69話 ドワーフ国とエルフ国の現状
トーマスからの挑戦状にワイトはやる気を出し、特別に工房を借りて作業に取り掛かっていた。
その光景を俺達は別室の窓からのぞきながら寛いでいた。
「ワイトの奴気合入っておりますな」
「そりゃあんな武具を見た後なんだしテンション爆上がりだろう」
最初はゾアも手伝うと言い出していたがこれはワイト自身の課題なので手出しはしないように言った。まあ俺が言わなくてもワイトが断っていただろうが。ちなみに才は邪魔しない距離からワイトの作業を見ると言って部屋には来ていない。
そんな風に見守っている俺達とは異なりエルクは少し不満そうな顔でトーマスを見ていた。
「師匠どういうつもりですか?ホワイトリー君に武具を作らせるとか?」
「なーに、儂の作品を見た時のボウズの目を見たら実力が見たくなっただけだ」
「だからってあの鉄鉱石の山から武器を作れとか性格悪すぎでしょ」
エルクは何か気付いているのかトーマスに対して冷めた目で見ている。
「性格が悪いってどういうことです?」
「実はあそこにある鉄鉱石の山・・・全部品質が悪くて武具作りで使わなかった余りものなんです。課題だって師匠に弟子入りしたい人を諦めさせるものですし、やりすぎです」
それは酷くないか?!そんな素材で武器を作るとか無茶ぶりじゃないか!
俺やデューオも事実を知ってトーマスを睨みつける。
だがゾアだけは平然とした様子でワイトを見守っている。
「エルクはん、あまりウチのワイトを舐めないでくれます?」
「どういう意味ですか?」
「あいつにはワイの知識を叩き込んでおるんや。この程度の壁乗り越えてくれないと困るわ」
ゾアは随分と思い切った事をいうな。それだけワイトの事を信頼しているんだろうけど。そしてトーマスはそんなゾアを興味深そうに見ていた。
「あんたがあのボウズの保護者なのか?」
「まあ一応そうなるかな?」
正確にはゾアが呼び出した死霊がワイトなんだけどね。
「あんたも職人なのか?」
「ワイは職人やなくて技術者や。どちらかというか魔法具を作る方が専門やな」
「ほう、じゃああのボウズも魔法具の技術は持っているのか?」
「せやな【刻印魔法】や魔力回路の構造は一通り教えとるで」
「【刻印魔法】か懐かしいな。俺も昔勉強したがさっぱりだった」
「法則さえ理解できれば結構簡単なんやけど」
「俺はどちらかというと直感で作るからな。頭を使って作るのは無理だ」
とまあ技術者と職人がなんやかんやで盛り上がっていた。
「珍しいですね師匠がエルフと仲良く話すなんて」
「なんや、トーマスはんエルフ嫌いなん?」
「いや嫌いというか最近エルフ国とドワーフ国でもめ事が起きていてな」
お?定番のドワーフとエルフの不仲設定か?
