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第49話 素麺事変


〝ズルズルズル~〟


「・・・」


〝ズルズル~ズルズル〟


「・・・」


「おいどうしたアレクシア? 早く食わないと伸びちゃうぞ。素麺は伸びる前に食っちゃわないと、美味さが半減するからな」


何をコイツは苦悩した顔をしてるんだろう?

腹でも痛いのかな? 最近暑くなって来たから、冷たい物を飲み食いする頻度が増えたもんな。と言うかアイス食い過ぎだろ。それにジュースも飲み過ぎだよ。


「・・・もう嫌じゃ……」


「何だって? どうしたお前? 何が嫌なんだ?」


やっぱ腹が痛いのかな?


「だからコレじゃ!」


意味が分からん。コレってもしかして素麺の事か。多分そうなんだろうな。


「お前な、お箸で指すな。行儀が悪いぞ。それ指し箸って言ってだな、マナー違反なんだぞ」


この辺りの事は、祖父母から昔言われたなぁ。


「そんなもん分かっとるわい。わらわが言いたいのは、わらわが言いたいのは……」


なんだよ、言いたい事があるならさっさと言えよな、素麺が伸びちゃうだろ。

無駄に言葉を溜めやがって。なんなんだよ?


「もう素麺は嫌じゃ」


「何で?」


「もう! 毎日毎日毎日毎日。素麺素麺素麺素麺。お前は夏のお昼ご飯は、素麺を食べねば死ぬ呪いにでも罹っておるのか? それともアレか? お前は素麺会社の回し者か?」


「お前は何を言ってんの? この連日の暑さで脳がイッちゃったのか?」


最近暑いもんな。そうだな、暑いってより灼熱だし、極悪なる暑き日々だもん。

コイツとうとう狂ったんだな。そうかそうか。


「わらわはまともじゃ。なぁ、お前は何故、わらわを生温い目で見て来るんじゃ? それよりもじゃ、もうお昼ご飯に素麺は嫌じゃ。わらわ素麺は嫌なんじゃ。頼むから素麺以外のお昼ご飯にしてくれ~」


「はぁ? 素麺美味いだろ? お前は本当に我が儘だなぁ。仕方ない、明日は冷や麦にするよ」


素麺美味しいのに。

まぁ良いや、明日は冷や麦にしてやるか。


「だ~か~ら~! 違ーう!」


「何だよ、冷や麦も嫌なのか? ならざるうどんにしたら良いんだろ?」


「もう! だからぁ~」


さっきからコイツは何でゴネてるんだ? あーそうか、分かったぞ。


「ざるそばだな? 冷たい蕎麦が良いんだろ? そうだろ? それならそうと、ちゃんと言えば良いのに。分かったよ、明日は冷たい蕎麦にするよ」


「違~う! そう言う問題じゃ無いんじゃって。あーもう! 毎日毎日毎日毎日、素麺素麺素麺素麺、たまに冷や麦。それかざるそばかざるうどん。そしてまた素麺素麺素麺素麺素麺。で、また素麺。もう素麺は嫌なんじゃ。麺類は勘弁してくれ~。お前今絶対、冷やし中華ならエエのか? とか思っておるじゃろ? わらわ分かっておるからな」


「・・・」


なんだと……。コイツ……。まさかサイコメトラー、いや、読心術にでも目覚めたのか?

まさか……、まさかコイツ……。超能力に目覚めたのか?


何故コイツは俺が、なら明日は冷やし中華にしようと思ったって分かったんだ? 超能力か? そうなのか?


