者や炭鉱夫達が開けた大穴があるはずだ。
よもやするとまだ人が生活しているかもしれない。
遠目に見た時、霜柱の頂上に集水機があったように見えた。
あれが生きていれば他の機構も何とか機能している可能性が高い。
完全に日が落ちきった頃、大きな横穴にたどり着いた。
重機搬入用だろうか。
ぐじらに捕食されるような感覚を覚えながらもその大きな虚の中へと歩みを進める。
ここである程度の水を確保出来なければ相棒とおさらばする日は近いだろう。
その数日後には俺もこの世とおさらばだ。
しかし砂塵のせいで上手く見えなかったが柱の上部が緑がかっていたように思うのだ。
補強用の柱が規則的に並んでいる。
。
どうやら結構な規模で開発が行われたようだ。
外に廃墟が見当たらなかったところを見ると、中に居住区等を建設した文明末期の可能性が高い。
自分の生存の確率が少しずつ上昇していくが決して安堵などできない。
瓦礫や廃材が多くなってきた。
鉄製の物も多く見られる。
ちらりと儲けを考えてみたがそれどころではないと思い直し、意識を正面に向けなおす。
この辺でキャンプするしかないかと思い始めた頃、道の真ん中に一際大きな柱が見えてきた。
その柱から道が分岐している。
左は直進、右は上り坂になっているようだっだ。
そうか。道によってはしばらく相棒と会えなくなるわけか。
右の道をのぼり始める。
何とか四方が囲まれているような所は無いものか。
霜の中はたまにとてつもない突風が吹くと聞いたことがある。
しばらく歩いていると壁が不自然にえぐれている場所があった。
深めの防空壕のような謎の横穴は、まるで何かから身を守るために掘られたかのようだった。
ともかく今日はこの辺で休もう。
荷をおろし休む準備を始める。
と言っても相棒を穴の入口側で休ませその影に隠れるようにして横になる。
厚手のマントとはいえ、ゴツゴツとした地面に不快感を覚えながら眠りに落ちていった。
続く
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