37話 亜人達の魔法具
「あの封印兵器を作ったのは我々亜人ですから」
ガウスから告げられた事実に会議室にいた全員が絶句した。
「つまりなんですか?あなた達は自分達の命を救ってくれた精霊を犠牲にしたという事ですか?」
真っ先に口を開いたのはやはりというかノバだった。殺意を向けるとはこういう事なのかと実感するくらいノバの目は鋭くガウス達を睨みつけた。
「ノバさん、落ち着いてください」
「コウキ殿!この者達は自分の保身のために我らの同胞を犠牲にしたのですぞ!」
「返す言葉もありません・・・もし精霊の裁きを受けるのでしたらその覚悟はあります」
ガウスはガウスでノバに殺されても仕方ないと思っている様子だ。
「ノバさん、今はガウスさん達の話を聞くのが先です。今は情報を集める事が重要です」
「・・・すみません、自分も感情的になりすぎました」
一旦ノバを落ち着かせた後改めて俺はガウス達に質問をした。
「この封印具ですが、あなた達が作ったというのはどういう事ですか?」
「我々が暮らす集落では先祖から伝わる精霊を宿す魔法具を作る技術が伝わっています。契約した精霊を魔法具に宿し、その魔法具を身に着けることで魔力暴走を引き起こさないようにしていました。しかしある時、我々の集落にルヌプの兵士達がやって来ました。奴らは我々が持つ技術を知ると全員を奴隷として捕らえあの封印具を作るように命じたのです。ダンジョンに入るための兵器が必要だと言って」
それを聞いた瞬間俺とエイミィは互いを見た。
おそらくルヌプの兵士達はダンジョンへ向かう途中偶然ガウス達が暮らす集落を発見したのだろう。
エイミィを狙うルヌプにとって精霊の知識を持ち、魔法具を開発できる技術は喉から手が出るほど欲しい人材だ。結果ルヌプは集落を襲い住民達を奴隷として捕らえ、兵器開発をさせたわけなのだが。
「私のせいであなた達にも被害が出ていたのですね・・・本当にごめんなさい」
エイミィを狙う輩は多い、個人から国家まで幅広い。俺やダンジョン関係者は問題ないが、ダンジョンの外で関係のない者達にまで被害を出してしまった事にエイミィは責任を感じていた。
「エイミィ様が謝る事ではありません・・・全ては私の判断が招いたこと。あの時降伏せずに戦うべきだったのに」
集落には女子供だっていたはず。無駄な血を流さないようにと思ったガウスの判断は間違いだったとは言い切れない。
「あの~一つ質問ええですか?」
重い空気の中のんきそうなゾアの声で全員が一斉にゾアを向く・・・なんというかこういう時ゾアのメンタルが羨ましく思える。
「実は回収した封印具の中に封印具やないもんも混ざっておったんやけど。これについてあんさんらはこれは知っとるか?」
ゾアが取り出したのは5つの赤い宝石の魔法具。一見すると他の封印具とあまり変わらないが。
「ゾア、封印具じゃないってどういうことだ?」
「実はコレ封印具やなくて本物の魔法具・・・つまり魔力を注ぐことでドデカい火球を飛ばす高性能な機能がそなわっておるんです。つまりこれには精霊は封印されておらんかったのです。ご丁寧に数回発動したら壊れる機能まで付いていました」
封印具の中に本物の魔法具が混ざっていたって事か?しかもゾアが高性能っていう事は低コストで高い火力を出せるようなものだ。
「おそらくそれはナギが作ったものだと思います。あの子は精霊が傷つくのを嫌っていましたから」
「ナギ?」
「私の集落で暮らす少年です・・・子供とは思えないくらい頭が良くて大人と一緒に魔法具を作っていました」
何というかワイトの魔法具バージョンみたいな子供だな。
「彼だったら封印具に似せた魔法具を作れたかもしれません」
「ならその子が技術を教えれば精霊の犠牲は無くなったのでは?」
「いえ、ルヌプはすでに精霊の力を引き出すことに目を付けています。ナギの本当の技術を知ればそれこそさらに恐ろしい兵器を作らせていたはずです。それにたとえそれを教わっても到底作れる自信はありません」
確かにもし間違った方向にその才能を使わせたら恐ろしい事になっていたはず。そういう意味ではこれが最小限の被害にしているのかもしれない。
「ガウスさん、他の集落の方達は今どこにいるか分かりますか?」
「おそらく我々の集落で今も兵器開発をさせられているかと思います。奴ら我々の集落を兵器開発の研究所として使うと言っていましたから」
つまり研究所も奴隷達もそこにいる可能性は高いな。
「やることは決まりましたか?」
「ああ・・・研究所に向かい集落の住民及び囚われた精霊の救助、そして研究所の破壊・・・これで行くぞ」
『御意』
「我々を助けてくれるのですか?」
「元々ノバさんの依頼で精霊を助けるつもりでしたし・・・こちらのせいで隣人に迷惑をかけてしまったわけですから」
まあルヌプのやり方が気に食わないというのもあるんだが。ガウス達は涙を流しながら俺達に頭を下げてお礼を述べた。
さてやる事は決まった・・・後は誰が行くかだが・・・
「コウキ様、今回の件我にお任せいただけませんか」
最初に名乗りを上げたのはやはりというかエドだった。まあ正直実力があって隠密向きと言ったらエドぐらいか。それに亜人達を救ったのは彼だし最後までやってもらうとしよう。
「そうだな、状況的にオールラウンドのエドが適任だと思うが」
他に名乗りが出ないか心配だったがエドが出ると言うと皆も納得した様子でいる。
「ガウスさんすまないが集落までの案内に協力してもらえないでしょうか?」
「もちろんです・・・案内は私にお任せください。ですが他の者は・・・」
「もちろんここに滞在してかまいません。エイミィもいいよね?」
「ええもちろん」
エイミィの許可も出たし彼らは地下45階層の居住区でしばらく暮らしてもらう事になった。
「さてエドが行くのは決まったが他に戦力になるとしたら」
正直軍隊とかそういう知識が無いからどれくらいの人数で行けばいいのか分からない。パーティメンバー上限は8人までとかだったら分かりやすいのに。
「コウキ殿、私もエドワード殿と同行してもよろしいでしょうか?」
「ノバさんも?・・・それは構わないですけど」
「元々私の方から依頼したものです・・・微力ながら私も同胞を救う手助けをしたいのです」
「分かった・・・エド、部隊の編成はお前に任せるが安全第一だ」
「御意!」
さて、色々と忙しくなりそうだ。
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