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第25話 はわわ……


「アレクシア」


「おー 悠莉か」


コイツえらくご機嫌だな、何か良い事でも合ったのかな?


「何のゲームだコレ?」


「ターザンぽい奴を操作して、左右に動く蔓を移動するゲームじゃな。何じゃ、わらわが終わるのを待って声を掛けたのか? 感心な奴じゃな」


当たり前だ、俺は気遣いが出来る男だからな。

それにもしゲームをしてる最中に声を掛けたら、絶対ややこしくなる。間違いなくコイツは怒るだろう、百円賭けても良いね。


「この筐体のゲーム画像が荒いな。それを言い始めたらここのゲームは全体的にそうだけど。なぁコレ面白い?」


「まぁまぁじゃな。それより悠莉よ、わらわあのレーンを操作して、パチンコ玉をゴールに入れるやつ、二回ゴールさせたんじゃぞ」


「本当に? 凄いなお前」


「と言っても二回の内一回は、失敗した時に偶々(たまたま)ゴールに入ったと言うか落ちて入ったんじゃがな」


「それでも凄いな、で? 景品は何だったの?」


「コレじゃ!」


プラ製のカプセル? の中に、小梅位の物をキャンディみたいに包んでるな、飴玉にしては小さいし何なんだろ?


「コレ中身は何が入ってんの?」


「ん? あー 小さいチョコじゃな、糖衣コーティングされた小さいチョコじゃった。一つ食べたが結構美味しかったぞ、悠莉も食べるか?」


「一個貰おう」


本当に小さいな、小梅サイズの糖衣チョコか、駄菓子屋さんで売ってそうなチョコだな。

お味はっと……。うん、結構美味しいな、何か懐かしい味だよ。悪くないな、俺はコレ結構好きな味かも知れない。


「意外と美味しいな、俺はこの味好き。それにしてもお前良く二回も成功したな」


「昼御飯食べてからもかなりやったからの、ついムキになってしもうたわ。まぁエエ、もうあのゲームはやらんでもエエかな」


コイツあのゲームに一体幾ら使ったんだろう? かなり使ったみたいだけど、コイツは大満足って顔してるから別に良いんだけど。

それにしてもこの時間は人が多いな。お年寄り達も多いが、若いカップルらしき人も結構多い。ここってデートスポットになってるんだろうな。


お年寄り達が皆楽しそうにゲームしてるのは、違和感と言うか少し不思議な光景だ、子供みたいにはしゃぎながら色々なゲームをしてるけど、皆童心が刺激されてるからかな?


チラッと魔王を見ると、コイツも楽しそうな顔してニコニコしてる。出来る事ならここに住みたい、そんな事を思ってるのかもしれない。


「アレクシア、楽しい?」


「うん楽しい。ここに来たいって、悠莉に言って良かった。連れて来てくれてありがとう悠莉」


無邪気な笑顔だな。コイツ素直な時は可愛いんだけど、普段がなぁ。普段からこんなだったら俺も楽なのに。まぁ良いや、どれだけ願おうがそんな奇跡は起きない。無い物ねだりか。


「おう、お前が楽しそうで何よりだよ。で、夕飯はどうする? 何か食いたい物あるか?」


「夕御飯なぁ。やはり前以て決めておかねば、その時になったら迷ってしまう。わらわ特に何か食べたいって物が無いんじゃよなぁ、悠莉は何か食べたい物はないのか?」


「俺? 俺も特に無いな。確かに食う物は前以て決めておかなきゃ迷うけど、旅先で思いがけない料理ってあるだろ? 前以て決めてたらそんな思いがけない料理と出会えないし、行き当たりばったり、これもまた旅の醍醐味だから」


とは言うもののどうしよう? ホテルのレストランで食べても良いけど、なーんかちょっと違うんだよな。うーん……。地方都市とは言え繁華街だし料理店は多いから、アーケードをブラブラ歩きながら色々見て回るかな。


「なぁ悠莉、そう言えば観覧車に乗るって言っておったがどうする? 乗るんじゃよな」


「そうだな、折角だし乗るか。なぁ、夕飯はこの辺りをブラブラしながら良さげな店に入ろうか? それが嫌ならホテルのレストランか料理店でも良いし、俺達が泊まってるホテルは色々な料理店が入ってるから、何か食いたくなる物もあるだろ」


「この辺りをブラブラか? わらわはそれでもエエ。旅行に来たんじゃ、たまにはそれもアリじゃな。ホテルでってのも悪くは無いが、ここでしか食べられぬ物が食べたい」


普段なら面倒だからホテルで食べるとか言うのに。来たかった旅行でやっぱテンションが上がってるんだな。


ここでしか食べられない物か。何があるだろ?

