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地天才過去編①

光輝から夜会の参加人数を聞いた俺はいつもよりテンションが上がっていた。


「随分と上機嫌ですねサイ」

「誘いたかった相手が来てくれるからな、俺でも浮かれる時はあるさ」


俺の向かいの席に座っているのは一人の銀髪の少女。

彼女は優雅にお茶を飲み才を観察していた。


「ふふふ、あなたをそんな気持ちにさせる相手に妬けるわね」

「言っとくが相手は男だし俺にとっては友人のような人物だ。くれぐれも変な事を企むなよ」

「分かっているわ・・・相手がエイミィ様の加護を持つ人物となれば私だって弁えますよ」


エイミィの加護・・・それを口にした少女は少し不機嫌そうに眼を逸らす。


「セレナ・・・相手は外国の王族と同じかそれ以上の存在と考えておけ、少なくとも光輝との友好的な関係はテオプアの為になる」

「それはテオプア王国王位継承権第2位であるセレナ・V(ヴェレセ)・テオプアとしていっているの?」

「・・・そうだ」


テオプア王国の王族にして俺をこの世界に呼び寄せた張本人であるセレナはニッコリとほほ笑むように見る。そしてその眼を見た瞬間俺は嫌な予感がした。


「サイこの後時間はある?」

「今日は各支部のギルドマスター達との会議と研究所の視察、あと音楽団の指導がある」

「そう、なら今日一日私に付き合いなさい」


ワクワクとした彼女の期待を裏切るように淡々と予定がある事を伝えるもセレナは笑顔で俺を引き込む。


「おい、この後予定が!」

「大丈夫、スイにはもう伝えて予定を全部変えてもらったから」

「な!」


勝手にスケジュールを変えられた事もだが信頼していた秘書にまで裏切られたことにショックを受けた。俺はすぐに後ろで控えていたスイを見ると彼女は気まずそうに視線を逸らす。


あ、これは何か弱みを握られているな、そしてしっかり関係者への根回しも済ませている・・・そう悟った俺は大きなため息を吐く。


「っで、何をすればいいんだ?」

「分かればよろしい」


諦めた俺を見たセレナは勝ち誇ったように優雅に紅茶を飲む。


「本当・・・お前も変わったな」

「あら?成長と言ってください」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


俺、地天才は元居た世界では世界的な大財閥の会長を務める祖父を持ついわゆる上流階級の人間だった。しかし両親はそこまで大きくない会社の社長と秘書という地位で働いていた。理由は両親が祖父に反抗して勘当され、一から会社を立ち上げたからだ。


流石に大財閥の親を持つことだけはあり、父はかなり高度な教育を受けていた。そのおかげもあって金の使い方や人の動かし方が非常に上手だった。母親も元々は大財閥を支える秘書候補の一人だったこともあり父を支え会社を支えていた。


会社の運営で忙しい両親に代わって俺の面倒を見てくれていたのは少し年の離れた兄だった。勉強嫌いでよく学校のテストを両親に見つけられては怒られていた。それでも最後は頭を撫でられ「次は頑張れよ」と言われながら笑っていた。勉強もスポーツも苦手な兄だったがなぜか周りにいる人達は笑顔で和やかな雰囲気になる。多分それが兄の「才能」なんだと思う。


親に勘当され無一文からスタートしたにも関わらず会社を立ち上げ多くの人を動かす父親を俺は尊敬していた。そして何より仕事が無く生活に困っている人達を助けているように見え、俺にとって両親は弱い人達を助けるヒーローに見えた。


大好きな兄、尊敬できる両親・・・祖父が大財閥だとか関係無い。俺はこの家族と一緒にいれば幸せだと思っていた。


だがそんな日々は俺が中学に入った頃に終わる。


いつものように帰宅する途中、黒服の男女が現れ両親が死んだと告げられた。

原因は祖父らしく、とある集団が両親を誘拐して身代金を取ろうとしたがすでに勘当されている事を知り会社の金を盗み殺したそうだ。


俺はあまりのショックのあまり家に急いで戻るとすでに兄が家にいた。


「才・・・オヤジとお袋の事は聞いたか?」

「兄さん・・・嘘だよな?」


黒服達は実は誘拐犯の仲間で俺を連れ去ろうと嘘を言っていのだと思いたかった。

だが兄は悲しい顔で俺を強く抱きしめる。


「才・・・俺達どうしたらいいんだ?」


いつも笑顔の兄が今まで聞いたこともないくらい弱弱しくそして不安な感情をぶつけるように俺に言ってきた。


ああ・・・やっぱり本当だったんだ。父さんも母さんももう・・・


そんな現実に少しずつ受け入れ何をしなければならないのかと思考が動き始めた時、一人の老人が入って来た。


「初めましてと言うべきかな・・・地天ちあましゅう地天ちあまさい

「爺さんは誰だ?」


兄は俺を庇うように腕を出して警戒をするが老人は落ち着いた様子で俺達を見る。


「私は平成へいせいみこと・・・血縁上君たちの祖父という立場になるな」


平成尊・・・それは両親から一度だけ聞かされていた祖父の名前だ。


「祖父だと?・・・あんたのせいでオヤジ達が!」


祖父だと知った瞬間兄が胸ぐらを掴み殴りかかろうとするがどこから現れたのか黒服の男達が現れ兄を取り押さえた。


「手荒な事はするな・・・儂の孫だぞ」


尊が制すると黒服達はすぐに兄を解放し俺達が見える位置に待機した。


「さて、君たちの今後について話し合おうと思う」

「俺達の今後だと?ふざけるな!才は俺が面倒を見る!あんたは口出しをするな!」


怒りがまだ収まっていない兄は敵意をむき出しで尊を睨みつける。


「ふん、昔のあいつと同じような事をいうんだな・・・血は争えんというわけか」


兄を観察する尊は懐かしむように呟くもその眼は冷たかった。


「ガキが何が出来る・・・お前はまだ大学に入ったばかり、才もまだ中学生、金はどうする?生活は?今後どう生きていく?」

「大学は辞めて働く!才を大学に通わせられるくらい稼いでやる」


兄は感情を言葉にして叫ぶがそれは俺が止める。


「兄さんは大学に行ってよ!父さんの会社を継ぐんでしょ?」


兄は父の会社を継いでいくために大学で勉強している。勉強嫌いでも父の跡を継ぐために猛勉強して大学に入れた。だから大学は辞めてほしくなかった。


「はぁ・・・長男はまだガキだな、それに比べて弟の方は冷静だ。先の事をしっかりと考えているみたいだな」


尊がため息を漏らしながらそう呟く。


「お前達には二つの選択肢がある。一つ、まともな援助もないまま兄弟揃って苦しい生活を送ること。二つ、儂の息子・・・つまりお前達の伯父の養子になることだ」

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