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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました  作者: 緑葉
第3章 ルヌプ侵攻編
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53話 ルヌプへの制裁

亜人達の受け入れ許可が下りた翌日、俺達は集落に向かいガウス達の引っ越しの準備を行っていた。


と言っても亜人達の荷物はそこまで多くない。ルヌプ兵達がやって来た時に今まで作っていた魔法具などは殆ど研究用として持ってかれてしまっている。今集落に残っているのは家具や僅かな作物ぐらいだ。


そのため準備は思ったよりも早く済み全員集落の入口へ集合していた。


「では、エドワード殿お願いします」

「本当にいいんだな?」

「ええ」


エドがガウスに確認を取ると、集落全体を爆炎で焼き尽くした。


「これで魔法具の暴走で集落が焼かれたように見えたらいいけど」

「一応ルヌプ兵の死体を置いてありますから事故に見せかける事は出来ると思います。あの炎ですから人間と亜人の区別すらつかないと思います」


そう、今回エドが集落を焼いた理由は実験の失敗で集落が炎に包まれたとルヌプに誤認させるためだ。あとまたルヌプ兵がこの集落にやって来た時に実験品などを再利用させないためだ。


「よし、それじゃダンジョンに戻るか」


俺はモニターを操作してダンジョンの地か45階層へ続く門を展開したのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ダンジョンに戻るとエイミィやフロアボスを含め住民全員が出迎えてくれた。


「おかえりなさい光輝。無事に依頼を達成ね」


相変わらずの女神フェイスだが妙に嬉しさがにじみ出ている気がする。


「あの、コウキさん・・・あの方がもしかして女神・エイミィさまですか?」

「・・・凄く綺麗」


おずおずとした様子でエイミィを見ている・・・そういえばエイミィは女神だ。昨日は精霊帝まで現れたし感覚がおかしくなっているが本来であればお目にかかる事すらできない雲の上の存在なんだよな。


「初めまして亜人の皆さん、ようこそダンジョンへ」


ニッコリと見せる女神フェイスにナギ達は硬直してしまっている。


「では、ここから先は儂グラムが皆さんの住む場所まで案内しますのでついてきてください」


そしてエイミィの後ろで控えていたグラムが出てきて亜人達が一瞬ビビったが彼のいう事に従い住宅エリアへ向かった。


「光輝、そういえば精霊達はどうしたのですか?エドワードの姿も見えませんが」


亜人達が離れた後、残された者を見たエイミィがそこに気付く。


「ああ、エドとノバさんたちはちょっと()()()()をつけに行ったよ」

「え?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


軍事国家ルヌプ


「元帥!報告です!」

「何事だ騒々しい」


広々とした豪華な一室で新兵器の資料に目を通していた男は突如やって来た部下を睨みつける。


ザーロ・ウォークマン、軍部の元帥にしてルヌプのトップに君臨する男。数年前、かつて滅亡寸前だった隣国のテオプア王国が突如立て直され急成長するを目にし、自国の危機を体験した彼はとある人物からの提案で軍部に力を注ぎ込むようになった。火薬や他国の武器など仕入れられるものはあらゆる手段で手に入れてきた。


そして追い風のごとく出てきたのがとある森で発見された亜人達の集落。自分達の知らない魔法具の技術を持つ集団を捕らえ、さらに精霊を使った兵器の開発を行わせた。


結果ルヌプは大きな力を手に入れ、かつては脅威に感じていた魔物達も今ではただの資源にしか見えてない。この力があれば女神・エイミィを先に帝入れるのはルヌプだと確信を持っていた。そしていずれ隣国であるテオプアに侵攻する野望を掲げていた。


・・・そのはずだった


「軍部の研究所が突然爆発して!」

「なんだと?!」


ザーロが急いで窓から外を見ると確かに研究所の方で業火が燃え盛っている。


「馬鹿な、爆発音なんて聞こえなかったぞ!」

「原因はまだ分かりません!研究所にいる警備兵達も火を見るまで気付かなかったみたいで!」

「ええい!水魔法を使える兵士を中心に動かせる兵士達に鎮火させろ!」


ザーロが怒号をあげて指示を出した次の瞬間、部屋に数人の男女がやって来た。


「ごきげんよう・・・『小物(ルヌプ)』の皆さん。あたしはシオと言います」


先頭を歩くのは虹色の衣服を纏った美女。その衣装や輝く髪の色からこの世の美では表せないほどである。その美貌に部屋にいた兵士達も現状を忘れてしまうほどに見惚れていた。


