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地天才過去編⑦

兄と義妹を巻き込み立ち上げた人材育成プロジェクト。

始まりはちょっとした思い付きではあったが行動に移した瞬間からまるでギアがかかったかのように動き出す。


俺が改良した教育カリキュラム、宝姫のコミュニケーション能力とプレゼン能力で財閥から弾かれた会社を誘致する。後は兄の会社の名を借りて施設を借りるだけだと思っていたのだが、ここで予想外な事に俺の知らなかった兄の一面が輝いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あ、トミ爺さん久しぶり・・・ははは、そういや前会ったのは2週間前だったな。まだボケていなくて安心したよ。メール見てくれたか?・・・そうウチの会社の特別講師をしてほしくて・・・ああ、あのカリキュラム?実は俺の弟が考えたやつでな」


次々と電話をかけてはカリキュラムの講師を引き受けてくれる人を探している兄。

その光景に俺と宝姫は少し驚いていた。


「ねぇ、トミ爺さんって言っていたけどあの連絡先って有名な大学の名誉教授のはずだよね?その前に掛けたのは引退されたニュースキャスターや評論家とか・・・あなたのお兄さん何者?」

「昔から人と仲良くなるのは得意だとは理解していたがここまでとは・・・」


次々と特別講師のOKを貰い、リストアップされていく名前の殆どがニュースや雑誌とかで目にしたことがある名前だった。


「ふぅ・・・とりあえずスケジュール的にはこれくらい集まればいいかな?細かい調整とかは後日相談って事になった」

「兄さんいつの間にこんな有名人達と知り合いになっていたんだ?」

「ん?皆、バイト先の常連だぞ・・・たまに話を聞かされたり意見を求められたりしていつの間にか連絡先とか貰って」


どんなバイトだよ!・・・普通こんな有名人達と連絡交換できるか?!


「はぁ・・・やはりタダモノでは無かったわけね。お爺様だったら絶対に欲しがる人材よ」


個人の能力で言えば兄の学業の成績はそこまで飛びぬけている訳ではない。どちらかというとどれも平均か少し上ぐらい。パソコンの扱いもフリーランスで出来るレベルだけど『出来る』程度だ。だから平成財閥からはそこまで評価されていなかった。


だが人間関係、コミュニケーション能力など勉学以外での能力は跳び抜けている。まぁ、感情的になりやすい為一度嫌いになったら相手にはかなり当たりが強いが。


宝姫もコミュニケーション能力は高いがそれはあくまでビジネス上でのやり取り。プライベートゾーンに入り込むような親密なコミュニケーションであればおそらく兄の方が上だ。簡単に言えば「たらし」なのである。


「・・・言っとくが俺は平成財閥には入らないからな。あくまで才と宝姫に協力しているんだ。あの爺や昇が関わるなら契約は解除だ」


これだけは譲れないと言わんばかりに釘を指す兄だがそこは俺も宝姫も理解している。


「分かった・・・とりあえずこれで一通り揃ったな」

「ふふふ、そうね・・・これから色々と動き出すと思うと楽しみね」

「・・・ところでなんやかんや話が進んでいるんだがお前達は学校とかは大丈夫なのか?忘れてたが学生だろ?」


今更と言わんばかりに兄が当たり前の疑問を俺達に投げてくるがその心配はいらない。


「プロジェクトに参加する人達は全員社会人だから研修を行うのは夜か週末の昼の予定だから俺も宝姫も時間的に問題ない」

「ええ、それにこのプロジェクトを進める為に習い事を減らしてもらえた訳ですから時間的には十分余裕です」

「そうか・・・まぁお前達がそれでいいなら構わないが役職とかどうする?才は契約社員という形にも出来るが宝姫は中学生だから流石に雇用は出来ないぞ」

「別に収入とかはいらないわ。私はあくまでスポンサー権アドバイザーという立場でいさせてもらうので・・・それに私が欲しいのは賃金ではなく実績なの」


つまりやるからには成功させろという事だ。


「分かったよ・・・税金とか申請とか色々と面倒だけどやるしかないか」


兄は深い溜息をしつつも期待に満ちた目で俺達を見ていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


プロジェクトが始動してから約2年。

俺と宝姫は学業と会社の運営を掛け持ちする生活を送った。


学校が終われば宝姫と一緒に兄の会社へ向かい。呼ばれた特別講師との打ち合わせを行いカリキュラムの調整を行ったりした。ちなみに平成家の人間だと知られると面倒の為、俺と宝姫は兄の弟妹という事で『地天』の姓を名乗っている。3年間『平成』の姓を名乗っていたせいか随分と懐かしく思った。