「なんとなーくお前が今考えておる事が分かるが、あえて言うまい。なぁ、頼むから、頼むからもう素麺は勘弁してくれ。こう毎日じゃと流石に飽きるわい」


「いや、でも揖保◯糸だぞコレ。普通の赤帯のでも美味いのに、しかもこれはその赤帯より等級も上のやつだし。お高い揖保◯糸だぞ。美味いだろ? それにまだ一月(ひとつき)も経って無いじゃないか。飽きるか?」


「飽きるわ! 頼むからもう素麺は勘弁してくれ、何でもするから、じゃからもう……」


「お前今、何でもするって言ったな? なら明日の昼飯は素麺にするぞ」


「お前ふざけるな。わらわ本気で言うておるのに茶化すな」


冗談の分からん奴だ。だがコイツの本気は分かった。


「素麺美味しいのに。俺は毎日でも良いけど」


「わらわが嫌なんじゃ。頼むから素麺以外のお昼ご飯にしてくれ……」


コイツはなに半泣きになってるんだ? 何か俺が意地悪で毎日素麺を食わせてるみたいじゃないか。


「なら明日の昼飯はスイカにするぞ」

「それでもエエ。わらわ素麺以外ならエエから。お昼ご飯、スイカの方がよっぽどエエ」


コイツ食い気味に言葉を被せて……。

そんなに嫌なのか? ただでさえ美味しい揖保◯糸だぞ。それなのに今食ってるのは、等級も上から数えた方が早い、とってもお高いやつなのに。


じいちゃんばあちゃんは大喜びだったんだぞ。

多分今も食ってるだろうな。二人共素麺大好きだし。


箱入り十八キロを送ったが、下手しなくてもひと夏持たないのに。何でコイツは飽きたんだろう?

薬味も刻みネギに、大葉にミョウガ、わさびや生姜に、梅肉におろしニンニクもあるんだぞ。しかもツユも俺の手作りのと、市販のお高い物もあるのに。なんならゴマだれのツユも用意して、飽きが来ない様に工夫してるのにコイツは……。本当ワガママだなぁ。


毎日毎日素麺ばっかりとコイツは言うが、たまーに外に食いに行ったり、素麺以外の違う物を出したりもしてたぞ。

昼に素麺を良く出す様になって、まだ一ヶ月も経って無いのに。それなのに毎日毎日ってコイツは口が贅沢になりすぎだよ。


「まぁ~口が贅沢になりよってからに。ちょっとエエもん食べさせたったらこれやで。世話したってんのに堪らんわ」


「お前はあのアニメ映画に出て来る親戚のおばさんか? わらわそんなに贅沢な事を言っておるか? なぁ、頼むから毎日毎日、お昼ご飯に素麺は勘弁してくれ~。頼むから……」


半泣きになってそんな言い方をするな。これじゃあ俺がお前を虐待してるみたいに思われるだろ。

本当コイツは失礼な奴だよ。ちゃんと毎日三食食わせて、洗濯やコイツの部屋の掃除までしてるのに。

俺はちゃんとお前のお世話をしてやってるんだぞ、しかも毎月お小遣いまで支給して、欲しい物も何やかんやで買ってあげてるのにコレか?


世間様が聞いたら誤解を招く様な事を言うな。

コイツだけは……。今の暮らしに不満があるのなら、池の横にある防空壕で生活しろ。そしてそこでサバイバルでもしたら良いんだ。


「お前そんなに素麺が嫌ならもうタニシでも食っとけよ」


「素麺じゃ無かったらそれでもエエ」


マジかコイツ? いやまぁタニシも食ったら美味いよ。でもそれは料亭とか、小料理屋で食うから美味いんであって、田んぼから捕ってきたのを自分で調理して食うのは流石にどうなん?


うーん……。俺は嫌だなぁ。うん、無理だな。

と言うか料亭に行くか、最低でも買って来たやつじゃないと嫌だな。


「なぁアレクシア、お前素麺以外なら何でも良いって言ってるけど、なんか食いたい物あんの? まさかだけど、素麺以外の、しかも麺類じゃ無い昼飯を作ったとして、お前飯に文句つけたりしないよな? まさかだよな。で? 何か食いたい物あんの?」


「・・・」


コイツ……。具体的にコレ食いたいって物が無いんじゃないか?

で、俺が作った昼飯に文句つけると。

明日の昼飯時の未来予想図だが、多分そうなるだろうな。うん、未来予知ではなく、只の事実の事前説明だねこれ。


間違いなくコイツはなーんも考えてはいないだろうけど、それでも一応はこのワガママ似非ロリの希望を聞いておかなければならない。

そうじゃないと、絶対このちんちくりんは飯に文句を言う。それを和らげる為にも一応は聞いてやるか。

しかし何故に俺は、コイツにここまで気を遣わなければならないのだろうか? 多分コイツのワガママに慣れてしまったのだろう。やな慣れだなぁ。


「で? お前明日の昼飯は何かリクエストがあんの?」


「そうじゃな……。ロールキャベツ?」


はぁ? ロールキャベツだと?