ブラブラしながら探せば何かあるか。


「夕飯はブラブラしながら探そうか。観覧車に乗れば上から何か見えるかも知れないし」


「いやいや。悠莉よ、ここの観覧車は結構な高さがあるんじゃぞ、細かいところまでは見えぬ。大体じゃな、店は見えてもメニューは見えぬではないか」


「そりゃそうだ、メニューが見えないよな。何にせよ観覧車に乗ろう。暗くなり始めてるから夜景が見えるだろうし、綺麗なんだろ? ここから見る景色は」


「らしい。ネットで見た情報じゃがな」


観覧車は久々だな。最後に乗ったのは高校生の時か? 体感で十年以上前の事になるんだなぁ。

こっちの時間の流れでは四年ぶりになるのか。

観覧車に乗る事をちょっとだけ楽しみにしちゃってるよ。ちょっとだけどな。



「うわっ、結構並んでるな」


「何かここの観覧車って、デートスポットになっておるらしいぞ」


デートスポットなぁ。確かに若いカップルが多いけど、お年寄り達も多い。

何かここら辺りも桃色空間になってるよ。しかもキラキラのエフェクト付き空間になってるんですけど。


この観覧車だけでなく、このデパート自体がデートスポットになってるんだよな? 確かにこのデパートは面白い。

四大都市にあったとしてもデートスポットになるだろうし、客もかなり来るだろう。

もしかしてここみたいなデパートが、全国的に広がるかも知れないな。ここは楽しい、凄く良い。

何かワクワクするんだよなここって。家の近くにあったら入り浸るのは間違いない。


「なぁアレクシア、待ちあるけど乗る?」


「別にエエぞ、この位なら待つ。それに夜風が気持ち良いし、待つのは構わぬ」


確かに夜風が気持ち良い。それに完全に夜になりきる前の、夕方と夜の境目って雰囲気が良いよな。

これって逢魔時(おうまがとき)って言うんだっけ? 本来の意味は良い意味とは言い難いけど、この夜との境目の景色は俺は好きだなぁ。


「一人八百円か、結構良い値段じゃな」


「デパートの屋上にあるにしては良い値段ではあるな。だけどここの観覧車って、建物の上にある観覧車では日本一の大きさだっけ? そう考えたら妥当ではあるかな?」


「言われてみればそうじゃな、なぁ悠莉早く買って行こ」


「分かったから腕を揺さぶるな」


何やかんやでコイツも乗りたかったのかな?

子供みたいに笑ってはしゃいで、楽しそうで何よりだけど、俺の腕を揺さぶるのは止めて欲しい。

バッグがまた俺の手にバチバチと当たってるんですけど。分かって無いんだよなぁ。



「どの位待つかの?」


「二十分位かな? 平日でこれなら土日祝はもっと待つんだろうな。なぁアレクシア、土日はどうする? ゲームコーナーも無茶苦茶混みそうだけど」


「ん~…… なぁ…… どうしようかのう。土曜まで後四日間あるし、今日は火曜じゃから後三日間はゆっくり遊べるからの。ん~…… あまりにも混む様であれば昼からは悠莉と買い物するかの」


「俺も今日を含めて四日間は買い物してるから、大分買えるとは思うんだ。土曜はアレクシアが欲しい物を買っても良いぞ」


コイツにも好きな物を買ってやる時間は必要だよな。まぁ…… ほぼお菓子だろうけど。

服はここでないと買えないって訳でもないし、コイツはお菓子とかケーキとか買うだろう。

うん、お菓子もケーキも何処でも買える訳だが。ん?


