第28話 クリームシチューとお米
「なぁ勇者、わらわ今日の晩御飯、クリームシチューが食べたいんじゃが」
「はぁ? お前なぁ、今日の晩飯は麻婆豆腐って言っただろ?」
「麻婆豆腐なぁ……」
「いやいや。今日の晩飯が麻婆豆腐って昨日の夜に言ってたぞ。お前も食いたいって言ってただろ。それに今日一緒に買い物に行った時も、夜は麻婆豆腐って言ったし、お前も分かったって言っただろ?」
「そうじゃが……。確か麻婆豆腐と揚げシューマイとトマトのサラダじゃっけ? でもわらわクリームシチューが食べたくなったんじゃが」
「お前は何で毎回毎回、麻婆豆腐の時に違う物を食いたがるんだ? 前もこんな事あったよな?」
コイツは、麻婆豆腐な嫌いって訳じゃない。
どっちかと言うと好きな食い物だし、むしろコイツが食いたいとリクエストする位には好きな食べ物だ。
それなのに何で突然メニューの変更を要求する?
俺はもう麻婆豆腐の口になってるんだぞ。でもコイツは強行に、いや、強硬に主張して駄々をこねるに違いない。しかも……。
「材料が無い……」
「嘘つけ。わらわ知っておるぞ。人参も玉ねぎもじゃがいももあるであろう? それどころか何なら、シメジもエリンギもマイタケもあるではないか、あとシイタケもな。それに鶏のもも肉や胸肉もあるじゃろ? 牛乳も今日買っておったし、クリームシチューのルーもあるし、作れるではないか」
「それは明日、唐揚げにしようと思って買ったんだよ。キノコはホイール焼きにしようと思ってたし、使い道は決めてたんだぞ」
くっそー、今日コイツと一緒に買い物に行ったから、何を買ったか把握してやがるんだよなぁ。
それにしても、夏前のこの蒸し暑い時期に何故クリームシチューを食べたがる? いやまぁそれを言い始めたら、麻婆豆腐もどうなんだって話だけど。
「わらわクリームシチューが食べたいんじゃ。なぁなぁ、クリームシチュー食べたい~」
「俺は麻婆豆腐が食いたいんだよ。だいたいお前も今日は麻婆豆腐が良いって言ってただろ?」
「仕方ないではないか、わらわクリームシチューの口になったんじゃから」
「突然のメニュー変更は止めろって言ってるよな? 前から俺は言ってたはずだけど? お前は何で夕飯作る寸前に何時も言うんだ?」
「だってだって、わらわクリームシチューが食べたくなったんじゃもん」
もんじゃねーよ。あーもう! これってコイツはダメって言ってもゴネてゴネて、駄々こねまくるんだろうなぁ。
多分だが、今日一緒に買い物に行った時に何を買ったか思い出して、そんでクリームシチューが作れるって思ったんだろうな。それで突然食いたくなったってオチだろ?
「なぁ、クリームシチューにするにしてもパンが無いから、パンを買いに行かなきゃならないんだけど? お前分かってる?」
「パン? 別にいいではないか。ご飯は炊いておるんじゃし、お米とクリームシチューで食べれば良いではないか」
出たよ出たよ。クリームシチューに米? コイツふざけてんのか? 毎回思うがあり得ない。
米にクリームシチューなぞ正気か? 食に対する冒涜だ。
「お前クリームシチューに米って正気か? 毎回言ってるが、クリームシチューに米は合わないんだよ。お前は酔ってるのか?」
「はぁ? わらわ正気じゃし。お前の方こそ正気か? クリームシチューに米は究極至高の組み合わせじゃろ? あんな美味い物はないわ!」
「はぁ? 何が究極至高の組み合わせだ? お前のバカ舌は前からおかしいと思ってたけど、やっぱおかしい。クリームシチューに合うのはパンだ。米? お前はイカれてるぞ」
人の好みにケチをつけるつもりは無い。
だがクリームシチューに米の組み合わせは無いな。
基本的にホワイトソースに米は合わない。
その理屈で言うとドリアもダメだ。
俺はアレがどうにも好きになれない。
グラタンやマカロニグラタンは美味しいのに、ドリアとなるとダメだ。米はホワイトソース合わない、コレは間違いない事実である。
「はぁ~? クリームシチューに米の組み合わせを教えたのはお前じゃろ?」
「確かに教えたが、俺はその組み合わせが美味いって、一言でも言ったか? むしろ不味いって言ったはずだけど?」
