56話 受け入れ後の変化
亜人と精霊達が住民として加わって二週間経ち居住エリアはかなり賑やかになっていた。
以前は皆フロアボス達と一緒に畑仕事やダンジョン調査などで居住エリアががらーんとしていたが人が増えたことで時間ごとに交代で職場に行ったりと居住エリアでも人を見かけるようになった。
当然仕事以外で時間を持て余す住民もいるため、ガウスの提案でいくつかの店を建てる事にした。
以前はメリアスが数人の料理スキルを持った住民達と一緒に料理をして皆で食べていたが店など食事する場所が出来た事で好きな時間に食べられる。
また開発部門でも必要品の家具以外にもおもちゃなど作るようになり子供達から人気が出ている。
「お店が増えたわけだし、なんかより街って感じになってきたな」
発展していく光景を見てこれからどんな風になっていくのか楽しみで仕方なかった。
「コウキ様今日は視察ですか?」
そんな風に考えながら歩いていると、ちょうど屋台で焼き鳥を焼いていた大男に声をかけられた。
「まあね、ジョージは出店当番か?」
「はい、カルラ様が良いコカトリスを卸してくれたので今日は焼き鳥を焼いていました」
彼の名前はジョージ。獣人族・ゴリラ種で元24階層に生息するユニークモンスターのワイズコングだった人物。元々類人猿だったため外見は人間とほぼ変わらない・・・若干毛深いぐらいだろうか?
ワイズコングの強さは腕力よりも知能が非常に高い所が厄介な所。その高い学習能力で敵の長所と短所を見抜き追い詰めるためかなり難易度が高いモンスターでもある。
そんなワイズコングであるが現在はメリアスの下で料理を勉強している。なんでも、調理する事で味の変化を出すことが彼の好奇心を刺激したようで料理に没頭するようになった。
「どうぞ、焼き立てですよ」
そう言ってジョージは塩で味付けされた焼き鳥を数本渡してくれた。現状は住民は自由に食べられるようにしているがいずれは通貨みたいなのを浸透させたいと考えている。働きに見合った待遇は必要だし色々と楽しめるものも用意していきたい。
っと難しい事はさておき、せっかくもらった焼き鳥を俺は無心で食べる。
塩味というシンプルな味付けだが焼けた鶏肉の香ばしさに、屋台から聞こえる肉の焼ける音がさらに食欲を促してくる。大口開けて頬張るように口に入れ、噛む度に舌に広がる肉汁と塩味がこの焼き鳥の美味さを訴えかけている。
「美味いな、また一段と腕を上げたんじゃないか?」
「ありがとうございます、亜人達の料理を参考に少し工夫してみたのです」
「亜人達の料理・・・って確か鍋料理だったよな?それで焼き鳥?」
「ええ・・・焼く前に一度、野菜などの出汁を取ったスープに漬けて焼いています。そのおかげでコカトリスの肉の臭みを消して塩味でも香ばしくなっているのです」
マジかよ、塩味だけと思って食レポ風に語っちまった自分が恥ずかしい。
「へぇ・・・やっぱり交流は大切だな」
「ええ、メリアス様からまだまだ色々と学んでいますが彼らとの交流は視野がさらに広がっていく感じでした。メリアス様も亜人の料理に興味津々でしたし」
そうか亜人を受け入れたことで住民達にも良い刺激になっているようだ。
「ジョージあと5本くらい貰っていいか?」
「どうぞ」
そしてジョージからおかわりの焼き鳥を受け取った後、次の場所へ向かった。
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ジョージから焼き鳥を受け取った後向かったのは農場エリアだ。
住民の数も増えたため畑の数を増やしたらしくメリアスの主導の下畑の面積が5倍くらいに増えている気がする。
「あ、コウキ様いらしていたのですね」
出迎えてくれたのはメリアスで彼女の隣にはアルラがいる。
「メリアス農場の方はどうだ?」
「はい亜人の方達が作物の種を沢山持ってきてくれていたので品種がかなり増えました」
ルヌプ兵によって占拠されたことで作物は殆ど残っていなかったが種は手を付けられていなかったため集落に沢山残っていた。せっかくなのでダンジョンで育てることを俺が提案して持ってきてもらったのだ。
「見てください!こんな立派な果実が出来たんですよ」
アルラは嬉しそうに青色の果実を俺に見せる。
「見た目はモモっぽいが・・・匂いはレモンみたいな柑橘系だな」
爽やかな香りで結構俺好みの匂いがだった。
「それはミナップという果実でして非常に栄養価が高いのです」
俺が果実を観察をしていると灰色肌に山羊の角を持った亜人が嬉しそうに説明してくれた・・・確かザズムフに乗っ取られていた・・・
「確かアルドさんでしたっけ?」
「はい・・・この節はコウキ様達に多大なご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「いや、あれは邪神に操られていただけなんだしアルドさんが悪いわけでは・・・というかもう大丈夫なのですか?体の方とか?」
「今はもう大丈夫です・・・ただここ半年近くの記憶が曖昧なのです。最初は何故かナギ君の事が気になってよく見るようになったのですが、ルヌプ兵が来てからは記憶が殆ど無く・・・」
おそらく半年前にザズムフに憑りつかれてナギを監視していたのだろう。そこはまだ記憶が存在しているという事は意識はアルドが主導権を握っていたが、ルヌプに捕まってからザズムフに逆転されたのだろう。
「光輝様、アルドさんって凄く植物について詳しいですよ。どうすれば作物が良く育つのかを教えてくれたりしてくれるんです」
アルラがそう説明してくれるとアルドは少し照れた様子で角をカリカリとかいていた。
「集落にいたころは食料の生産管理をしていましたから・・・作物の育て方などは一通りの知識を持っているのにすぎません」
「私達にとってはかなりの戦力ですよ。今までは畑を耕して種を撒いて育てていただけなんですけど、何故か魔物が生まれたりしていたのです」
メリアスは肥料や作物の成長速度などあまり気にせず、魔力を土に流して育てていたらしい。そのせいで野菜型の魔物が時々現れては討伐されて住民達の胃袋へ入っていく・・・俺は流石に食べる勇気は無かった。
「ハハハ、正直それを可能にしていたメリアス様の力は凄まじいです。ですが魔力を込めすぎると魔物化してしまいます。今後は精霊様達がバランスよく畑に魔力を循環させてくれるので魔物化は無いかと思います」
よかったこれであの不気味な野菜は出てこないようだ。
アルドのおかげで今後は安定した品質の作物が生産できるのは良い事だ。
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