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第45話 チャリで行け


「うわーやられたー」


「・・・」


「くっ、こ、ここまでなのかぁーーー!」


「・・・」


「ガキンガキンガキン。キンキン。俺は、俺は負けない、決して負けない! 何故なら俺の背には守るべき者が居るからだー!」


「・・・」


「貴様~! 何故胸ばかり攻撃する? 我の胸を晒すつもりか!」


「・・・」


「あっ、いや……。ち、違うんだ!」


「・・・」


コイツうるせー。何なのコイツ。


「このスケベが!」


いつまで続けるつもりだコイツ?


「違う、違うんだ」


違わないだろ? 胸を晒す様な攻撃をしてるんだろ?


「この……。噂に(たが)わぬいやらしい男だな貴様。あれ? これ誤字では無いのか? 曝すの方があってないか? どっちが正しいんじゃ?」


「お前もうどうでも良いよ。なぁ、お前いつまで続けるつもり? いい加減に止めろ」


「はぁ? 何を止めると? わらわ漫画を読んでおるだけじゃが?」


このクソガキ。何が漫画を読んでるだけだよ?


「セリフをいちいち声に出して漫画を読む必要あるのか? しかも擬音までいちいち言う必要ってあんの?」


「漫画を読むなとでも言うのか? わらわ今までお前に漫画を読むななど言われた記憶が無いんじゃけど? ご飯を食べながら読むなとは言われた事はあるが、今はご飯中では無いし問題あるか?」


問題しかないよ。何で漫画を読むのにわざわざ声を出して読む必要がある? 今までお前はそんな事、一度もやった事無いだろ。

くっそー、嫌な嫌がらせの方法を考えやがったなぁ。妙な悪知恵だけは上手い事考える奴だよ。


「お前うるさい。声が大き過ぎ。と言うか何時までも怒るなよ」


本当にコイツだけは……。もうヤダ。


「はぁ~? 漫画を読むのにセリフなどを声に出してはならぬ法律なぞ無いはずじゃが? それと怒るなじゃと? 怒るに決まっておろう」


そうだな、漫画を読むのにセリフを声を出して読んではいけません何て法律は無いな。

だけど騒音に関しては、迷惑防止条例ってのはあるけどな。


大体だぞ、お前に怒る権利があるのか?


「おいアレクシア。鯛焼き食べても良いかって、俺は三回確認したよな? それなのに何で俺はお前に怒りを向けられなきゃならない? お前も食べても良いって言ったよな?」


「はぁ~~~? わらわ食べても良いとは一言も言っておらんがぁ? うんとは言ったが、食べて()いとは言っておらぬし」


こんのポンコツ! 俺は三回も事細かく確認したぞ。それでお前はうんと言ってたし、それ以上どう確認と了解を取れば良いんだ?


「大体じゃな、わらわがゲームしておる時に言って来るお前が悪い」


何が俺が悪いだ? ゲームしてたのはお前の勝手だし、それで(から)返事してたのはお前の不注意じゃないか。それなのに俺が悪いだと? お前の自業自得だよ。


「俺は念押しする様に事細かく、そして三回もお前に聞いて確認したんだけど? お前が適当に空返事しただけだろ。自業自得だ」


「はぁ~? わらわがゲームしておる時に声を掛けるなど悪意があり過ぎじゃぞ。お前わざとじゃろ? わらわがゲームに集中しておる時を狙ってやったじゃろ? 人はそれを確信犯と言うのじゃぞ」


「知らんわ」


お前の不注意を人のせいにするな。

大体だな、本当に悪意があるなら何にも言わず、声かけもしないし、確認しないで勝手に食ってるわい。


しかしコイツも面倒臭い奴だな、面倒臭さが日に日に増してってるぞ。

食い物の恨みは恐ろしいか。どうしよう、どうしたら機嫌直すんだろ。


「わらわが食べようと楽しみにしておったのに。それなのにお前ときたら……。えーい、漫画を読むのを再開してやる。どうした? 我の攻撃を避けぬのか? 避けたら、避けたら後ろに居る仲間に……。俺は決して退かない! うぉー! ズギューン!!!」


このポンコツ女め、また声を出しながら読み始めやがったぞ。と言うかお前は何の漫画を読んでるんだ? スマホで見てるみたいだけど無料漫画か? 何かベッタベタな内容の漫画っぽいけど、擬音も多いな。


「ドカンバコーン」


き、気になる。コイツは一体どんな漫画を読んでるんだろう? だけど聞いたら負けな気がする。


「ガガガガガ。ガキンガキンガキン。キンキン。ドカンバコーン」


本当に擬音が多いなぁ。聞いてる限りだけど、内容はベタの一言なんだけども、擬音が気になる。何て題名の漫画なんだろう?