本当にいらん事をコイツには教えてしまった。
我が家ではクリームシチューに米ってのは、俺が幼かった頃は良くある組み合わせだった。
だがそのメニューの時、俺はあまり食わなかったのをじいちゃんばあちゃんが見ていて、それで俺に聞いて、それからは米ではなくパンが出る様になった。
ばあちゃんは料理上手で何を作っても美味しかったが、数少ない美味しくない料理と言うか組み合わせであり、俺はダメだった。
しかもばあちゃんの作るクリームシチューは、何故かシイタケが入っており、それもダメな理由になっている。
シイタケ自体は好きだけど、クリームシチューに入っているシイタケは壊滅的に合わない。
ばあちゃんが子供の頃、ばあちゃんの母親やおばあちゃんが作るクリームシチューに入ってたらしく、それをばあちゃんが受け継ぎ、シイタケを入れると言うのが当たり前になってたらしい。
ちなみにじいちゃんは、シイタケ入りの物に疑問はあったらしいが、そんな物かと思って受け入れたらしい。
ついでに言うと、二人共クリームシチューにお米の組み合わせの家であった為、パンでは無く、当たり前の様に米との組み合わせで我が家では出て来てた……。
「わらわにバカ舌と言うが、お前の方こそバカ舌じゃろ? お米とクリームシチューの美味しさが分からぬなど、お前の方こそ正気か? パンより米じゃ米。パンなぞいらぬ」
「いるに決まってるだろ! パンが無かったら、クリームシチューだけで食べなきゃならないんだぞ、ふざけんな俺は嫌だ。それとシイタケを入れるのも嫌だ、アレは壊滅的に合わない」
シイタケ入りの件は昔の事を話してて、聞かれたから答えた。そして一度シャレで入れたんだが、何故かコイツは気に入り、それ以来シイタケを入れろと何時もうるさい。
それ以来、俺とコイツによるシイタケを入れる入れない論争と、醜い争いになるのがある意味お約束になってしまった。
嫌なお約束である。俺はシチュー系に入れるキノコは、マッシュルームとエリンギ、マイタケ、シメジしか入れたくない。
ただしマイタケは味と香りが強いから、入れるとマイタケの一強になるので注意が必要だ。美味しいんだけどな。
「はぁ~? シイタケ入りで無いクリームシチューなぞ、クリームシチューでは無い。アレがあるから味が引き立つんじゃぞ、お前こそ正気か? あんな美味しい物はないわ!」
「はぁ~? 美味くないわ! クリームシチューにシイタケ? お前のバカ舌と一緒にするな、シイタケは合わないし、それ以前の問題として米自体が合わないんだよ。このバカ舌魔王が!」
「はぁ~~~? 誰がバカ舌魔王じゃ? このバカ舌勇者めが! お前に言われとうないわ」
「何だと…… お前ヤるか? アァ?」
「アァん? 久々にヤルと言うのか? 上等じゃ、わらわの正義をお前に教えてやろうではないか」
「何が正義だぁ? お前は悪の魔王だろ? 俺は正義の勇者だぞ」
「はぁん? わらわ達から見れば、お前こそ悪の勇者じゃぞ。いや、悪の大魔王じゃ」
誰が悪の大魔王だよ? このちんちくりん、これでもかって程、顔を近づけやがってヤンキーか?
いやまぁ俺も思いっきり顔を近づけてるから、どっちもどっちだけど。
「はぁ~? 俺だってやりたくてやったんじゃねーよ。俺を召還したアホ共こそ諸悪の根元だ。悪はアイツらだ」
あの時もしあの神が、召還途中で俺を呼び出し、力をくれなかったらどうなってた事やら。
面白そうだって理由で俺に力をくれたから、だからあの世界でも何とかなったんであって、もし途中で神が俺を呼び寄せ、力をくれなかったら……。
「そいつらの大半はこの世におらぬではないか。のう。何でじゃろうな?」
「お前も良く分かってるだろ? 大体だなこの世に居ないのは、戦場での不幸な一弾に倒されたからだろ? それを言い始めたら、お前も俺もどっちもどっちじゃないか。戦場での流れ弾や不幸な一弾なんて極ありふれた、良くある事だろ? 戦場では運の悪い奴から死ぬ、ただそれだけの事。それがたまたま両陣営の強硬派の奴らが居る所に同時に着弾した、ただそれだけの事だろ? そんな事も分からないのか? これだからクリームシチューを米で食ってる奴は……」
