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11. とあるサキュバスの訪問2

 ブワッと、全身を広げ、おもむろにヴィオラの服を捕食した。ついでにニーフェアに体を伸ばして、声が届くようにする。

 天衣無縫は伊達じゃない。ニーフェアに呑まれかけていたヴィオラは自分を取り戻す。そう、それは権能だ。俺という存在は俺のままあり続ける。それは神の衣を着るものも同様に。誰かのペース呑まれることはもう無い。


 まぁまぁ、そんな忙しなく話をしなくてもいいじゃん。ゆっくり親睦を深めようよ。なんか勘違いしているけど、別にヴィオラが俺を独り占めしてるんじゃなくて、俺がヴィオラと一緒に居たいだけだよ。ほら、この村を作ってもらった時に俺からお願いしたからね。村長をやってほしいって。実際、呪いの鎧の村なんて変わり種だけど、よくやってくれてると思うよ。あの微妙に常識のない村人たちが慕うのも、ヴィオラの人格があってこそって感じだしね。

 俺はとにかく褒めた。ベラベラと褒め続け、不満は無いということをアピールした。


 「す、スライムさん。そんな風に言われるほどじゃ無いよ。みんなが協力してくれるからうまく言ってるだけさ」


 ヴィオラは照れた。多少は改善したが、相変わらず自己評価の低いところがあるヴィオラは褒め殺しに弱いのだ。カワイイ。

 そうして仲良しなところをアピールした上で、ニーフェアに聞く。それで、俺にやらせたいことでもあるのかい?


 「うーん……このモチモチお肌もそうなんだけど、やっぱり呪いの鎧がねー」


 出張エステの話なら、こっちのお偉いさんにも話を通さないと不味いかもね。そっちの方は便宜を図ってもらう事と引き換えにやってる事だから。勝手に進めるのもアレだし。ねぇヴィオラ。


 「そうだな……ドーレス子爵に伺いを立てるぐらいしか出来ないだろうな」


 俺達はどーレス子爵に丸投げした。相手の雰囲気に影響されなくても、交渉スキルなんて持ち合わせていないのだ。上手い人には上手い人をぶつけんだよぉ。


 「それで、呪いの鎧は何が問題なんだ?」


 「問題じゃあないのよ。うーん、これを言うと、誤解される気がするんだけど……」


 今度はニーフェアが言い淀む。

 誤解もなにも、事情がわからなければ返事のしようもない。重大な犯罪に関わる事でなければ聞き流すぐらいには悪いスライムだぜ俺は。


 「落ち着いて聞いてね……私達、呪いの鎧を、造れるのよ」


 部屋の温度が10度位下がった気がした。まぁ落ち着いてよヴィオラ。うぇーい。俺はヴィオラの頭の上で跳ねた。ポヨポヨとリズムを刻み、意識を逸らす。ニーフェアの危惧も間違いじゃない。彼女は、自分が加害者なのかもしれないと白状したのだ。それがたとえ逆恨みであろうとも『そんな物がなければ』と思わずにはいられない気持ちもわかる。

 まぁでも結局のところ俺は当事者ではない。さらに言えば、被害者を唆し、便利に使う事を復讐とのたまった悪いスライムだ。そんなスライムがいけしゃあしゃあと言ってやろう。

 ニーフェア、呪いの鎧を造れるって言うけど、それはうちに商品を卸したいって事かい?


 「……違うわよ。ウチで使いたいの」


 その言葉には、俺もヴィオラも疑問を返した。てっきりウチで商売するのかと思ったのだけども。あるいはどっかで戦争でもするの?


 「呪いの鎧って言っても様々よ。別に戦いに使うって訳じゃないわ。過激なプレイに使いたいのよ」


 もったいぶる事無く出てきた答えに、ヴィオラは呆れ、俺は身を乗り出した。詳しく。


 「色々あるのよ、呪いって。神経を過敏にしたり、逆に鈍感にしたりとか。精神に感応させるのもあるわ。後は体を直接責めたりね」


 なるほど。つまり淫紋も触手アーマーも呪いって事だな。俺は把握した。


 「えぇ……話が早くてびっくりだわ……まぁ、それでね、簡単なモノならいいんだけど、あまり重篤な呪いだと、その時はいいんだけど、後始末に困っちゃうのよ」


 そこで俺の出番か。逆に、保証があればヤりたい放題って訳か。さすがエッチな種族だ。あんまりな呪いの鎧の使い方にヴィオラも頭を抱えてるぜ。


 「引き受けてくれるなら、いーっぱいお礼してあげられるんだけどなぁ」


 自分に自身を持ってるカワイイ娘特有の伝家の宝刀、上目遣いを惜しげもなく振る舞うニーフェア。

 並の男ならどんな無茶振りも聞いてしまうそのおねだりは、残念ながらヴィオラには効かなかったようだ。


 「用件はわかった。昔はどうあれ、呪いの鎧を便利に利用しているのはこちらも同じだ。そっちがそういう用途に使うのに文句は無い。それと、呪いの鎧の浄化に関しては、あくまでスライムさんの協力で成り立っている」


 そう話を振られて、考える。元々、呪いの鎧の捕食は、俺の住む場所と食事の確保が目的だ。つまり、衣食住が揃っている今、次のステップに進んでもいいのかも知れない。ヴィオラをみて、ニーフェアを見る。俺は服だけ食べるエッチで悪いスライムだ。じゃあ答えは決まってる。





 娼館を作ろう。



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