54話 ダンジョンでの宴
「コウキ様、ただいま戻りました」
「おかえりエド。そっちは滞りなく終わったみたいだな」
「はい、ルヌプの兵器研究所及びそれにかかわる資料などは破壊しておきました」
正直やりすぎないか少し心配だったが杞憂に終わったみたいだな。
「そうか今ガウスさん達の歓迎会の準備をしている所だが、ノバさん達はいないのか?」
「いえ、ノバでしたら」
エドが振り向くとその先には正座で座らされているノバと彼の前で仁王立ちで睨みつけているシオの姿があった。シオの後ろにはジョーを含め数人の男女がいるが彼らも上位精霊なのかな?
「さて・・・ルヌプの落とし前は終わった事だし。今度はあなたの番ね」
「あの・・・シオ様、これには深い理由がありまして」
「ええそうね。エド様から聞いているわ。ルヌプと戦うために万全の状態になるために契約したって」
「ですのであの時はあれが最善で」
「・・・ああ、エド様との初めてがぁ・・・はぁああああ・・・あたしが最初に契約したかったな」
「っちょ!そのため息は勘弁してください!というか理不尽ですよ」
確かに理不尽であるが今のシオに意見を述べられる精霊達はいない。
「そう言えばノバとの契約は解除したのか?」
「はいルヌプでの落とし前の後に、ノバ殿の要望ですぐに解除しました」
元々期間限定の契約だったし解除するのは当然だが、多分シオが圧力かけていただろうな。
「という事は契約で得た能力は消えたのか?」
「はい確認しましたがもうありません」
そうか、得られた能力が消えるってのは少し残念だな。
「ただ【精霊眼】は感覚は覚えていますので【再現魔法】で発動は可能ですし」
流石エド、成長型ボスは日に日に強化されていくな・・・っと、そろそろ止めさせないとノバが可哀そうだな。
「あの、シオさんその辺にしておいてください」
「あら、コウキ君数時間ぶりね」
俺が声をかけると空気が変わりシオはニコリと笑ってこちらを見た。
「今日は亜人の方達の歓迎会と精霊達の救助作戦成功の宴をやる予定ですが参加しますか?」
「そう言えば今回の件ノバがコウキ君に依頼したのが発端だったわね」
思い出すかのように言うとシオを初めノバや他の上位精霊達が整列して一斉に頭を下げた。
「この度は我らの同胞を救っていただき誠にありがとうございます。この御恩は決して忘れません」
『誠にありがとうございます』
さっきまでの雰囲気とは一転しシオや精霊達はしっかりと誠意が伝わるようにお礼を述べた。こっちが本心なんだろうけどさっきまで光景が正直寸劇でも見せられていたのかと思ってしまう。
「ルヌプの行動はダンジョンにとっても見過ごすことは出来なかったし、こちらとしても精霊と協力して解決できて良かったと思っています」
「そう言っていただけるとは光栄です。今後とも良い関係でいたいと思います」
そう言ってシオが片手を差し伸べてきたので俺も手を出して握手した。
「つきましてはこの恩を返すためにエド様との契約を認めていただきたく」
「それは本人の許可を取ってください」
「え~、だってエド様が『コウキ様の命令であれば契約する』って言っていたんですよ」
たしかにそう言っていたがそれとこれは別問題。エドにその意思が無いのであれば俺も許可するつもりは無い。
「っちぇ、コウキ君を陥落させればすぐ契約できると思ったのに」
「腹黒い言葉が聞こえていますよ」
「まあ、契約云々は根気よく行くしかないわね・・・そういうわけであたしもここに住むことにしたから」
『はぁあああ?!』
いきなりの爆弾発言に俺と精霊達が口を揃えた。
「精霊帝!ここに住むってどういうことですか?!」
「だってエド様に認めてもらうなら毎日にでもアプローチしないと」
ノバ達の問いに対してもあっけらかんと感じで答えるシオ。
「何よりダンジョンに協力的であることが恩返しに繋がるわけだし」
「それはそうですが」
恩返しという言葉にノバ達は反論できないようだ。
「こちらとしては歓迎しますが、いいのですか精霊界に帰らなくて?」
「大丈夫大丈夫、あたしがいなくても回せるしたまに戻れば済むわ・・・それと今後はあたしに対して敬語は不要。ここに住む以上あなたがトップなんだし・・・もちろんエド様も」
すかさずアプローチする辺り流石だな。
「そうか?ならシオこれからよろしく・・・それと住民となる以上何かしら仕事をしてもらうが?」
「ならダンジョン内の魔力循環を担うのはどう?そうすればダンジョンの魔力吸収が効率化できると思うけど」
マジで?