「お前ふざけんなよ。何で昼飯にそんなややこしい物を作らなきゃいけないんだ? 作るの凄い手間なんだぞ、分かってんの?」


ふざけやがってこのちんちくりんめが。

簡単に言ってくれるよコイツは。ロールキャベツって夕飯に作るのでさえ面倒なのに、それなのに昼飯にロールキャベツだと? しかも話の流れから俺の手作りを所望してるはず。うん、面倒だね作るのは。


「はぁ~? お前がわらわに食べたい物を聞いてくるから言ったんじゃろうが。それなのに何でそんな言い方をされねばならぬ?」


「だから作るのが手間暇かかるんだよロールキャベツは。昼飯に作りたくなんか無いよ。夕飯に作ってやるから別の物にしろ」


ここで完全にロールキャベツを作るのを拒否してはいけない。何故なら更にややこしくなるし、このワガママ女が絶対にごねるから。

なので妥協案として夕飯に作る。面倒臭さ爆発だが、俺から食いたい物を聞いた手前仕方がない。作るのすんごく面倒だから嫌だけどな。


「嫌じゃ、わらわ明日の昼御飯はロールキャベツがエエ」


「だから夕飯に作ってやるって言ってるだろ? と言うかお前、昼飯にそんな熱々の物食えるの? お前思いつきで言ってるだろ?」


それか意地になってるかな? どうせ作っても、暑いのにこんな熱い物を言ったのは失敗だったとか抜かしそうだ。


「クーラー効いておるから問題ない」


俺が問題あるんだよ。


「昼飯に作るのは嫌。それなら外に食いに行く。明日の昼飯は何時も行ってる洋食屋に行くぞ。近くにある商店街の洋食屋な」


「暑いから外に食べに行くのは嫌じゃ」


「うるさい引きニート。夏なんだから暑いのは当たり前だ、とにかく俺は作らないからな。ロールキャベツが食いたかったら外に食いに行く。それが嫌なら明日の昼飯は素麺だ」


何が暑いから外に出たく無いだよ? 俺は買い物や何やかんやで外に出てるんだぞ。

お前が食ってる物とか、細々(こまごま)した日用品だとかを俺が買いに行ってるから、だからこそお前は優雅な引きニート生活を満喫出来てるんだろうが。それなのにこの穀潰しめは……。


「引きニート言うな。わらわたまには、そう、たま~にではあるが外に出ておるわ。じゃが暑いから、ちと最近は控えておるだけじゃ。と言うかこの暑さは何なんじゃ? 日本のこの暑さはおかしいわ。しかもジメジメと蒸し暑いし。どうなっておるんじゃこの国は?」


「知らん。日本の夏の暑さとムシムシとした気候は、俺のせいじゃ無い。それよりロールキャベツが食いたかったら外に食いに行くぞ、俺は昼飯に作らんからな、夕飯になら作ってやっても良いが、それが嫌なら諦めろ」


ロールキャベツだなんて作るのが面倒臭い物を、コイツに食わせる為に昼飯にわざわざ料理するなぞ嫌に決まってる。とは言え夕飯になら作ってやっても良い。もしくは外に食いに行くのが嫌なら知らん。


「はぁ~? お前が何を食べたいかと聞くから言ったんじゃぞ。それなのに何たる言い草じゃ? 外に食べに行くのは嫌じゃぞ。只でさえ暑いのに、昼間に外に出るなぞわらわ死んでしまうわ」


出たよ出たよ、引きニートの言い訳が。

これが服とかなら、試着しないと嫌なタイプの奴だから、それなら外に出なきゃならない物なら仕方なくとは言え外出するくせ。どうせ俺が作れば良いだけだからとか、そう思ってるんだろうな。


ふざけるなよ、俺はお前の専属料理人じゃ無いんだぞ。それかまさかコイツ、俺の事を家政婦さんとでも思っての?


