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地天才過去編⑥

俺が考えた昇への反抗作戦。

簡潔に述べてしまえば、奴が切り捨てた人材を育てて見返してやろうという話だ。


「いいわね、お爺様も『判断が極端』とかよく言っていましたし、新しい事業開発にも繋がりそうですね」


俺の提案に乗り気の宝姫、だがここで問題がある。


「だが問題はいくつかある。まず相手側をどうやってこの企画に参加させるかだ。平成財閥の人間が切った後に平成財閥の人間が鍛える企画を立てても乗るか?」

「そこは新しい土台を作るしかありませんね・・・平成財閥以外の者で協力者が必要になります」

「次に鍛える側の人材。知識、技術を教える講師役が必要なんだが・・・まあある程度鍛える分なら俺がこれを担当できる。だが人が増えれば俺にも限度がある」


平成家が用意したカリキュラムは幅広く、経済知識、言語だけでなくエンタメ業界から趣味などあった。学んだことは全部覚えているからそこから分かりやすくまとめて教材にすればいい。


だが教材だけでなく指導する人間も必要の為やはり問題にはなる。


「あとは資金だが・・・前の二つに関わるが場所の確保と人材の雇用とか色々とかかる」

「あら?でしたら私のお小遣いから出しましょうか?」


会社運営資金をお小遣いで賄おうとする思考はまだ子供か・・・っと大抵の人は思うだるが彼女は大財閥のご令嬢。金の桁が違いすぎる。ちなみに俺も個人名義での貯金は一般人から見たら目が飛び出るほどの金が貯まっている。


「まあ、クラウドファンディングって手も考えているが昇に気付かれると色々と面倒だ。財閥ではなく個人の資金でしばらくは回せるだろう」


流石に妨害工作のような真似はしないだろうがそれでは驚かすインパクトが激減してしまう。知られるとしたらもっと先にしたい。


「ふふふ、なんかこうして秘密の計画を立てるのってとても面白いわね。人材の方は私の方で色々と探してみるわ・・・才は場所、協力者の当てをお願いするわ」

「・・・マジでやるんだな。ほんの思いつきだぞ?」

「『成果の第一歩は一瞬の閃きから』・・・私の持論ですわ」


持論かよ・・・だがその通りだな。


「分かった・・・こっちの方でも探ってみるがその前に・・・」


計画を進める上で一応根回しはしておくべきだよな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ほう・・・才が一緒だから何事かと思ったが。随分と面白そうな企画を立てたな」


宝姫の元々の目的だった尊の報告ついでに俺は今回の計画について財閥の会長である平成尊にプレゼンをした。一時間で準備した即席プレゼンだから出来栄えは個人的にはもう少し煮詰めたいと思っている。


「昇の提案をどうしようか儂も悩んでいたが、宝姫と才が尻拭いしてくれるなら任せても良いか?」

「はい!お任せください!」


尊の許可も出た事で宝姫は更にやる気を出していた。

やはり昇の提案には尊にも思う所があったようだ。俺が即席で作ったプレゼンもいくつか指摘を受けたが特に反対や批判的なものは無かった。


「あの、お爺様・・・この計画はお父様には・・・」

「もちろん黙っているよ・・・これはお主らの企画だ。援助が必要であればするが、進めるのは全てお主らがすることだ。儂は金の事以外は何も口を出さんし目をつむっておく」


とまあ昇に知られる心配もなさそうだ。

それにしても俺の時はあまり感情を見せなかったが、今回のプレゼンを聞いて随分と上機嫌な様子だ。やはり孫娘が可愛いのか随分と甘い顔をする。


「これも良い経験だ。お主たちの成果がどのように花開くか楽しみだ」


こうして俺と宝姫の一大プロジェクトが始動する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日俺は宝姫を連れてある場所へ向かった。