優秀な講師達による教育、平成財閥を見返したいという受講者達のモチベーション、これらが合わさり育たないわけがない。


結果として受講者達の成績はや成果は明確に結果を残し、その評価が人を呼び寄せ受講者の数は日に日に増えていった。


「なんというかこうも順調すぎると怖いな」

「あら?私達が組んで結果が出ないはずはないじゃない」


モニターに映し出される利益のグラフを見ている兄は引きつった様子で呟くがソファで寛ぐ宝姫は当たり前と言わんばかりの様子で紅茶を飲んでいる。

この光景も見慣れたものだ。


「まあ講師達の有能さに助けられている部分も大きいがな」

「あら?この成果で最も貢献しているのは才貴方だってこと自覚していないの?」

「そうだぞ、講師陣の皆もお前が考えたカリキュラムを凄く褒めてたぞ」


2人は反論するように俺を褒めるが正直俺がした事なんてカリキュラムを少改善したぐらいなんだがな。


「まぁ順調なら良いんじゃないか。俺としてはこのままこのプロジェクトで会社を大きくしていきたいと思っているが・・・」


軌道に乗っている今が一番気を抜けない時期。

規模を大きくするのであれば俺と宝姫は今まで以上に気を抜く事は出来ない。

そう思っていたのだが兄から出たのは予想外の言葉だった。


「いや、会社は大きくしないし、今参加している研修生が終了したらプロジェクトはこれで終了だ」

「「え?」」


プロジェクトを終了?


「本来このプロジェクトはお前達が初め平成財閥から弾かれた者達を救うために始めたプロジェクトだ。今受けている研修生が終われば目標は達成だ」


兄はそう言ってこれまで受けた研修生達のリストを俺達に見せる。

確かに最初に目標としていた会社はどれも研修を受け終えている。


「つまりお前達がこれ以上この会社の為に働く意味がないって事だ」

「そんな事は無い!それに俺はこのままここで!『才、お前は平成家の人間だ』っ!」


ここにいる時は忘れていたいと思っていたことをまさか兄から突きつけられるとは予想外だった。


「宝姫もお前もこんな小さな会社にいて良い人間じゃないんだ」

「それは・・・」


確かにこのままずっとここにいられるとは思っていない。

だがここで三人で色々と考えている時間が居心地が良くてずっと続けていたいと思っていた。


「その通りだ、お前達は平成財閥を担う両翼なんだからな」


追い打ちをかけるように入口から告げられる声。

ふと振り向くとそこには平成尊と昇がいた。


「5年ぶりだな地天秀」

「そうだな・・・正直今でもあんた達とは顔を合わしたくないと思っているが」


感情をむき出しにはしなくとも兄は言葉の棘を鋭くさせて返答する。


「それで?お主からわざわざ連絡してくるとはどういう風の吹き回しだ?」

「別にただ二人の『通知表』を見せようと思ってな」


そう言って兄は一枚のタブレットを昇に突きつける。


「あんたが切り捨てた会社の成長、もたらした利益なんかを纏めてある」

「ほう・・・これは見事だな」


横から覗き込む尊は感心した様子だ。


「それで?我々をここに呼んだのはこれを見せる為だけか?」

「まさか?・・・俺としてはそろそろケジメというか《《真実》》が知りたいと思ったんだ」

「真実?兄さんどういうこと?」


尊と昇がこの場所にいるだけでも混乱するというのに兄は真直ぐ二人を見ていた。


「爺・・・あんた、オヤジ達が死んだ日・・・オヤジの会社に行ってただろ?」

「・・・え?」


兄から告げられた質問によって忘れ去りたかったあの感情が再び溢れそうになった。

面白い、続きが気になるなど思った方は是非評価をお願いします。

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