96話 学校設立
「そろそろ学校が必要だよね」
いつものようにダンジョンの新コンテンツを作成している時、エイミィがボソリとつぶやいた。
学校・・・それは、以前から意見が出ていた街発展計画の一つである。エイミィはこの学校の設立を強く要望していたがカリキュラムとか考える時間もなく先送りになっていた。
「ねぇねぇ光輝、そろそろ学校を建てようよ」
「だから、肝心のカリキュラムがまだだし教員が不足しているから難しいって以前も言っただろ?教材はトレスアールで買っておいたからすぐに量産はできるが、肝心の教える人がいないだろ」
以前ジェコネソへ行った時俺は市場で教材となる本を一通り購入しておいた。この世界ではやはり紙というものは貴重らしく。まだ量産できる技術が少ないため本一冊でもかなり値段が張る代物だった。まあゾアにかかればコピー機とか作れそうだから量産とかできると思うが。
「ふふふ、その辺はご安心を。立派な人材を確保したのよ!」
自慢げに教員のリストをモニターで表示させ、俺に付きつけるように見せた。
数学:光輝
言語:メリアス
理科:ゾア
道徳、社会:エイミィ
図工:グラム
体育:リンド
魔法学:エドワード
フィールドワーク:カーツ、カルラ
保健医:ミーシャ
「フロアボスを勝手に使っているんじゃねえ!」
しかも俺の名前まで入っているし。
「いいじゃない、フロアボス達も街の仕事ばかりで退屈しているだろうし。私が命令すれば簡単に言うこと聞いてくれるわ」
誇らしげに言うエイミィを見て頭が痛くなってきた。出来れば彼女の願いは叶えてやりたいし俺も学校建設に関しては賛成だ。だが、だからといってフロアボスを教員に回すのはどうかと思う。
住民が増えている中フロアボス達は街作りの方で忙しい。
手の空いている者と言えば・・・
「その仕事、私にお任せしていただけないでしょうか?」
一体どこから入ってきたのか振り向くと輝く緑髪を持つ美女が立っていた。
「メリアス、入る前にはちゃんと連絡入れてくれよ」
「申し訳ございません。エイミィ様から早急に来て欲しいと言われまして」
困った顔をしたメリアスを見た後、俺は呆れた様子でエイミィを見ると俺の目を見ようとしない。こいつ・・・強行作戦に出やがったな。
「・・・はぁ、まあいいか。それでメリアス。お前に教師を任せてもいいのか?」
「はい、私ももっとコウキ様やエイミィ様のお役に立ちたいと思っています。それは他のフロアボスも同じです。コウキ様が望まれるように我々に何でも申してください」
「では、他のフロアボスにも教員を『却下だ!』・・うぅ」
流石に全員を教員にさせるのは無理だ。
「ご安心を一通りの授業は私1人でも出来ます、言語、数学、自然学に魔法学・・・これらは問題なく教えられます。家庭科も生産部門から何人か用意しますから問題ありません」
「さすがメリアス!では社会、歴史と道徳は私が担当するわ」
エイミィが便乗して話がどんどん進んでいる。というか、メリアスって本当になんでもこなせるよな。最強のフロアボスという設定にはしていたが万能すぎるだろ。
「だが、メリアス。生産部門はどうする?あっちも忙しいはずじゃないのか?」
生産部門は主に衣類や料理を中心に街の中核となっている部門だ。衣食住の内、衣と食を担っている・・・ある意味最も忙しい所のはず。
「ご安心ください。衣類はジェシカ、食器はミヤビ、料理はランカに管理を任せられますから私が少しの間離れていても問題はありません」
ワォ、さすがメリアス。教
員の問題も解決したという風にエイミィは俺にしか見えないようにキラキラとした目で俺を見ている。
「はぁ・・・分かったよ。教材もあるしダンジョンの魔力もある、教える教員もいるからもう問題は無いだろう。学校は住宅エリアの近くに建てるから・・・グラムに連絡入れておくか」
・・・・・・・・・・・・・・・・
居住エリア
居住エリアへ移動すると、『安全第一』と書かれたヘルメットをかぶったグラムが待っていた。
「コウキ様、ご命令どおりこの辺り一帯は住民の立ち入りを禁止にしましたが。何かを建てられるのですか?」
「ああ、エイミィの要望で住民のために学校をな」
「おお、それは素晴らしいことです・・・さすがエイミィ様です」
でしょでしょ?と言いたそうな顔をしているが相変わらず女神モードで冷静な顔をしている。
「それじゃあ、建てるよ」
俺はいくつものモニターを出し、操作を開始した。学校の見た目、内部の構造、材料など・・・大量のデータがモニターに映し出される。
すると俺が設定したエリアから光の粒子があふれ出し、みるみる設計した学校の形へとかたどっていく。そして、3分も経たない内に学校が完成した。ウル○ラマンが頑張ってもこの短時間でこれは出来ないだろう。
見た目は寺子屋のような木造建築。畳の床に縁側、和風丸出しの学校だが悪くは無い。
シンプルな作りだが素材は奮発したおかげでダンジョンに溜まっている魔力も意外と消費した。カラクリ屋敷みたいなギミックも考えたが魔力と必要性とか考慮した結果ボツにした。
「さすが、光輝ね・・・中はどうなっているのかしら?」
エイミィはいてもたっていられず、学校の敷地へ入っていく。
「素晴らしい、さすがコウキ様です・・・我々もこれくらいの建物を建てたいものです」
「木造の学校ですか・・・良い材料を使っていますわね」
グラムとメリアスもそれぞれ感想を言いながら学校を見ていた。
「光輝、早く来なさい。教室などを案内するのです」
早く早く♪と言いたそうにテンションマックスを必死に抑えているエイミィが俺を手招きしている。
学校は至ってシンプル。部屋は三つ用意してあり、職員室、保健室、教室でそれ以外は無い。
「ふふふ、ここで私が子供達に教えるのですね。子供達に囲まれて楽しい学校生活・・・青春」
なんか、既に彼女の頭の中で夕日に向かって走る姿が描かれているようだ・・・夕日なんてこのダンジョンには無いのに。
「建物も丈夫に出来ているな・・・後は生徒の募集だな・・・」
「それは儂にお任せください。街の掲示板に大きく宣伝しておきます」
「分かった、対象年齢はこちらで決めるから内容が決まったらお前に連絡する」
「御意・・・それでは儂は仕事に戻ります。エイミィ様、メリアスさん、子供達をよろしくお願いします」
そう言い残し、グラムは仕事に戻る。ダンジョンのこともあるのに街の仕事もやってくれてこっちとしては助かる。今度なにかご褒美を用意しておかないと。
こうしてダンジョンの中に学校が誕生したのだった。
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