「このダンジョン入ってくる人達の魔力を吸って維持しているんでしょ?魔力の流れとか精霊の得意分野だし。今感じているだけでも結構改善点はあるわね」
「そうなのか、それは助かる」
プログラミングコードは分かっていても魔力についてはさっぱいだからな。うまく動いているから成功だと思っていたがこういう視点があるとやはりまだまだだなと思ってしまう。
「まあその話は後にしましょう。宴の件だけど、もちろん参加させていただくわ。なんでもノバとジョーが随分と料理にご執心みたいだし」
シオがチラッと後ろにいるノバとジョーを見ると宴や料理と聞いて少しそわそわしていた。
「そう言えば精霊は食事を今までしなかったみたいだね」
「ええ、元々純粋な魔力さえあれば生きていけるからね・・・だから今回が初挑戦」
そんな会話をしているとカルラがやって来て宴の準備が整ったと報告が来た。
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「えーそれじゃ皆コップは持ったかな?」
目の前にはダンジョンの住民に加え亜人や精霊など倍以上に増えた人たちが一斉に俺を見た。
「それじゃ手短に・・・今日からこのダンジョンに新たな加わった仲間達、亜人と精霊達・・・そしてダンジョンの未来に乾杯!」
『乾杯!』
俺の音頭に合わせて皆が一斉に飲んだり食べたり始める。人数が倍近くなった事で規模もかなり大きくなった。
「お疲れ様光輝・・・随分とにぎやかになったわね」
ステージから降りて迎えてくれたエイミィはゆっくりと手に持っていたコップを俺のコップに付ける。
「そうだな、まさか亜人だけでなく精霊までここで住むことになるとは予想外だったけど」
「精霊帝・・・シオは昔から私の心配をしてくれていたの」
「そうなのか?」
エイミィの視線の先にはシオや精霊達の姿があった。
ランカが運んでくる料理に興味津々で食べ始めるとノバやジョーと同じような反応して料理に食らいついていた。
「ええ・・・神狩りが始まって行く当てもなかった時にシオが精霊界に誘ってくれてたのよ。収まるまで避難しろってね・・・最近までは【勇者】にご執心だったけど」
「どおりで精霊に対して随分と協力的だと思った」
思い返してみればノバからの依頼の時も俺に委ねはしたが断らせるそぶりは見せなかった・・・まあ俺が行く事には反対していたが。
「ありがとうね、亜人と精霊達を助けてくれて」
「俺は自分がやろうと思ったことをしたまでだ」
「ふふ・・・そうだね。でも本当に感謝しているのよ」
そう言ってエイミィは再びコップを俺のコップに当てる。
「ちょっと、エイミィこれはどういう事なのよ!」
ちょっとばかり良い雰囲気かなと思っているといつの間にかシオがこっちに来ていた。
「何のことかしら?」
「このダンジョンの住民よ!エド様もだけどこことんでもないのがゴロゴロいるんだけど・・・特にメリアスさんとか!」
あ、もうメリアスに会ったのか・・・というかメリアスには「さん付け」なんだな・・・気持ちは分かるが。
「それにメリアスさんの隣にいる少女・・・女神・セフィロトでしょ?いつの間に復活してたの?」
「最近ね・・・あなたが【勇者】にご執心の間に色々とあったのよ。ところでここは気にってくれた?」
「最高よ!精霊が食事できることを知ったのも衝撃だったし・・・随分と損していたと思い知らされたわ」
どうやらここの料理を気に入ってくれたようだ。
「これからよろしくねエイミィ・・・今度こそあなたの力になってあげる」
そう言ってシオは手を差し伸べるとエイミィも笑って握手した。
その後も住民達全員のどんちゃん騒ぎは続きダンジョンで一番騒いだ宴となった。
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