「さて、次は幼馴染と言うフラグでも読もうかの」


コイツがさっき読んでた漫画の題名聞きてー。

と言うかさっきの漫画って、中途半端な所で終わってないか? 続きはどうなってるんだ、続きは?


「あー! 美瑠久(みるく)ご、ゴメン! キャー、愛流(あいる)さんのエッチ!」


いきなりそんな場面からなの? 確かそう言うのってラッキースケベって言うんだっけ?


「さ、さ、さサイテー、愛流さんがまさかそんな人だなんて……。せ、責任取って下さい! わた、私をお、お嫁さんにして下さい! えー! そんないきなり! 愛流さんが私の……。見たからです。責任取って我が家に婿入りして来て下さい。え~……」


相変わらず訳の分からん話だな。これが大人気って、俺にはいまいち理解できない。

しかもアニメ化までしてるんだよな。まぁそれでコイツも知って、アニメから入り、漫画を読み始めたんだけど。


それよりもだ。これ、このままコイツが漫画を読み続けると、有耶無耶になって何とか誤魔化せそうな気もする。だけど問題は……。


「愛流のバカ! 私と言うものがありながらまた、また他の女の子とそんな事を……。あんたなんか女の子のおっぱいに(うず)もれて死んじゃえ~。えっ? それは良いかも……。愛流のバカ! スケベ! 淫獣!」


コイツが飽きるまで延々、このアホな朗読と言う名の読み聞かせを、延々と聞き続けなければならないって点だな。

しかしコイツ、その漫画好きだよな。

幼馴染と言うフラグねえ。面白いかそれ? だけどさっきの擬音がやけに多い漫画よりはマシなのかな? でもなぁ、さっきの漫画は何て言う漫画なんだろ? ちょっとだけ気になる。


「愛流君、私の私の……、見た件を放置して初菜(うぶな)ちゃんとイチャイチャしないで下さい! いや、違う、違うんだ美瑠久! 俺は……。何が違うか説明して下さい!」


うるせーなぁ……。ハーレム系主人公って、端から見てたら只の〝ピーー〟の〝ピ~~〟で、〝ピ~ーー〟でしか無いんだよね。 正に淫獣、性の獣。うん、俺は一人居てくれたら十分だ、ハーレムは要らない。だって面倒臭いもん。


「おやおや愛流。初菜が半泣きになって出て行ったから、何事かと思って来てみたら。美瑠久とお楽しみの最中だったのかい? こりゃ失礼したね。違うんだ! 違うんだアイリーン! はぁ……。ちょっと喉乾いたな。ジュースジュース」


この漫画、何人ヒロインらしき奴が出て来るんだよ? と言うかさっきから主人公、違うんだしか言ってなく無いか?

いかん。心の中とは言え、つい突っ込んでしまった。今はその漫画の内容とかどうでも良い。とにかく今は声優気取りのちんちくりんを何とかしないと。


「おいアレクシア、お前いい加減にしろ。漫画を声を出して読むなよ。みみっちい嫌がらせは止めろ」


「はぁ~? わらわの鯛焼きを勝手に食べておいてえらい言い草じゃのう?」


「だから三回も確認しただろ? それとあの鯛焼きはお前の物じゃ無い。百歩譲って共有財産だ、勘違いするな。お前は難聴系主人公か? それとも鈍感系主人公かよ?」


本当に面倒臭いな、この食い意地張ってる系主人公めが。

このままじゃ、どうせ堂々巡りの言い合いになるな。かと言って俺もこれ以上は謝るつもりは無いし、認めたくも無いしどうしようか?