「才・・・こんな所に何があるの?」

「昨日話した協力者の場所だ・・・正直協力してくれるか分からないが俺が信頼できる人物だ」


そう・・・俺が今でもこの世で最も信頼している人物。


そう考えながら俺はとあるビルのドアを叩く。

ドアには『E《アースカイ》・G《ジーニアス》・C《コーポレーション》』という名前が記載されていた。


「聞いたことが無い会社名ですね・・・どういう会社なのですか?」

「・・・一応人材派遣会社で先月立ち上げたばかりだ」


つまり出来立てほやほやの会社だ。


「はーい、E《アースカイ》・G《ジーニアス》・C《コーポレーション》!社長の地天秀です!どのような御用で・・・って才!?」


元気に出迎える社長・・・地天秀・・・俺の兄だ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


社長に迎え入れられた俺と宝姫は事務所の応接室で待機させられていた。


「才どういうこと?!地天ってあなたの旧姓だよね?・・・って事はあの人があなたのお兄さんで私のもう一人の従兄?」


そう言えば宝姫には兄さんの事は話したことはあるけど会った事は無いんだよな。

色々と衝撃が大きすぎたのか宝姫は少し混乱している様子だ。


「まぁな・・・宝姫には黙っていたけど俺と兄さんはたまに会っていたりしていたんだ」


そう・・・俺が平成家に養子入りした後も俺は兄さんと極秘に会っていた。


最初に再開した時はやはり俺が養子入りしたことに不満そうであったけどその後色々と話して最後は俺が元気にしている事を知って納得してくれた。


その後も定期的に会ってはお互いの現状を伝えあったりしている。

ちなみに兄は大学を復学し去年の秋に大学を卒業した。


なんでもバイト先の店長に大学を休学(本人は退学のつもり)している事がバレたらしく『親の期待を裏切るな!』と言いながらぶん殴られたそうだ。本人も一時的な感情で突っ走った事を自覚したそうで復学の道を選んだ。


大学を卒業した後、こうして念願だった会社を立ち上げたわけなんだが・・・


「いや~、まさか最初にここに来るのは才だったとはな」


嬉しそうにお茶を運びながら入って来る兄。

正直社長がすることか?と疑問に思ったが事務所には彼しかいない。


「まだ人は雇用していないの?」

「まあ立ち上げたばかりだしな・・・生活費や建物の管理費とかもあるし、仕事は・・・まぁ何とかなるかな」

「相変わらず勢い任せというか、計画性が無いというか・・・そんなのでよく会社が回せると思ったね」

「いやいや、仕事は来ているぞ・・・ぶっちゃけ下請けのプログラミングとかを俺がやっているんだけど」


完全にフリーランスのエンジニアじゃないか!


「ねぇこの人本当に才のお兄さんなの?全然有能そうに見えないんだけど」


呆れた様子で兄を見る従妹・・・まあ第一印象がこれじゃ仕方ないか。


「ところで随分と可愛い同伴者がいるけどもしかして才の彼女か?・・・っは!もしや今日来たのは彼女を紹介?!」


何やら変な勘違いをしている兄さん・・・まぁ紹介という意味は合っているが。


「兄さん落ち着いて・・・彼女は平成宝姫。俺の義妹で兄さんの従妹だよ」


俺が説明すると兄さんはピタっと止まり宝姫をじっと見る。


「平成って事はあの爺の孫で、糞ムカつくメガネ野郎の娘か?」


平成家の名前が出た瞬間、睨みつける兄さん・・・あれから3年。いまだに平成家の事は嫌っているようで、養子入りの話は今でも断っている。


一気に雰囲気が変わった兄さんを見て宝姫も少しビクッとしたが空気が引き締まったおかげもありいつもの冷静さを取り戻す。


「初めまして地天秀さん。平成宝姫と申します。才兄さんの義妹で平成財閥会長、平成尊の孫娘にございます」


落ち着いた様子で自己紹介をする宝姫。


「ふーん・・・それで?従妹を連れてきたって事はただ親戚同士で遊びましょうって事じゃないんだろ?」

「ふふふ・・・さっきまでの雰囲気が嘘みたいですね。少し評価を改めた方が良いかもしれません」

「生意気な従妹だ・・・お前達も忙しい身だろ?要件を聞こうか?」


すっかり仕事モードに入った兄さんに俺達は人材育成計画を伝えた。


「なるほどな・・・マジムカつくなお前んとこの親父!働いている側からすればどんだけ人生に影響すると思っているんだ?!」

「そうでしょ!本当に腹が立つわ!自分の父親ながらアレが次期会長と思うと情けなく思えてくるわ」

「娘からこんな評価とかマジかよ!」


元々昇の事を嫌っている兄さんに現在絶賛反抗期中の宝姫・・・二人の意見がかみ合った瞬間意気投合し始めた。


「そんで、お前達は人材育成のための土台・・・場所が必要なわけか」

「ええ・・・できれば平成財閥とは関わりが薄い場所であればと」

「なるほどな・・・才がここに来た理由はこれか・・・俺の会社なら平成家とは関係ありそうで無縁だからな」

「それもあるけど、俺としては兄さんと一緒に仕事がしたいって思ったんだ」


そう・・・コレが人材育成計画を考えた時真っ先に思った事だった。

今では立場とかが違うけどまた一緒に何かできる・・・そう思ったからここにやって来たのだ。


「・・・なるほどね」


兄さんはゆっくり目をつむり用意していたお茶を飲み干す。


「面白そうじゃないの!いいじゃねぇか!俺達で盛大にあの男を見返してやろうじゃないか!」

「ふふふ、面白くなってきたわね」


兄さんと宝姫が互いに悪そうな笑みを見せる。


ああやはり血は繋がっているんだなと実感した俺であったが・・・多分俺も同じような顔をしているのだろう。


こうして俺達は反抗期計画を進めていくのであった。

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