31. なんとか
あのゆるふわ二ーフェアが涙を見せるなんて、よっぽどの事があるんだろう。
二ーフェアを抱きしめる神様ごと巻き込んだ俺は、二ーフェアの頭上へと移動し、神様と相対する。
あのさ、俺もお世話になってる人だからさ、どうにかならないかな。神様。
エッチで悪いスライムの俺は、当然エッチなサキュバスである二ーフェアの味方だ。人任せだろう神頼みだろうが、なんとか出来るならなんとかしたいと思う。神を前に恐れ多い? そこは最新の子にして神の衣たる俺である。天衣無縫のおねだり攻勢も辞さない所存だ。
なお一層の涙を流す二ーフェアの頭上で一生懸命に言葉を並べる。
いや、俺も詳しい事情はわからないよ。でもさ、この場で直訴なんてよほどの覚悟だと思うよ。それも一族の問題でしょ? 二ーフェアだけじゃなくて他のサキュバス嬢達も困ってるなら、なおさら助けてあげて欲しいんだ。いや、皆いい子たちでさ。男の夢っていうか、エッチな子が好きって訳じゃなくて、エッチな事を受け入れてくれるっていうのが大事で。村の奴もどれだけお世話になってることか。だから、こう、アドバイスとかヒントだけでも教えて貰えれば嬉しいし、もういい感じに解決方法をどーんと教えてくれるともっといいよね。それでなんとかして二ーフェアや他の子たちが笑ってくれれば俺も嬉しくて、そうしたらきっと皆幸せだよ。
そんな俺の覚悟を見たのか、二ーフェアを抱きしめていた腕を解いた神様が、代わりに俺を持ち上げ捏ねる。グニグニである。
そうして、抗う事無く気の済むままに捏ねられた俺は、そのまま二ーフェアの頭の上に戻される。
「それでは、これは貴方がなんとかしなさい」
それは神託だった。神様がなんとかしろと言ったんだ。俺がなんとか出来るんだろう。なんとか出来る気がしてきた。
泣いている二ーフェアを励ます様に、力強く宣言する。
わかりました。なんとか解決してみます。よろしくニーフェア。
そんな俺の言葉にまた涙を流すニーフェアであった。
そうして、帰っていった神様を見送って、残された俺達は一息つく。
涙の跡を癒やすために、ニーフェアはヴィオラに送られて、別室に行ってしまった。
「……君は少しサキュバス族に甘いのではないかね?」
そんなドーレス子爵の言葉に頷く。
そりゃあ、俺はエッチな悪いスライムだからね。おじさんとエッチなお姉さんだったらエッチなお姉さんの方がいいって思うよ。
身も蓋もない俺の返答に子爵も伯爵も苦笑する。
「それで、どうするつもりなのかい? サキュバス族の根幹に関わる問題みたいだが」
それについてはニーフェアにもう少し詳しく話を聞いてからかな。神様もああ仰ってたわけだし、頑張る所存です。
「そうか。しかし……いや、本当に君が神の衣だったとは……」
つい先程を思い返し、そう零す伯爵に子爵も同意する。
「ヴィオラの言葉を疑う訳ではなかったのですが、あまりに過ぎて圧倒されましたな……」
突然現れて、俺もびっくりしたからね。それでも王様の為に動いた2人は凄いと思うよ。
「そう思うなら私達にも少し便宜を図ってくれても良かったのですよ」
まぁそれはそれって事で。今度また、なにか良いものを考えて送りますので。
俺の言葉に、それはそれで……といった風に頭を抱える2人。聖鎧一式は流石にやりすぎたかな。
しかし、聖鎧か……改めて俺の能力を振り返って考える。
俺に出来ることは『服を溶かす事』、『神衣による潜在能力を含む最適化』、『呪いの浄化と昇華』。際立った物といえば、この3つか。
この中で応用が効きそうなのは、『呪いの浄化と昇華』かな。もう一度神様に着てもらった事で、俺の神威も溢れんばかりだ。今なら特級呪物も昇華できそうだ。そうか、呪われていれば何でもいいのか。なら、以前は諦めたスライム美容液も、素材が呪われた水や酒であれば、ファンタジーらしくエリクサーやネクタルに錬成できるのかも。
「えぇ……いや、ちょっと待ってくれ。エリクサー?」
あ、わかります? エリクサー。万能の秘薬みたいな奴。
「あぁ……お伽噺の秘薬だ……いや、クソ……間違いなく厄介事だが見過ごすわけにはいかない……」
「それに、神の酒とは……そんな物があるというのであれば、是非一度飲んでみなくてはなりませんな」
まず、呪われた酒っていうのを用意しないといけないですけどね。呪いっていうからにはやっぱりサキュバス族の分野ですかね。
エッチなサキュバスとエッチな服だけ溶かすスライムの相性が良すぎ問題だ。このままお互いにズブズブのネトネトになっていこう。
「……あぁ、そうだな。だがなるべく極秘で頼む。あまり広げすぎないようにな」
今は机上の空論とはいえ、物が物だけに及び腰になる伯爵。
まぁ、いい酒が出来たら送るんで、楽しみにしていてください。