「なーにが共有財産じゃ? アレはわらわのじゃぞ、ふざけるで無い、もう一度買って来いよ」


「はぁ? お前こそふざけるな。嫌だよ、アレ三十分並んで買ったんだぞ、今から行ったら更に待ちがあるだろうし、一時間以上並ばなきゃならないんだぞ。食いたいならお前が行け、金なら出してやるから」


何が悲しくって一時間以上並ばなきゃならないんだよ。今日は並びの行列がまだ少なかったから並んで買ったのに、それなのに買いに行く訳無いだろ。本当にふざけた奴だなコイツ。


「わらわとてそんなに並びたくは無いわ。大体あそこまでどうやって行けと言うんじゃ? お前が食べたんじゃし、それにお前は車で行けばエエんじゃしお前が行け」


「行く訳無いだろ、お前なぁそんなに食いたかったら自分で行け」


「だからそもそもわらわは、車の運転出来ぬし行けぬわ」


「チャリで行け」


何を甘えた事をコイツは抜かしてるんだよ。

金なら出してやるって言ってるんだから、チャリで行けば良いだけの話じゃないか。


「アホか! あそこまで車でも三十分以上掛かるんじゃぞ、自転車でなぞ行けるか!」


「甘えるな。多分チャリなら、ゆっくり行ったら二時間位で行ける。急げば一時間位で行けるんじゃないか? 多分な。うん、よってチャリで行け」


「そう言われてわらわが、はいとでも言うと思っておるのか? 行く訳が無かろう、ふざけるでないわ、お前が買いに行け」


「甘えるな、チャリで行けチャリで。そしてハイと言え、むしろ行かせて下さいと言え。チャリがあったらドコにでも行ける、行けないと言うのは甘えだ甘え」


チャリがあるのに行けないなどと、何をコイツは抜かしてるんだよ。チャリがあって行けないと言うのは甘え以外の何物でも無いぞ。お前はバカ貴族のお嬢様かよ。


「お前の自転車に対する熱い信頼はなんなのじゃ? 行くか、行く訳が無い。わらわの鯛焼きを食べおってからに……。あそこのは尻尾まであんこが入ってて無茶苦茶美味しいのに、それなのに食べおって、わらわの鯛焼きを返せ!」


うるさいなぁ……。俺はどっちかと言うと尻尾まであんこが入ってるのより、尻尾には生地だけの鯛焼きが好きなんだ。

だってあんこで甘くなった口に、生地の優しい甘さが心地好いじゃないか。口直し的にも尻尾にはあんこが入っていない方が良い。


それにあんこが入って無い方が尻尾のカリカリ感をより感じられるし。

でもコレは言わない、だって言ったら余計コイツを怒らせる事になる。うん、間違い無く怒るだろうな、キレ散らすかも知れない。


それに言ったら、それなら何でわらわの鯛焼きを食べたと言うに決まってる。何で食べた? そんなの食いたかったからに決まってるだろ、たまには俺もそんな日だってある。ん?


「あっコラ、お前くっついて来るな、止めろ離れろ放せ。お前みたいなちんちくりんにくっつかれても嬉しくない。うっとうしいんだよ、離れろ」


「ウワー! わらわの鯛焼きを返せー! 吐け、吐くのじゃ! わらわの、わらわの鯛焼きを返せー!」


「お前無茶苦茶言うな。コラ、身体を揺するな。は・な・れ・ろ」


お前は本当に子供か? コイツの駄々っ子モードは本当に面倒臭さ爆発だよ。

ちょっ。半泣きになってまで俺の身体を揺さぶるな。マジで面倒臭いなコイツ。


「返せ! 返せ! 返せ~! わらわの鯛焼き返せ~。後で食べようと思っておったのに~。楽しみにしておったのに~」


「だからさっきも言ったし、言い続けてるけど、お前に三回も食って良いか確認しただろ? お前が了解したんじゃないか、何回も同じ事を言わせるな。ちょっ、お前いい加減に離れろって。揺さぶるなちんちくりん」


もう、まただよ、また同じ事の繰り返しだよ。

大体だな、俺の身体を揺さぶったからって鯛焼きが元に戻る訳無いだろ。今のコイツに言っても分からないみたいだけど、何で分からないかなぁ?


「返せ返せ。お前元のわらわの姿に戻った時はくっつかれて喜んでおったじゃろ? 何で今の姿じゃと嫌がる? ほぼ変わらんじゃろうが!」


「全く違うだろうが! お前本当に無茶苦茶だな。何がほぼ変わらんだ? お前今の姿が元々の姿とほぼ一緒だとでも思ってんの?」


そんな事あるか。背も違えば体型も違うだろ。

それに胸部装甲なんて全くもって違う。

今がペラッペラの紙装甲なら、元々の姿は重装甲、いや、超々重装甲だよ。


「うるさいうるさいうるさーい! お前そんな事を言うならもうあててやらぬぞ。エエからごちゃごちゃ言わんと鯛焼き買って来いよ」


「アホかぁ! 今のそんな貧相モン押しあてられても迷惑なだけだ、(わきま)えろちんちくりん」


俺はおっぱいは好きだが、ちっぱいは別に好きではない。うん、おっぱいは好きだ。

だって男だもん、むしろ男でおっぱいが嫌いな奴居るか?


