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21. 異世界的に言えば何処にでもいそうなオッサン

 ここがあいつのハウスね! ってことで剣の某の自宅兼道場に到着だ。

 といっても、ちょっとした山の上に道場が建っているので、実態はただの山道の麓なのだが。

 管理されている様子のない道から続く鬱蒼とした山は、人の侵入を拒んでいるようだ。

 修行場の確保、交流を嫌った、色々考える事は出来るけど、本当の理由はなんだろうな。自分たちが隠れ村をやっている事もあって、それなりの秘密が隠れているんじゃないかと邪推してしまう。


 この場にいるのは、俺とヴィオラ、あかねだけだ。二ーフェアは今日は同行していない。

 それじゃ作戦を決めようか。


 「拙者は、普通に師匠に挨拶してくるでござるよ」


 建前担当のあかねの言葉に頷く。

 呪いの剣の解呪の旅。後継者となる為のその旅を終えた弟子にどういった対応をするのか。個人的に気になるところである。


 「それで私はどうする?」


 それが実は悩みどころだ。

 元々俺一人での偵察の予定だったので、何かをしてもらおうという考えが無かった。ここに至るまでにも色々考えてみたが特にコレといって考えが浮かぶわけでもなかった……もうこれ旅の道連れ枠しかねぇな。


 「つまり、あかねの修行の旅の付き合いで、ここまで来たと」


 「えぇ……拙者は一人で旅できるでござるよ……」


 うるせぇメシマズ。直火焼き以外の調理方法を身につけてから発言しろ。


 「お、美味しく焼けるでござるし」


 本当剣以外はダメ過ぎてヤバいなコイツ。逆に後継者ぐらいの身分になって周囲に介護して貰わないとダメな人間なのでは。


 「まぁまぁ、ここまで一緒に旅をしてきた事だ。その延長ぐらいに考えておけばいいさ。それで、挨拶をして、剣神殿の為人を確認して……確認はそれでいいのかい?」


 うーん……まぁそれぐらいしかできないしな。あぁ、予定通り鎧は普通の物に着替えておいてな。あかねの剣が解呪されているのに、呪いの鎧を着けている奴が側にいるのはおかしいしな。


 「あぁ、わかった。着替えておこう」


 「この剣はそのまま頂戴するでござるよ」


 あー、うん。まぁ俺が個人的に子爵から貰った物だ。真っ当に使うならそれでいいぞ。

 どさくさ紛れのあかねの主張だが、話の流れを考えれば譲渡以外の選択肢は無いだろう。修行修了の証なのに返せとは言えん。もちろんやらかすようなら、回収する事になるけどな。面倒くさいが、これも俺が蒔いた種だ。巻き込まれるヴィオラには申し訳ない。


 そうして、それぞれが立場を確認し、いざ御山へと足を踏み入れたのだった。






 そしてたどり着いた道場にいたのは、壮年の男だった。

 修練の途中だったのか、上半身を開けた袴姿で汗を流していたようだ。

 無精髭を生やしたぐらいしか、特徴の無いオッサン顔と違い、その体付きは、村によくいた筋骨隆々の戦士みたいな体型からすると控えめではあるが、それでも現代社会の同年代と比較にならない程度には鍛えられている。そんな粗野な姿に劣らず素っ気ない態度で男は言った。


 「……なんのようだい? ここは見ての通りタダの修行場だ」


 「師匠、お久しぶりで御座います。弟子のあかねです」


 いやあかねお前、敬語使えたのかよ。どんだけ人様のこと舐めてたんだコイツ。俺は師匠と違い個性溢れる弟子のあかねの評価を下方修正した。


 「最後の修行を終えて帰って参りました」


 「修行……? あぁ! あの呪いの剣のか! そいつは予想外だ!」


 驚きと喜びを見せる男の様子を伺うが、それがどういう意味のものなのかはわからない。素直に辛い修行を終えて帰ってきた弟子を迎えているだけなのか? それにしてはあかね個人を認識しているって訳じゃなさそうだ。弟子は十把一絡げにしか認識していなかったってことだろうか。


 「中で話を聞こう。そっちはどういう用件だい?」


 「私はヴィオラだ。あかねの旅に同行していてね。彼女の旅の終わりを見届けにきたんだ」


 あくまで自然体に答えるヴィオラ。その言葉に特に疑った様子もなく、男は頷く。


 「そうかい。いいだろう。客間も何もない所だが、弟子の寝泊まりする場所はでよければ泊まっていくと良い。もうじき日も暮れる」


 「それはありがたい。申し訳ないがお世話になるよ。あかね、最後の夜だ」


 ヴィオラも宿泊の許可を得たようだ。


 「あかね、部屋の場所は覚えているだろう。客人を案内してから俺のところへ来い。俺も着替えを済ませておこう」


 そうして案内をあかねに託して男は奥へ引っ込んでいく。

 その後姿を見送った後、俺達はあかねの案内に従うのであった。

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