51話 精霊帝降臨
「見つけましたわ!勇者様!」
夜空を見上げると空からスカイダイビングしてくる女性の姿が見える。
こういうシチュエーションだったら『親方!空から女が!』とでも言うべきなんだろうが、それよりも気になる単語が聞こえた。
『勇者』・・・って誰の事だ?
それにノバとジョー曰く今落ちてきているのは精霊帝らしい・・・そういえばノバが精霊帝は勇者を探しているって言っていたな?
勇者って誰の事だ?
俺がそんな事を考えているとジョーとノバは慌てた様子で一斉に飛び、降ってくる精霊帝の方へ向かった。
「精霊帝!何故あなた様がここに?!」
「そもそも、精霊帝がこの世界に現れたらどんな影響がでると思っているんですか!」
二人は必死に精霊帝に問いかけるが彼女の目に彼らは映っておらず『ちょっと!邪魔!』と一蹴して二人を吹き飛ばした・・・え?上位精霊だよね?
なんか凄くギャグ的なシーンを目にした気がする。
そして精霊帝は勢いを止める様子もなく真直ぐこちらへ落ち・・・そして地面へと直撃した。まるで小さな隕石が落ちてきたように土煙を巻き上げるが衝撃はこちらにまで伝わらない・・・どうやらエドが俺達がいる範囲に結界を張ってくれたようだ。
そして巻き上げられた土煙が風で飛ばされるとそこに虹色に輝く衣服を纏った美女が現れる・・・近くで見ると雰囲気がエイミィに似ている気がする。
「ちょっと!美しい女性が落ちてきたのなら受け止めるのが常識でしょ!それともあまりの美しさに身体が動かなかったりして!キャー私って罪な女!」
あ・・・ポンコツ的な意味でも似ている気がする。
残念な美女ってこういう人の事を指すんだろうな。
そしてそんな女性をエドは容赦なく結界で拘束した。
「っちょ!なんでアタシを閉じ込めるのよ?!」
「お前から溢れる膨大な魔力がどんな影響を出すか分からないからな」
エドがそういうと精霊帝も気付いたようで、ッハっとした顔でエドを見た。
「え?もしかして他の人へ気遣いを?なんて優しい人なの?!」
なんか随分と感情豊かな精霊帝だな。
「えーと、あなたが精霊帝なんですよね?」
「そうよ。あたしは精霊界の頂点に君臨する、全ての精霊の母であり、この世界に流れる魔力の調和を担う存在!精霊帝のシオよ」
結界の中に閉じ込められているのに随分と偉そうな態度だな・・・いや、実際偉いのか。
精霊帝の名前を聞いた瞬間、俺達の後ろにいた亜人達は一斉に土下座のポーズで頭を下げ始める。まあ上位精霊のさらに上の存在が現れたわけだしこうなるか?
「えーと、シオさん?何故あなたがここに来たのですか?確か精霊界にいるはずじゃ?」
「それはもちろん!勇者様に合うためよ!」
「その勇者様って?」
「当然、そこの漆黒のローブを纏った殿方よ・・・きゃ!」
いや、何が『きゃ!』だよ!
というかやっぱり勇者ってエドの事だったか。
この中じゃ一番強いのはエドだからな。
「いや、エドは勇者じゃないですよ?」
エドはフロアボスの一人として生み出された存在・・・確かに人間離れした魔力量は持っているけど。
「そんな事は無いわ!この人間離れした魔力!邪神相手にも立ち向かう勇敢さ!そしてそれを退ける実力!世界に認められた勇者に決まっているわ!」
まあ、やっている事は勇者みたいなものだよな。
というか、邪神と戦っていた所見られていたのか?
「フフフ、精霊界にいてもこの世界の魔力の流れは感じられるのよ。その中に懐かしい邪神の魔力が広がるのがあったのだけど、それを超える魔力が邪神の魔力を打ち消したのを感じたの。邪神にしては随分と薄い魔力だったけどヒトの脅威になっていたのは間違いないわ!そんな相手を負かす魔力の持ち主が現れた!これはもう勇者に間違いない!っと思ってここへ参ったわけ」
随分とハイテンションで語ってくれた精霊帝。
「それで、あなたは何故勇者に会いたがっていたのですか?」
「それはもちろん私と契約するため!」
どういう事?精霊帝がエドと契約したがっているって事?
「何故?」
「もちろん勇者様の力となることよ!そして勇者と様々な困難を乗り越えそして・・・きゃあ!!これ以上言わせないでよ!恥ずかしい!」
結界の中でくねくねと悶える精霊帝・・・もう俺やエドからはこの人に敬意すら感じられなくなって呆れた状態だった。さっきまで警戒心向けて緊張感漂う空気だったのに。頭を下げ続けていた亜人達もポカンとした顔で彼女を見ていた。
「何度もいうが我は勇者ではない・・・そもそも勇者とはどう確認すればいいのだ?」
「もちろんステータスの称号に【勇者】が入っているはずよ」
おや、意外と簡単に確認できるみたいだな。
エドは自分のモニターを表示して確認する。
「ふむ・・・やはり我は勇者ではないな・・・見ろ」
そう言ってエドが自分のステータスをシオに見せる。
エドワード
称号:【ダンジョン守護者】【原初の魔術師】
あ・・・フロアボスの二つ名が称号になっているのか。
「嘘!なんで!こんなに強いのに何で【勇者】じゃないの?!」
突き付けられる現実にシオはこの世の絶望みたいな顔をしてエドのモニターを見ていた。
「これで分かっただろ・・・諦め『じゃあ!一時的な契約で!』・・・は?」
諦めさせるためにわざわざステータスを見せたのにシオは諦めきれない様子で提案してきた。
「あなたが相当な実力者なのは間違いないわ!邪神に立ち向かい退ける力!精霊帝である私と契約する資格は十分にある!だから本物の【勇者】が現れるまであたしと契約しない?さらに強くなって最強の魔術師になれるわよ!」
『あたしと契約して最強の魔術師にならない?』
なんかそんな言葉が脳内に聞こえたような気がするがスルーしよう。
「エド・・・精霊帝がこう言っているが契約するのか?」
「力より面倒な事が起きる気しかしないのですが・・・コウキ様がお望みでしたら契約します」
「いや、それはお前の自由で」
「なら、断ります」
判断をエドにゆだねた瞬間、即決で契約を拒否した・・・まあ、今でも十分強いし。
「っちょ!精霊帝よ!精霊の中でも頂点よ!物凄く強いのよ!」
シオがなんか子供っぽくしぐさでギャーギャー騒いでいるがなんかこれ以上関わってはいけないような気がする。
そんな事を考えていると先ほど吹き飛ばされたノバとジョーが戻ってきた。
「皆様ご無事ですか?!すみません、ウチの暴走精霊帝がご迷惑を!」
「すげぇ、精霊帝の出鱈目な魔力を結界で封じている」
「っちょ!二人とも酷くない?!」
「「自分の存在を理解してください!」」
二人のツッコミに精霊帝は不機嫌そうな顔で俺達を見た。
「はぁ・・・俺、この事もエイミィに伝えないといけないのかな?」
俺はそんな不安を抱えつつ夜空を見上げるのだった。
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