どうしてやろうか……。ロールキャベツの中身を肉ではなく、素麺にして出してやろうか? 素麺寿司ならぬ素麺ロールキャベツ。おもしろそうだが、食べ物で遊んじゃダメだよな。ヤメておこう。


「日傘を差せば良いだろ。それに何時間も歩く訳じゃ無いんだし大丈夫だ。たった二、三十分歩くだけだし死にはしない」


日によっては極力出歩くなとテレビでは言ってるけど、ちゃんと対策してたら二、三十分歩く位は大丈夫。

俺だってこのクソ暑い昼間に極力外に出たくは無いけど、作るのは嫌だ。面倒だね。


「ん、歩く? 自転車で行くのではないのか?」


「商店街にあるあの洋食屋だぞ、ちよっと飲みたい。だから歩きで行くんだよ」


飲むのなら自転車はダメだ。行きはチャリで、帰りは押して帰るなら良いがな。


「アホかぁ、歩きでじゃと? わらわ溶けてしまうわい」


「何が溶けるだ? お前は吸血鬼か?」


吸血鬼なら、溶けるってより灰になるの方が正しいかな。とは言えあっちの吸血鬼は灰にはならないけど。


「吸血鬼とわらわを一緒にするな。作れよ。わらわ行かぬからな」


「なら明日の昼飯は素麺。それか冷や麦な」


ワガママばっか言いやがって。お前は何様だよ? あーそうか、魔王様だったな一応。


「嫌じゃ嫌じゃ、わらわもう素麺は嫌じゃ。嫌なんじゃ」


半泣きになって(わめ)くなよ暑苦しい。

大体だな、ロールキャベツを食ったら食ったで、この暑いのにちと重いだの、あっさりした物にすれば良かっただのと抜かすんだろ。

多分コイツは言うね。それなら素麺で良いじゃないか。素麺美味しいんだし。


「頼むからぁ、頼むから素麺はヤメてくれ~」


「なら冷や麦にしたら良いんだろ?」


「だからぁ~」


俺が言いたいよ、だからぁってな。本当コイツだけは。俺がお前を虐待してるみたいなリアクションしやがって。

コイツと居ると子供を持つ親の気持ちが良~く分かるよ。子育てって大変なんだなぁって。


「お前はわらわのささやかな願いすら聞き入れてくれぬのか? あの目眩(めくるめ)くの願いは叶えておったくせ」


「お前まさかそれって静の事を言ってんのか? おいコラちんちくりん、お前な、目眩く言うな。それと静の場合は、久々に会ったってのもあるし、静はお前と違って厚かましく無いからな。俺にお願いする時も気を遣ってるし、金が掛かる事は基本的に静は更に気を遣って言って来る。お前みたいに無茶な要求とかは、基本的にはしないぞ。お前みたいな図々しい女と違うんだよ。何でお前は小学生より厚かましく、ワガママで、気を遣えないんだ? (わきま)えろ、このポンコツが!」


お前に比べれば静はまだ可愛げがあるわ。いや、コイツと比べられたら静に悪いな。うん、間違いない。


「はぁ~? お前の話を聞いたが、お前何やかんやで願いを聞いてやってたではないか。やれアインモールに連れて行けと言われて連れて行ってやったり、やれ魚釣り行こうと言われて一緒に行ってやったり、色々と願いを聞いてやってたではないか。なのにわらわがロールキャベツを食べたいから作ってくれと言っても聞かぬ。しかもお前が何を食べたいか聞いて来たクセそれか? なぁ?」


「お前なぁ……。小学生の、しかもあいつが生まれた時から知ってる奴の()()()を聞くのと、一応は大人のお前のクソ面倒臭いワガママと一緒にするな。お前はガキか?」


大体だな、静は何やかんや言って、結構俺に気を遣ってるからな。それに比べてこのちんちくりんは、俺に気なぞ一切遣わない。


静のお願いはまだ分かる。子供だからな。

だがお前の歳は幾つだ? 十歳にも満たないガキなのか? 良い歳したお前が言うと、聞き分けの無いガキよりタチが悪い。何でコイツは小学生より聞き分けが悪く、ワガママなんだろう?