「お前わらわが元の姿であった時は、大喜びしておったくせ。ちょーっと変わったらそれか? それと貧相言うな、慎ましくなったと言え」


「おい、俺は大喜びはしていなかったぞ。そりゃ多少は思っても、大喜びはしていなかった。言うなれば悪い気はしなかったってだけだ。慎ましい? ちょっと? ヘッ……。ハッ」


物は言い様だな、鼻で笑っちゃうわ。


「コイツ……。お前鼻で笑ったな? しかも二回も鼻で笑いおっなた。お前はアレか? 女を胸でしか判断しておらぬのか? そう言えばお前は仲間のダークエルフの胸をよく見ておったな。 あのダークエルフも中々大きな胸じゃったな」


「お前失礼な事を言うなよ。毎回思うがお前は俺の事を何だと思ってる? お前失礼な事を抜かすな」


「ハッ! お前の仲間のあの聖女。あの聖女も服で隠れて分かりにくいが、アヤツも胸が大きかったのぅ。着痩せするタイプじゃったが、あの聖女もわらわ程では無いが、胸が大きかったのう。お前あの聖女の胸もチラチラ見ておったじゃろ?」


「お前なにがチラチラ見てただ? なぁ、お前は俺達に四六時中張り付いて見てたのか? 違うだろ。ましてや常に俺達と一緒に居てた訳でも無いし、たまーに俺に挑みに来てただけだろ。それなのにまるで俺がアイツの胸ばかり見てたみたいに言うのは止めろ」


本当にコイツは何て事を言うんだよ。

そりゃ確かに奴は隠れ巨乳だったぞ。だけどだからと言って俺が常に視姦してたみたいに言いやがって。

せめて窃視してたと言え。いや、それもそれで違うな。うん、窃視も視姦も大問題だよ。


「どうだかのぅ。お前の仲間の白エルフ……。こっちで言うならエルフの胸は見ておらんかったじゃろ? アヤツは種族的にも慎まし過ぎる胸じゃったからな。どうせダークエルフの胸とか聖女の胸をいやらしく見ておったのじゃろ? わらわの胸をいやらしく見ておった様に、いやらしく仲間の胸を見ておったんじゃろうが」


「おい、お前なぁ……。俺の仲間が女ばっかだったみたいな事を言うのは止めろ。男も大勢居ただろうが。それにジジイもババアも居たのを忘れたのか? それと俺は奴等の胸ばかり見てたみたいに言うな。知らん奴が聞いたら誤解を招く発言は止めろ」


このちんちくりんめ、人をハーレムパーティーの(ぬし)みたいに言いやがってからに。

男も女も居たし、ジジイもババアもおっさんも居ただろうが。

それなのにコイツの言い方だと、俺以外は女しか居なかったみたい言いやがって。


男とか女とか関係あるか。仲間は実力重視だよ実力重視。そうじゃないと生き残れなかったわい。

俺以外女のみ? ハーレムパーティー?

そんなモンより実力があって、人間性が普通にあってまともで、実力がある奴の方がよっぽど良い。


それにしても気のせいかコイツの言い方だと、俺が女の胸を基準に仲間を選んでるみたいに聞こえるんだけど? 俺の気のせいか?


しかし……。なーんで鯛焼きの話からおっぱいの話になってる? そして何故に俺がいやらしい、スケベな事ばかり考えてて、エロガッパみたいな扱いになってるんだろう?

えっ、これって風評被害も(はなは)だしくない?

もしかしてコイツ、ここぞとばかりに俺に罵詈雑言を浴びせようとしてないか?

なーんか不本意だし、ムカつくんですけど。


「わらわの胸をいやらしく見ておったお前が言うても、説得力なぞ皆無じゃ。わらわの胸をガン見しておったくせ何を言うか。お前の日頃の行いが全てを物語っておるわ」


「・・・」


どうしよう。凄く、凄~くムカつくね。

コイツの言い草が物凄ーくムカつくんだけど?

