65話 英雄の仲間
俺達の目の前には立派な木造建築が建てられている。
それは確かに宿泊施設なのは間違いない。
だが、この世界にしてはあまりにも違和感がある建物。
「やっぱり旅館だな」
芸術のような盆栽に石畳、加えて奥のほうから水の流れる音と獅子脅しの『コン』という音が聞こえる。どこをどう見ても和風の旅館だった。
「ほぉ、これは立派な旅館やな!」
「これ殆ど木で作られた建物ですね。屋根のいくつもの石畳みたいなのを重ねているのでしょうか?・・・装飾など実にいい!」
「なんというか落ち着く感じですね」
っと俺とは違いゾア達は感心した様子で旅館を見ていた。
そして俺の隣にいる才は自慢げな顔をしている。
「なんか世界観無視していないか?」
「まあ街の色とは少し違うがここで温泉が掘れたからな。温泉と言ったら旅館だろ?」
さもありなんといった様子で俺のツッコミに応える才・・・まあ俺でも温泉が出たらこうしていたかも。旅館かテルマエの二択だろう。
「ちなみのこの旅館はカグツチって国にある建物を元に建設してもらったやつだから・・・べつに地球の知識というわけではない」
「え?カグツチって国にも旅館があるの?」
カグツチ・・・エイミィ曰く人間と妖人族が共存する国。俺の知る和風文化を持つらしくその国は是非とも行ってみたい。
「あるぞテオプア王国の南の海を渡った先にある島国だ。他にも畳に米、和風の城もあったな」
マジか!ますますカグツチに行ってみたい。
「俺の仲間もこの旅館に泊まっている。後で紹介するよ」
そう言って才が入口へ入ると何やら仰々しい数の中居さん達が出迎えてくれる。スゲーまさかここで和服姿の人を見るとは思わなかった。
『ようこそいらっしゃいました』
まさにVIP・・・というか才はグランドマスターだからこの待遇は当たり前なのか?
「おい、誰の指示だ出迎えをするように言ったのは?」
「いえいえい、才様がいらっしゃったのですこれくらい当然です」
才もこの待遇は予想外だったのか仲居さんの中でも特に綺麗な和服を着た女性・・・多分女将さんが笑顔で答える。
「・・・っち!あいつら勝手な事を!後で覚えていろよ」
才は察しがついているのか、怒りの矛先を見定めて呟いているが大丈夫なんだろうか?
「始めまして本旅館の女将、ミキティと申します。部屋までご案内しますので靴を預からせていただきます」
「へ?靴を脱ぐの?」
建物の中で靴を脱ぐ習慣が無いゾア達は驚いていたがまあこれは仕方ないか。
俺達は靴を預けた後、女将のミキティに部屋まで案内してもらった。
随分と奥まで進むがこれってかなり好待遇の部屋へ続いているんじゃないか?
「こちらがコウキ様方のお部屋でございます。サイ様は隣の部屋でございます」
ミキティに案内された部屋はマジで高級旅館並みの豪華な部屋であった。俺達8人であるが20人くらいは余裕で入るくらいの広さはある。
そして何より俺が驚いたのは
「畳だ!」
周りの目を気にせずに俺はすぐさま畳へダイブして横たわる。
柔らかさや香り・・・どれも懐かしい気持ちにさせてくれる。
「これは植物の床ですか?肌ざわりとかいいですね」
「ワイこのまま寝られそうや」
そして俺を真似るように畳に横たわったり触って肌ざわりを確認したりするゾア達。ああ畳は欲しいな・・・どこかで買えないかな?