「もめ事って?」
「実はドワーフ国とエルフ国は隣接していて交流があるんだ。それでお互いの交易のためにそれぞれ国境付近の土地を開拓して都市計画を立てていたんだが・・・その都市の名前が全く同じだったんだ」
都市の名前が同じか・・・なんか思ったような不仲って訳じゃないな。
「それでドワーフ国とエルフ国は今はどうしているんですか?」
「どうもこうもお互い平行線の交渉で亀裂が出来てしまい今じゃにらみ合いするほどの険悪になっている。下手に刺激するわけにもいかないし都市開発も今はお互い凍結状態」
「なんや随分と呆れた内容やな」
俺が思っていたことをゾアが見事に口に出していた。
「まあ客観的に見たらそう思っちゃうよな。俺も国を出てそう思えてきたが、その都市に込められた名前はドワーフ族とエルフ族にとっては特別なんでな・・・どうしても譲れないんだよ」
それぞれの強い意志がある訳か・・・しかしエルフ国とドワーフ国か。カグツチといい、行ってみたい国だな。
「トーマスさんはドワーフ国出身なんですよね?」
「ああ・・・色んな国を回りたくてエルクともう一人を連れて旅をしていたんだ。んでテオプアで仕事を探していた時にギルドに入ってしばらくはここで仕事をしようって思った訳」
「もう一人?」
「僕の妹です。プラムといって年はホワイトリー君と同じくらいで今は王都の学校に通っています」
王都の学校か・・・才に頼んだらダンジョンの住民とか留学させてくれるかな。
「あれ?エルクさん達をドワーフ国から連れてきたって事はエルクさんもドワーフなんですか?」
「正確にはドワーフとエルフの間に生まれた亜人です」
意外な事実に俺達は目を見開いた・・・だがドワーフとエルフのハーフと聞かされて納得できる。エルクの外見はドワーフ特有の色黒肌と尖った耳をしているが爽やか系と言いたいくらい髭が無い。
「って事はエルクさんも精霊と契約しているのですか?」
「驚いた、精霊による魔力循環のことも知っているんですね・・・ええ、出ておいで」
エルクがそう言うと腕にはモグラの姿をした下級精霊が現れた。
「僕の相棒です・・・こいつのおかげで鉱物の仕分けが楽なんです」
「なるほどね・・・じゃあ妹さんも?」
「あ・・・いえ、妹は契約していません。あいつは純粋なドワーフなので」
「ん?どういうことだ」
「えーとまあ複雑な家庭事情とだけ・・・」
エルクは言いにくそうだしこれ以上聞くのはやめてあげよう。
そう思って話題を変えようとした瞬間、ワイトが布で包んだ一本の剣を持って部屋にやって来た。
「出来ました!」
「早!」
ワイトの言葉に真っ先に驚いたのはトーマスだった。彼もこの短時間で出来るとは思っていなかったようだ。
ワイトは部屋に入ると机の上に剣を置き、包んでいた布を解く。
するとそこには銀色に輝く両刃剣が姿を現す。
「見事な剣だが・・・本当にあの鉄鉱石を使って作ったのか?」
「本当だぞ・・・俺がずっと見ていた」
トーマスの疑問に答えるようにワイトの後ろから才が部屋に入って来た。
そう言えばワイトの作業を見るために邪魔しない距離から見ていたんだった。
エルクも驚きながらワイトの剣を見る。
「凄い・・・でも一体どうやって」
その疑問にワイトが答える。
「僕が持っている【スキル】の【錬金術】でまず使える鉄の部分と不純物を分離させました」
「【錬金術】かその手があったか」
トーマスとエルクはワイトの説明を聞いて納得する。
「形状変化をすれば形はある程度整う・・・それで研げば剣の完成か」
「それだけじゃないぞ・・・魔力を流して刀身をよく見ろ」
才がもっと見るように促し、トーマスが魔力を込めると刀身が光り出し刻印が浮かび上がる。
「こいつは【刻印魔法】か」
「付与されているのは【硬化】でしょうか?」
「・・・エルク、倉庫手前にある鎧を持ってきてくれ」
「え?・・・分かりました」
エルクは言われた通りに倉庫へ向かい保管されていた鎧を部屋へ運びトーマスの前に置いた。そしてトーマスは一度深呼吸して鎧に切り付ける。
鈍い音が部屋に響いた後トーマスは切り付けた部分を見る。鎧には1㎝程深い傷が出来ていた。
「フハハハハ!見ろよエルク!あの粗悪鉱石で作った武器が儂の鎧に傷をつけたぞ!」
「未だに信じられないです・・・師匠の防具に傷を入れられるなんて」
愉快そうに笑うトーマスに対しエルクは信じられないモノを見たような顔をしていた。
そしてトーマスはそのまま剣を机に置くと、両手をワイトの方に乗せて笑顔で言った。
「ホワイトリー!お前、儂の弟子になれ!」
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