「はぁぁぁ~~~? クリームシチューにパンとか、面白味の無い奴に言われてものう~。大体じゃな、クリームシチューにパンとか気取っておるのか? 日本人なら米じゃろ米! 日本人ならクリームシチューには米じゃ!」
「いや、お前日本人じゃないだろ? 何を抜かしてるんだ?」
くっ、思わずつっこんでしまった。コイツは何が日本人ならだ? 日本人以前の問題として、お前は異世界人で魔族だろうが。
これだからクリームシチューを米で食う奴は……。
「わらわ心は、魂は日本人じゃ!」
「いやいや、お前は魔族としての誇りはどうした? 魔族は誇り高いんじゃなかったっけ?」
「バカめ! 日本の様な面白い、楽しい所はないわ。じゃからわらわは多分、そう、わらわは前世は日本人じゃったんじゃ、多分そうじゃ」
「お前無茶苦茶言うなよ。どんだけ日本が好きなんだ?」
「大好きじゃ!」
「・・・」
もう、何なのコイツ? 本当に意味が分からない。
いや、そうかそうか、そうだった。コイツはアホの子だもんな、意味が分からないのは今更か。
あーそうだった、アホの子なら仕方ないか。
「おい、お前は何でわらわをそんな目で見る? 何故可哀想な子を見る様な目で見ておるのじゃ? わらわの気のせいか? なーんか哀れみの視線の様な気がするんじゃが……」
正解。お前の言うとおり哀れんでいるんだよ。
お前は可哀想なアホの子だからな。
「フッ……」
「お前、鼻で笑ったな?」
鼻で笑った? 笑ったよ。だが笑ったと認めれば絶対ややこしい事になる。だから決して認めないがな。
「で? お前さっき俺とヤるって言ってたけどヤるの?」
「いや…… ヤらん。お前既に糸を出しておろう?」
「何を言ってるんだか俺には分からんなぁ。糸なんか出てないじゃないか」
コイツ相変わらず勘が良いな。
確かに俺は既に糸を出してるよ。不可視の糸をな。もしコイツが暴れそうなら糸でぐるぐる巻きにしてやるつもりだ。
理由? 暴れられたら家が滅茶苦茶になるからな。
流石にそれ位はコイツも分かってるだろうが念の為だ。
それにしても本当に勘の良い奴だよ、この辺りは流石だ。コイツはこれがあるから侮れない。伊達に魔王様と呼ばれていないな。
「どうせ不可視の糸を出しておるんじゃろ? 何なんじゃ、わらわにすら見えぬ糸なぞ反則以外の何物でも無いぞ。やな能力じゃのう……」
「俺の能力は努力の結果だ。それと今日はクリームシチューは無しで。予定通り麻婆豆腐な」
「はぁ? 何でじゃ?」
「だってお前戦う前から負けを認めただろ?」
「認めておらぬし」
「と言うか今日の晩飯は元から麻婆豆腐だったんだぞ、それをお前がダダこねてクリームシチューって言ってるだけだろ。お前あんまりワガママ言ってるとお前の晩飯は、ふりかけご飯にするぞ」
「横暴じゃぞ。わらわクリームシチューが良い! なぁ、クリームシチュー」
このちんちくりんめ、駄々っ子か? コイツ肉体に精神が引っ張られて、本当にガキになったんじゃないだろうな?
いや、違うな、コイツは元からこんなだった。
「突然の食事変更は止めろって、何時も言ってるだろ。明日の晩飯は唐揚げにしようと思ってたけど、仕方ないから明日クリームシチューにしてやるからそれで妥協しろ」
「それはそれ、これはこれじゃ。わらわ今日食べたい。なぁなぁクリームシチュー~~~」
「えーい! すがるな! 俺の身体を揺さぶるな、引っ付くな、離れろ」
もう意味が分からん。何がそれはそれ、これはこれだよ? 人が妥協してやってるのにコイツは。
大体だ、俺はクリームシチューよりビーフシチューの方が好きなんだぞ。それなのにこのポンコツめが……。
まぁ…… ビーフシチューであっても、米ではなく、パンにするがな。
「なぁなぁ、ご飯はもう炊いておるのじゃろ? 後はクリームシチューにしたらそれで夕飯は完成ではないか」
「だ、か、ら。クリームシチューに米は合わないって言ってるだろ? お前は米で良いかも知れないけど、俺はパンじゃなきゃ嫌なの。今日はパンが無いから、俺はクリームシチューだけで食べなきゃならなくなるだろうが。今日は麻婆豆腐。クリームシチューは明日作ってやるって言ってるじゃないか」
