33. てんいむほうな毎日を
服だけ溶かすスライムこと俺の日々の仕事に、いくつかの呪われた液体の浄化が加わった。
それが、ニーフェア達サキュバス族の幸せの為の薬になるというのなら、俺に否はなかった。なにせ、神様に誓約したことでもあるのだ。これで正々堂々、お天道さまにポヨポヨできるってもんだろう。
ちなみに、聖酒を作ってみたりもしたのだが、なんかこう、ほんのり美味しくなった気がするという微妙な評価に留まった。そもそも聖属性は旨味なのかと聞かれれば、まぁそうだなと言う感じなので、当然と言えば当然の結果だったのかもしれない。ただ、儀式や捧げ物に使うには丁度いいということらしいので、たまに依頼もあるだろう。そんな感じだ。
さて、残った問題といえば。
俺はかつての自室を見回して考える。
神様が居なくなった後もそのまま残った現代世界の部屋は、この世界の異質として存在していた。
どういう理屈かは知らないが、ここにあるものは元の機能を保持し続けている。電化製品はバッテリーを入れるかコンセントに繋がる限り電源が入るし、PCやタブレットはネットに繋がるのだ。いくつかのエッチな本は机の上に揃えて置かれていたのはお約束なのだろうか……? 俺は頭の上がらないお母さんにプルプル震えるばかりである。
まぁ、俺が電源を入れない限り他の誰も触らないみたいだし、この辺は放っておくのがいいのかもしれない。
ただ、パッと見てわかるもの……漫画や雑誌だったり、プライズだったりがエッチなサキュバスの感性に触れたらしく、新たな文化がどこかで生まれたかもしれない。それに対抗したドーレス子爵が、新しい流行のアイディアを求めてきたりという事もあったりで、ちょっとだけ異世界のドレスコードに詳しくなったのは、神衣として成長したと言えるかもしれない。
こうして、たまに小さな変化が起きる毎日をのんびりと過ごす日々を積み重ね、俺は今日も生きている。
生まれる前に神様に伝えた願いを叶えながら。
世界の片隅で、今日もあるがままに生きていくのだ。
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おしまい