12. 新しい村の変化
過去最速で家が建った。さすが性欲だ。速度が違う。
まぁ、今まで発散するためには他所に行かざるを得なかったのだ。ついでに、性に目覚めるのが遅かったっていう事もある。この村にいる奴の大半がそれなりに拗らせたり沼ってるのを俺は知っているのだ。
そうして開店したサキュバス娼館は、そこそこの賑いを見せている。まぁ値段はそれなりに高く設定しているからね。そこそこ。
そも、命の危険がないサキュバスっていうのは珍しい上に中毒性がある。そのうえ、日替わりするほど嬢が居るのに、見た目にハズレがない。なにより、男はもちろん、女もイケるのだ。さすがサキュバス。さすサキュだ。
サキュバス娼館を作ったのは、個人的な希望でもあったのだが、村のサイクルを早めたかったのもある。住民の金を吸い上げたかったのだ。
そも、この村の住人の大半は、一回の出稼ぎで半年分以上の生活費を稼いでいる。そして、残りの大半を村で過ごすわけだが、村で仕事・趣味が
見つかればいいのだが、そうでなかった者は悲惨である。のんびりと牧歌的に生きるのにも、才能が必要なのだ。そうして彼らは必要以上に出稼ぎを繰り返すようになり、財を溜め込む。動かない金は違う所で歪みを生む。適度に吐き出して貰わねば困るのだ。時折ヴィオラがそう言われているのを聞いたのでそういうことなのだろう。
なので、村でも少数派であるが、彼らが気持ちよく金を使い、人生を潤す場所になればいいと思うのだ。もちろん言い訳である。
吸い上げた金は村の収入として扱われ、大半が税金としてドーレス子爵へと収められ、その後は王国経済へと還元される事になるのだろう。
ただ、全てが順調といった訳でもなかった。といっても、治安が悪化したわけでは無い。問題児は怖いアーマー部隊が捕まえに来る上に、出禁になるのだ。そりゃ大人しくなる。問題は、出稼ぎ頻度の増加による呪いの鎧不足である。まさか足りなくなる日が来るとは思わなかった。それが問題になる事態も、ヴィオラからしたら笑い事にもならないだろう。
そんな呪いの鎧不足を解決したのもまた、サキュバス族だった。
以前聞いた通り、サキュバス達は呪いの装備を造ることが出来る。本人たちは呪いのエロ下着を主に造っていた訳だが、当然呪いの鎧も造る事が出来るのだ。元になる鎧をドーレス子爵に準備して貰えれば、話は簡単だった。
そうなるとサキュバス達への支払いが問題になりそうだが、そちらはサキュバス族の都合でうまく話が回った。
というのも、サキュバスの服飾家がブチギレたらしい。日頃エロ装備を造っていて、ただでさえ飽きていた頃に追加で超エロい装備の大量オーダーだ。普通の服を作らせろとストライキが起きたらしい。
ウチにとって、服は日常品の他に、俺のご飯という側面も持つ。そういった消費の他に、出稼ぎ帰りの者に好きな服を着せる権利をつければ、安価で呪いの鎧の定期納品を取り付けるのも簡単だった。お互いの不足していたやりがいがうまく回った結果である。ヤリがいスパイラルだ。
こうして、村に新たな仲間が増え、少しだけ賑やかさを増した村の片隅で、たまに起きるエッチなイベントを期待しながら、俺はのんびり生きていくんだろう。
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そう思っててもさ、見逃せないよね。
神を名乗る大悪党なんてさ。