もう! 何回も何回も同じ話をさせやがって。
このクソ金髪ロリ、本当に今日の晩飯をふりかけご飯にしてやろうか。
大体だ、俺が飯を作ってるんだぞ、コイツは一切作らず食うだけのクセしやがって、何でこんなにワガママなんだ? コイツを見ていると、世のお母さん達が飯に文句を言うなって言ってるのが、身に染みて良~く分かるよ。
「嫌じゃ嫌じゃ、わらわ今日クリームシチューが食べたい。明日は嫌じゃ」
「ご飯に文句があるなら食べなくていいんですよ。そんなにワガママを言うのなら、今日の晩ご飯は抜きにしなさい」
「横暴じゃ、わらわを飢え死にさせるつもりか?」
一食抜いた位で飢え死にしねーよ。飯に文句ばっか言いやがってからに、今日の晩飯の準備は済ましてるんだぞ。
もう豆腐は切ってあるし、挽き肉も下味をつけて混ぜ合わせてる。
だがそれをコイツに言っても、どうせこの駄々っ子は、アイテムボックスに入れとけば良いとかほざくんだろうがな。だからいちいち言わない。
「うるさいなぁ……。飯に文句言うなよな。俺は基本的にお前が食いたい物のリクエストは、ちゃーんと聞いてやってるだろ? 突然のメニュー変更は止めろって言ってるんだ。明日の晩飯はクリームシチューにしてやるから、今日はダメです」
「嫌じゃ嫌じゃ、だってわらわもう、口がクリームシチューの口になっておるもん。なぁ~ クリームシチュー~~~」
このクソ金髪駄々っ子は、俺の話を聞いて無かったのか? 違うな、聞きたくなかったんだな。
そうかそうか、なら俺にも考えがある。コイツのワガママをいちいち聞いてたら教育に悪いからな。
「お前…… 今日の晩飯、ふりかけご飯か梅干しをのっけた日の丸ご飯のどっちが良い?」
「両方嫌に決まっとるじゃろ!」
「嫌も何も、お前がワガママ言うからだろ? 心配するな、お茶を掛ければ梅干し茶漬けになる。ふりかけもお前の好きな小魚ふりかけを掛けてやるから」
「そんな夕飯は嫌じゃ! 横暴じゃぞ、お前は独裁者か? そんな事がまかり通るなぞ、世間が許してもわらわが許さぬわ」
「お前が許さなくても、俺が許すんだよ。それと誰が独裁者だ? 出て来るご飯にワガママ言う子に対するお仕置きだよ」
「虐待じゃ虐待。わらわに対する虐待じゃぞ」
何が虐待だよ? お前は捕虜か何かか?
それともまさか、お前は俺の子供とでも言うのか?
コイツは今日一緒に買い物に行ってるのに、何でその時点で言わない? もし買い物の最中に言ったのなら、俺だってメニューの変更をしてたわい。
俺はそこまで鬼ではない。一緒に買い物に行ってた時に言えば、その辺りは柔軟に対応してた。
それをこの、ちんちくりんクソロリ金髪め、虐待だと? 違うね、躾だ躾。毎回毎回コイツのワガママを聞いてられるか。
「何が虐待だよ、そう思うなら自分で作れよ。なぁ、金出してやるから、材料買いに行って自分で作ったら?」
「わらわ作れぬ! わらわに料理しろじゃと? それこそ虐待じゃ、大虐待じゃぞ。お前には人の心が無いのか?」
「・・・」
もうヤダ……。何なのコイツ? 作れない? 何でコイツは作れない事を、そんなに胸張って言えるんだろう? ペッタンコのクセ、良くそんなに堂々と胸張れるよな。
このポンコツ魔王め…… 本当にどうしてくれようか。食事に文句を言う奴は冗談抜きで、ふりかけご飯か梅干しご飯にしてやろうかな。
しかしコイツは何でこんなにワガママなんだ? 基本的に魔王の奴は、ワガママでポンコツだが、たまーに強力に駄々っ子モードに入るよな? それこそ子供の方がマシな位に駄々っ子ワガママ娘になりやがる。
面倒臭いなぁ…… その強力駄々っ子モードが今日か。お前は歳幾つだ? マジで五歳の子供の方が聞き分け良いと思うぞ。
「なぁなぁ、パンならお前のアイテムボックスの中に『それは異世界に飛ばされた時用のストックだって言ってるだろ! 非常用だから無い物だって思えっていつも言ってるが?』入って……」
このアンポンタンが……。あの神が何時俺達を異世界に飛ばすか分からないのに、そんな事で使えるか!
