ep.32 【衝撃】若き才能、東雲柳の休養が決定
バーチャルリアリティスポーツ日報
未来ノ島――ネオトラバース界の若きスター、東雲柳選手(16)の休養が発表された。
日本バーチャルリアリティスポーツ協会(JVRS)と彼の主要スポンサー、ヴィジョンデジタルテックス、未来ノ島学園からの共同発表によると、東雲は近日中に療養に専念するため、当面の間競技活動から離れることになる。
スポンサー企業コメント
ヴィジョンデジタルテックスの代表は次のようにコメント。
「東雲選手への継続的な支援を約束します。彼の休養期間中も、東雲選手との関係を大切にし、彼の回復を全力でサポートします」
選手本人コメント
東雲柳選手自身も、この状況について簡潔に言及している。
「ファンの皆様、関係者の皆様には心配をおかけしておりますが、この休養を通じて、一日も早く全力でプレイできる体調に戻ることを目指しています。皆様の理解と支援に心から感謝しています」
技術・医療スタッフのコメント
試合中に東雲選手が経験した異常現象については、関連する技術・医療スタッフからも詳細が報じられた。
「東雲選手が経験した症状は、我々の知識を超えるものであり、現在も原因の特定に向けた調査を続けていますが、明確な答えを出すことはまだできていません」
東雲柳選手の休養発表は、ネオトラバース界にとって大きなニュースとなった。
ファンや関係者は彼の早期回復を願いつつ、彼が再び競技に戻る日を待ち望んでいる。
午後の明るい光の中、「ミッドデイ・ジャパン」のスタジオが活気づいている。
カメラがスタジオの中を巡り、最終的に太田と草津の2人のアナウンサーへとズームインする。
彼らの前には、東雲柳選手のネオトラバースでのプレイ映像が流れ、その卓越した技術と突然の苦悩が画面を埋め尽くしている。
「こんにちは、皆さん。今日の話題は、ネオトラバース界で急上昇中の若き才能、東雲柳選手の休養発表についてです」
太田が温かみのある声で視聴者に挨拶する。
画面は東雲選手が技を披露する映像から、スタジオに戻る。
草津が深刻な面持ちで彼の状況に言及し、続ける。
「彼の突然の試合中断は、私たちだけでなく、スポーツ界全体に衝撃を与えました」
玉村博士と元スポーツ選手のコメンテーターが、東雲選手の異常事態について専門的見解と個人的感想を述べる。
玉村博士は科学的調査がまだ解明していない部分に触れ、コメンテーターは彼のプレイと突然の苦痛に同情を示す。
草津がプレイ動画に言及し、視聴者に東雲選手の高い技術水準とその中での苦悩を強調する。
太田が東雲選手の休養支援についてのコメントを紹介し、日本バーチャルリアリティスポーツ協会、未来ノ島学園、スポンサー企業からの柳選手への支持の声を共有する。
スタジオでのディスカッションは東雲選手の健康と彼の早期復帰への希望で締めくくられ、太田と草津は感謝の言葉を述べ、明るい未来を予感させる言葉で番組を終えた。
「それでは皆さん、また明日お会いしましょう」
未来ノ島の繁華街は、今日も変わらず活気に満ちている。
昼下がりのスクランブル交差点は、いつものように多くの人々で賑わい、未来的なファッションに身を包んだ若者、手には透明なデジタルデバイスを持ったビジネスパーソン、そして時折、著名な芸能人やスポーツ選手の姿も見られる。
彼らの足元では、光の帯が案内する歩行者ナビゲーションシステムが、それぞれの目的地へと導いていく。
そんな光景の中、ひときわ注目を集める若者がいた。
シノノメ・ヤナギ選手だ。
彼は最近のネオトラバース競技中の突然の棄権で、スポーツ界だけでなく、一般の人々にもその名が知れ渡っている。
通行人の一人が彼を認識すると、ほんの一瞬だけ目が合う。しかし、すぐにその視線はそらされる。報道で知ったシノノメ選手の不調と、それに対する気遣いから、あえて彼に声をかけることなく、静かに目を逸らしたのだ。
周囲の喧騒とは裏腹に、通行人の心中は複雑だ。
この島で有名人として生活することの大変さを思い、またシノノメ選手が突然の不調に陥ったことに対する同情の念を抱く。
しかし、彼らはシノノメ選手がこのような注目を集めることに慣れていることも知っている。未来ノ島の住人にとって、著名人やスポーツ選手の日常と、それを取り巻く環境は、日々の風景の一部となっていた。
「まあ、有名選手にもプライベートはあるよな」
通行人は独白する。シノノメ選手が交差点を渡り終えると、再び賑やかな人波が彼を包み込む。彼の姿はやがて、未来ノ島の煌びやかな風景の中に溶け込んでいった。