何だろう? お前が言うなと、とってもとーっても言いたい。

何が日頃の行いだよ。お前にだけは言われたくない。


「まぁエエわい。それよりもじゃ、わらわの鯛焼きを返せ」


「・・・」


そうかそうか。鯛焼きな。

さぁどうしてくれようかこのちんちくりんめ。


「どうしただんまりか? あーそうかそうか。わらわの胸をいやらしく見るのに忙しくって、わらわの話を聞いておらぬのか。お前そう言えば大迷宮があるあの迷宮都市で、仲間の胸をいやらしく、ネットリとした目で見ておったな。思い出したわ。他の冒険者の女の事もいやらしく見ておったのを思い出したわい。あー怖い怖い、わらわも気を付けねばならぬな」


「・・・」


有罪確定。


お前は何を気を付けなければならないのか聞きたい所だけど、今はいい。

それよりもこの勘違いエセロリに、正義の裁きをくれてやらなければならない。

うん、コイツは有罪。どんな有能な弁護士でもお前を無罪にする事は出来ないだろう。


~~~


「久々だけどやっぱ美味いなぁ。夏場の鯛は味が落ちるって言うけど、なかなかどうして。結構美味いじゃないか。久々だからか美味しく感じるな」


「・・・」


お前が食いたがってた鯛焼きなのに、何でそんな微妙な顔をしているんだろう?


「どうした? お前が食いたいって言ってた鯛焼きだぞ。美味いぞ~」


「違う! わらわが食べたかったのは鯛焼きじゃ。鯛の塩焼きでは無い。魚の鯛では無く、甘味(かんみ)の鯛焼きじゃ。中にあんこが入っておる甘味の鯛焼き!」


あれあれ~、おかしいなぁ、コイツが鯛焼きを食べたいってワガママ抜かすから、わざわざお高い鯛を買って来たのに。

しかも尾頭付きのやつだぞ、これの何が不満なんだろう? ボクわかんない。

お前の為にチャリで買いに行ったのに、エライ言われ様だな。


「お前ここまでやるか? 鯛は鯛でも鯛違いじゃ。それとあそこにある意味ありげな紙袋はなんじゃ? わらわ鯛焼きが入っておると思っておったのに」


それは知らん。どうせ食後にデザートととして、甘味の鯛焼きが出てくるとでも思ってたんだろうけど、それはお前の勘違いだ。

お前の勘違いと思い込みに関してまで責任は持てない。


「おい、あの紙袋には何が入っておる?」


「えっ? 何にも入って無いぞ。入ってるのは空気だけ。只の紙屑だけど」


バカめ! 今日買って来た鯛焼きの紙袋を再利用しただけ、ただそれだけの事。

クックック……。周りを良く見ず、気にもしないのは頂けないなぁ……。

そんなんじゃ命懸けの戦いでは、致命傷となるきっかけになるぞ。


「お前ゴミをわざわざ膨らませるか普通?」


「えっ? ゴミを家の中で膨らませたらいけないなんて法律は無いけど?」


「こ、コヤツ……」


我ながら色々とみみっちい報復だね。うん、俺はコイツのレベルにあわせてやってるだけ、只それだけの事。


「ホレどうしたアレクシア、美味いぞ食わないのか? 鯛は夏場は味が落ちるって言うけど、結構美味いぞこの鯛の塩焼き。あの魚屋は本当に扱う物が良いな~、目利きが良いんだろうな。いや~、わざわざチャリで買いに行った甲斐があるよ」


「お前これ近くにある商店街の魚屋じゃろ? あそこは近いではないか! 何がわざわざチャリで行ったじゃ? あの商店街なら歩きでも行けるわ」


「はぁ~? 歩きだと微妙に遠いだろ? 散歩がてら行くならまだしも、買い物として行くには歩きは面倒なんだぞ」


こんな都心部のど真ん中にある、奇跡の様な昔ながらの商店街。あそこに買い物として歩きで行くのは辛い。帰りは荷物もあるし大変だからな。


「鯛焼き~。わらわの鯛焼き~。お前買い物に行ったのならついでに買って来いよ~」


「食いたかったら自分で行け。金は出してやる、チャリで行け」


「行けるかぁー!」


毎日毎日うるさい奴だ。

しかし今日の夕飯は豪勢だな。やっぱ良いねー、鯛の尾頭付き。豪勢な夕食だよ。


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