「誰だ?見たところルヌプの者ではなさそうだが・・・そうかあの方達の客人だな?申し訳ないが今はおもてなしできる状況ではない」


何を勘違いしているのか、ザーロは部屋に無断で入ってきたシオ達を客人と思っていた。だがその考えもすぐに消える。


「本当に愚かですね」


シオがフィンガースナップした瞬間、部屋の中が一瞬歪む。


「な!いったい何が?」

「改めて名乗らせていただきます。あたしはシオ・・・精霊帝です」


『精霊帝』という言葉を聞いた瞬間ザーロを含め部屋にいた者達は戦慄した。


「精霊帝・・・だと?」

「ええ・・・この度は我々の同胞を気付付けた事への制裁を与えに来ました。手始めに囚われていた同胞の保護及び精霊に関わる兵器などは全て破壊させていただきました」


ニッコリとほほ笑むシオにザーロは必死にこの状況を打開する手段を探していた。


「ご、誤解です!精霊を使った兵器は部下が勝手に始めたことであり私も今知ったばかりで・・・」


誤魔化そうとするザーロであるが彼の耳を掠るように炎と水の刃が撃ち込まれ後ろの壁を破壊した。


「二人とも落ち着きなさい。気持ちは分かりますがエド様との約束を忘れていませんよね?」

「「っは!申し訳ございません」」


白々しく謝る二人を見たザーロはすぐに後ろにいる集団の正体に気付く。


「・・・まさか上位精霊」


シオの後ろに控えていた6人の男女。それぞれが属性を象徴するかのような輝く色の髪をしている。


「我々はこの日を持ってルヌプの地には一切の干渉をしません・・・それがあなた達への制裁です」

「・・・え?」


あまりの内容にザーロ達はキョトンとした。

精霊がルヌプに干渉しない?・・・それだけ?


てっきり精霊達による大暴動でも起きるのかと思いザーロは思わず顔がニヤける。


精霊帝の判断は甘い。


そう確信したザーロは懐に隠していた拳銃を取り出す。

とある国から僅かながら入手できた兵器・・・火薬を利用したこの武器であれば確実に仕留められる。


研究所は失ってしまっているが精霊帝を捕獲できれば更なる新兵器の開発ができると・・・


そう思ってすぐさまシオに向けて銃弾を放つが彼女に直撃しそうになった瞬間、突如現れた黒い仮面とローブを纏った男、エドワードによって弾かれる。


「な!何が?」

「残念・・・私には愛しい方から守られているの」


困惑するザーロ達であるがシオはうっとりとした表情で目の前の男を見る。


「貴様は何者だ!精霊ではなさそうだが」

「我が名は『マスク・オブ・オリジン』・・・ダンジョン最強の魔術師だ」

「ダンジョンのだと?」

「シオ殿・・・目的はすでに達成した。今回の報告は全て上映された」

「上映・・・何のことだ?」


そう言うとエドワードは手に持っていた水晶玉を見せた後、窓の外へ指を指す。

すると上空には巨大なザーロの姿が立体映像のように映し出された。


「今の対談はルヌプ中に知れ渡っただろう・・・今後ルヌプは精霊の加護を得られない・・・お前達はそれだけの罪を犯したのだ」

「罪だと!ふざけるな!たかが精霊・・・我々は使えるものを使っただけだ!お前達あいつを撃ち殺せ!」


ザーロの指示で兵士達も拳銃を取り出して一斉射撃するがエドワードの魔法によって即座に精霊達が部屋から消えた。


「っち!何が精霊の加護だ!そんなものあれ我には必要ない!」


ザーロはそう呟くが彼は知らない・・・精霊がルヌプに干渉しないという事はつまり魔力の循環がその場だけ行われない事。


この結果がルヌプにとって悲劇を加速させる事に彼らはまだ知らない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


エドワードとシオ達が撤退していた頃、ルヌプ軍部本部を見つめるように一人の男がいた。


「こちらヒスイ。若の予想通りルヌプは精霊帝の逆鱗に触れたようでござる」


『そうか・・・一応女神・エイミィから詳細は聞かされていたからそうなるとは予想出来ていたが』


「ルヌプの被害は軍部研究所全焼と元帥部屋の一部破壊程度・・・逆鱗というには少々肩透かしのような気がするでござるが」


『事前にエイミィが俺達(テオプア王国)の事を伝えておいてくれたらしい。そうじゃなければ今頃軍部だけでなく首都全体が崩壊していたに違いない・・・まあ、とんでもない毒を残していったがな』


「毒でござるか?」


『ルヌプはこれから地獄を見るぞ。精霊による魔力循環がその場だけ行われないんだ。土地は荒れ果て、作物は育たず、魔物の大量発生・・・精霊の逆鱗の意味をルヌプは次第に理解するはずだ』


「因果応報でござるな・・・それと、運が良いのか()()はルヌプから離れていたようだ。詳しい場所までは分からないが、西へ向かった事だけは掴めたでござる」


『・・・そうか了解した。お前は一度こっちに戻って来てくれ。こっちも色々と忙しくなる』


「御意、これより帰還するでござる」


そう言い残し男は風のように姿を消したのだった。

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