「誰がガキじゃ!」


お前だよお前。今のお前のその姿を見てガキだと思ったとしても、お前以外の誰も否定しないよ。


「さっきからうるさいなぁ……。そんな事よりさっさと素麺食ってしまえ。伸びちゃうだろ」


「もう伸びておるわい。もう、日に日にわらわの扱いが悪くなって行く。お前なんぞ目眩くと快楽の世界とやらに浸っておれ……」


このクソ似非ロリ……。聞こえてるんだよ。

ボソッと言えば聞こえないとでも思ってるのか?

マジでどうしてやろうかコイツ……。


クソ! このポンコツめが、その発言はシャレにならないんだよ。違う世界線の話とは言え、この世界では決してあり得ない事とは言え、俺の中では許されざる事なんだよお前のその発言は。


お仕置き決定だな。

良し分かった。ロールキャベツを作ってやろうじゃないか。但し中身が挽き肉である必要は無い訳だからな。


バカめ! 一口食ってから絶望するが良い。明日の昼飯が楽しみだなアレクシア君。

お前の自業自得だな。目眩(めくるめ)く言いやがって、お前も目眩くって言いたいだけか? 何が目眩く快楽だよ? この世界ではそんな事には決してならないけどな。


~~~


「良し良し、ロールキャベツ、わらわの言い付け通り作ったか。うむご苦労。しかしコンソメだけと言うのは頂けぬな。トマトのも食べたかったが、まぁ良いじゃろう」


「・・・」


このクソロリ……。何が言い付け通りだ? トマトのが無いだと? マジで舐めてんなコイツ。俺はお前の家来じゃ無いんだぞポンコツが。

だが良いだろう。今日は、今この瞬間は許してやる。その方がより絶望が深くなるからな。


「いただきまーす。ん? 何か食感が……」


口に物を入れて喋るな、お行儀が悪い奴だ。


「アレ? 何か味も少し……」


だろうな。味が違うのは当然だ、何故なら……。


「あー! コレ、中身はお揚げさんか? しかもお揚げさんの中に豆腐が入っておるではないか」


そうだよ、油揚げを入れてるんだよ。そして油揚げの中に入ってるのは、豆腐だけじゃ無い。厚揚げ入りのもある。

だからこそコンソメ味のしか作ってないんだ。何故なら意外とコンソメと豆腐系は合うが、トマト味だといまいち合わないから。

食べ物で遊んじゃダメだからな。だけどコンソメと豆腐系は意外と合うし、美味い。


「お前……お前……」


「どうしたアレクシア? 美味いだろロールキャベツ。お前食いたがってたもんな」


「違~う! 美味しいけど、美味しいんじゃけど、コレじゃなーい」


そうだな、お前の想い描いていたロールキャベツでは無いかもな。だけど完全に違うとも言い難いモノでもある。


「わらわが食べたかったロールキャベツは、中に挽き肉が入っておる物であって、お揚げさんと豆腐が具のロールキャベツでは無いんじゃ~」


だが料理とは時に革命が起き、そして発展して行く物でもある。

そして料理とは、時に失敗から生まれる事もあるんだ。例えばタルトタタンがそうだ。

あれもタタン姉妹がある時忙しさのあまり間違って、それで生まれたモノ。


今日作ったロールキャベツモドキも、何時か正式なロールキャベツになる日も来るさ。但し亜種としてって但し書きが付くだろうがな。


「悠莉、お前ここまでやるなら普通にちゃんと作れよ~」


「そうだな。なら次は、中の具は素麺にしてみるかな」


「もう!」


「うん。結構美味いな」


料理は工夫次第で美味しくなるもんだな。

さぁ、温かい内に食ってしまおう。ちんちくりんがゴネてるが、聞こえないフリ聞こえないフリ。


「うぅ~。結構美味しいのが余計腹立つわ。ロールキャベツじゃ無いけど美味しい……」


終わり良ければそれで良し。そして美味しかったらそれで良しっと。


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