「ふふふ、気に入ってもらえたようですね。こちら皆様の浴衣でございます。本旅館では個室と男女別の大浴場がございますのでお好きな方をご利用ください」
「すんません、大浴場ってなんでっか?」
ダンジョンには大浴場みたいな施設は無いからゾア達にはピンとこないようだ。基本的にシャワールームか小さな風呂だからなダンジョンに設備されているのは。
「簡単に言えばデカい風呂場だが・・・まあ実際に見てみるのもいいかな」
ダンジョンは基本的にシャワーか小さな風呂だから見たらビックリするだろうな。
「気にったようだな」
俺達が寝っ転がる姿を見ていた才は笑いながら部屋ると彼に続いて二人の少女が入って来た。そして才が視線をミキティに向けると彼女はすぐさま俺達にお辞儀をして部屋を退出する。
「さて、まずはこいつらの紹介だ」
「マヤでーす!サイ兄ちゃんの護衛をしていまーす!」
「スイです、才様の秘書をしています」
一人は白髪で猫耳の獣人少女。もう一人は黒髪褐色肌で真面目そうな雰囲気を出している少女。
「両手に花とはこういう事なんやろうな」
ゾアは俺が思っていたことを真っ先に口に出し俺も思わずうなずいて。
「言っとくが男の仲間もいるからな!」
「もしかしてあそこですか?」
サイが否定するとワイトが不思議そうな顔をしながら天井の隅に指を指す。
俺達もその先を見るが何もない・・・っが、ゾア達はすぐに何かに気付いたのか俺を庇うように上と才を睨みつける。
「ヒスイ・・・だから言っただろすぐバレるって」
「バレると言われてもまさか子供に真っ先に見破られるとは思わなかったでござる」
誰もいないはずの天井から男の声がするとハラリと天井と同じ模様の布らしきものがめくれそこから男の顔が現れる。
スゲー!忍者だ!
忍び装束に顔は布マスクで隠した男性・・・目や顔の骨格からして多分美男子。
才にヒスイと呼ばれた男は天井から飛び降りすぐさま才の後ろに立つ。
「拙者の名はヒスイ・・・サイのシノビでござる」
『拙者』に『ござる』か・・・漫画やアニメ以外でそれを聞けるとは思わなかった。
「少年、よく拙者が隠れているのに気付いたでござるな」
「だってお兄さんの魂が天井にあったのが見えていたから」
ヒスイは自身の隠密に自信を持っていたのかワイトが見抜いたのがかなりショックのようだ。そういえばワイトには【ユニークスキル:魂眼】があるんだよな。詳しい事はよく分からないけど相手の魂の色や形を見れるらしい・・・しかも遮蔽物無視で。
「魂か・・・ハハハ、それは流石に拙者でもお手上げだな。サイとこの少年がカグツチのかくれんぼ大会に出場したら最速記録で終了しそうでござる」
ヒスイはそう笑いながらワイトを見ていたが目は笑っていない・・・あ、これ結構警戒されていない?
「とまあ今ここにいる仲間は以上だ。残りは王都に残っているがまあ、近い内に紹介する事になるだろう・・・ちなみに全員はエイミィと知り合いだし彼女からお前の事も聞かされている」
マジ?エイミィ俺の事も話していたのか。
「それじゃ今度は俺達の番だな。改めまして俺の名前は神崎・エドワード・光輝、才と同じ異世界から呼ばれた。現在はエイミィと一緒にダンジョンを作って仲間達と一緒にそこで暮らしている」
そして軽く俺の自己紹介をした後、ゾア達も自己紹介をした。
「・・・なるほどな、エイミィを守護するための8人のフロアボス・・・そしてゾアがそのフロアボスの一人か」
「せやで・・・しっかし兄さんらめっさ強いな・・・もし戦うとなったらワイも本気にならんとあかんで」
負けるつもりはあらへんけどな・・・っと目で語っているゾアだがそれでも油断はできない人物達だと見抜いていた。
「言っとくが俺達はエイミィを狙ってダンジョンに攻め込むつもりは無い。っが、調査や物資の調達などで向かう事にはなりそうだ」
「そう言えば聞いていいのか分からないけどテオプア王国は実際ダンジョンの事をどう見ているんだ?」
才はグランドマスターだしそういう動きは把握していそうだけど。
「テオプア王国は最近までダンジョンに行く余裕は無かったんだ」
「どうして?」
「ルヌプの存在だ・・・あいつらはここを攻めようと戦争の準備をしていたからな。警戒態勢に入っていたから人を回す余裕は無かったんだ」
まさかルヌプの名前をここで聞くとは思わなかった。
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