何回も何回も、何度も何度も言ってるのにこのアホタレさんは……。
向こうに行って困るのは俺達だぞ。普段から言ってるのにこのワガママ魔王め。
そんな事で貴重なストックを使うかよ。いざと言う時の事を考えろよな、この引きニートめが。
「ちゃうねん、ちゃうねん、ホンマちゃうねん」
「おいコラ…… 何が違うんだ? なぁ、関西弁で逃げようとするな」
「・・・」
「何回も何回も同じ事を言わせやがって……。明日作ってやるから今日は諦めろ」
「くっ…… わらわが何をした? 何故わらわのささやかな願いすら叶わぬのじゃ?」
「お前が何もしないから、だから願いが叶わないんだよ。何をしただと? 普段から何もしないから、挙げ句いらん手間を掛けさせるから、だからだよ。このいらん事しいが。そう思うなら普段からしっかりしろ。飯くらい作れるようになれ」
別に俺は女が飯を作れとか言うつもりは一切無い。作れる奴が作れば良いとは思う。だが何も出来ないと言うのは流石にどうなんだ? それにコイツは飯だけで無く、掃除も一切しないし出来ない奴だ。あまりにも何も出来なさ過ぎる。
しかも出来ないだけで無く、やらないし、やろうともしないのはダメだろ。
何で俺はコイツの世話をしてるんだろう? 俺はコイツのお母さんじゃないだぞ。
「お前はわらわが出来ると思っておるのか? 食事を作れじゃと? お前には人の心が無いのか! この悪魔め、鬼じゃ、鬼がおる。この人でなし」
「・・・」
「悪魔め! わらわを苦しめて喜ぶ極悪人めが! この極悪勇者!」
「お前今日の晩飯ふりかけご飯な。俺は極悪人だから、お前にはふりかけご飯を食わせてやるよ」
「あっ! お前それ本気じゃな。お前今本気で言ったじゃろ? 嫌じゃ嫌じゃ、わらわ、ふりかけご飯だけの夕飯は嫌じゃ」
「あっコラ、しがみ付くな離れろ。おい、すがり付くな、くっ付くな。お前…… 止めろ、離れろ。おいコラ」
「ワー! 嫌じゃ~ お前が取り消すまでわらわ離れんからな。ちゃんとした夕飯食べさせろ~ わらわふりかけご飯だけの夕飯は嫌じゃ~」
「えーい離れろ。元はと言えばお前がゴネるからだろ。お前が……。おい止めろ抱き付くな」
コイツ何て力だ。は、離せないぞ。
どうする? 力を解放しないとコイツを離せない。
あーもう、うっとうしい。お前は夏場のセミか?
「イ~ヤ~じゃ~~! ふりかけご飯だけの夕飯は嫌じゃ~。もう麻婆豆腐で良いから食べさせろ~」
「で良い? お前今、麻婆豆腐で良いって言ったか? 違うだろ、麻婆豆腐が食べたいだろ? それか、麻婆豆腐を食べさせて下さいと言え」
「麻婆豆腐を食べさせて下さい~」
うぉっ、コイツ本当に言いやがったぞ。マジか。
俺が本気だと分かって、即意見を変えやがったぞ。
「おいコラ、今日はちゃんと食わせてやるけど、飯に文句は言うな。俺は不味い物を食わせてる訳じゃ無いんだからな。それと飯を作る寸前の、突然のメニュー変更要求は止めろ。前以て言え、それなら俺も考慮はしてやる。今日の場合であれば、一緒に買い物に行ってる時に言えば、それなら良かったんだ。分かったな?」
「分かったから、分かったからふりかけご飯だけの夕飯は止めてくれ~」
「まぁ良いだろう、今日は許してやろう。おい魔王、とりあえず離せ。くっ付くな、すがり付くな、暑苦しい」
良し、これでコイツには、俺に対してのゴネ得は無いと再び分かっただろう。うーん…… ちゃんと分かってくれたら良いんだけどなぁ。無理だろうなぁ、どうせ又同じ様な事をコイツはやるんだろうな……。
~~~
「おい、何かお前の方が挽き肉多くないか? わらわの麻婆豆腐、お前より挽き肉が少ないぞ」
「そんな事あるか、一緒だよ。そう思うなら替えてやるよ」
「うーん…… でもこっちの方が豆腐は多いんじゃよなぁ。でもでも挽き肉は……」
「俺はどっちでも良いから好きな方を選べ」
「ん~…… やっぱこっちで良い。ああ、これがクリームシチューならのう…… 」
「お前何か言ったか?」
「別に……」
このちんちくりんめ、聞こえてるんだよ。
懲りない奴だ、本当に子供よりタチが悪いな。
「ん? あー! 揚げシューマイ、お前の方が多いのではないか?」
「一緒だよ! お前は本当に……」
ダメだこりゃ。
明日も投稿します。