「それは嬉しいが土曜は屋上だけで無く、下も混むのではないか?」


「・・・」


「どうした悠莉? わらわの話聞いておる?」


「すまんすまん、聞いてるよ。そうだな、土曜はこのデパート自体が混むんだもんな、とりあえず土曜までにどうするか考えておこう」


「そうじゃな、なんならアーケードをブラブラしてもエエし」


別に土曜の事を今決めなくても良い。

問題は土曜の事では無い。俺達の後ろの奴らが問題だ。なーんかやけにイチャイチャしてるんだけど?


何だろう、今からキッスするんですかって位に密着して、私達周りが一切見えていません、この世界は私達二人しか居ませんってオーラが出てる気がするんだけど……。


別にそれは後ろの二人の自由だけど、小さい声で『良いだろ?』とか『ダメだよぉ~』とか聞こえてくるんだが、君達は何をするつもりなのかな?

流石におっ始めたりはしないと思うけど、数が少ないとは言え子供も居るんだからね。ちょっとは控えようか。


「なぁ悠莉、今日は何を買ったんじゃ?」


「主にケーキをホールとカットした物と、肉類だな。ローストビーフが美味そうだったから大量に買った。後は手羽餃子とか唐揚げとなチキンレッグ。そうそう、チューリップも美味そうだったから買った。後は鴨焼きと鴨ロース系のと焼き鳥にとか諸々買ったよ」


「エエなぁ、全部アレしないよな? ちょっとは食べるんじゃろ?」


「そうだな、多少は味見しないとな」


アイテムボックスに全部は入れっぱなしにはしない。少しは味を確かめないといけないし、何より俺が食いたい。それよりもだ。


後ろのカップルが益々密着してるんだが……。

嫌だなぁ…… 後ろを振り向か無くても、どうしてるかって分かっちゃうんだもん。


異世界に飛ばされて色々あって気配とか察知出来る様になったけど、戦闘ではとても役に立つが、日常生活でも嫌でも分かっちゃうんだよな……。


後ろの奴らは付き合い立てっぽいけど、流石にやり過ぎじゃないか? コイツらここでは無く、愛を保つ宿にでも行けよ。

ここでイチャイチャせず、そこなら周りに何の気兼ね無く、存分に愛を確かめられると思うぞ。

おそらく後ろの二人は周りの事とかそんな事は一切、気にしていないんだろうけど。


おい! アレクシア・へルクス。お前今日はどうしたんだ? またコイツ俺の腕をつかんでブラブラさせてやがる。

ヘルクス君、キミはどれだけテンションが上がってるんだ? 後ろの二人だけで無く、周りもラブラブ満開なんだぞ。これじゃあ俺達もラブラブバカップルだって思われるだろうが。


注意するか? いや、ダメだ、どうせ注意してもコイツはまたやる。注意しても無駄だ。

鼻歌なんか歌っちゃってご機嫌だねアレクシア君。そんなに楽しいんだね。俺はロリコンだって思われていないかと思うと憂鬱だよ。


「悠莉まだかなぁ?」


「もうちょっとで乗れるよ」


キミはもうちょっと周りを見ようね、特に前を。

俺達の前には三組しか居ないんだから、もう直ぐ乗れるよ。


後ろに居る二人のラブラブ度が更に上がったけど、お前達は今から結婚式でもするのかな?

本当に控えようね。バカップル撲滅団に捕まっちゃうよ。


この観覧車に並んでるのはほぼ老夫婦や若い恋人同士だが、後ろの二人が一番ラブいオーラを出してるけど、その(ほか)の恋人達や老夫婦もそれなりにイチャついてるんだよなぁ。


そのお陰で俺達がそこまで目立つ訳では無い。

今も魔王の奴は俺の腕を掴み前後にブラブラさせてるが、周りに比べればかなり可愛らしいスキンシップではある。


だけど金髪外人で、一応美少女でもある魔王自体が目立つから、注目されてもいるんだよなぁ。

しかもコイツは見た目はロリだから色々目立つし、ゴスロリなんか着ちゃってるから更に目立つ要素が満載なんだよ。


皆さ~ん、コイツ中身は大人ですからねー。

コイツは合法ロリですよー。

もしくは只の改造ロリですから~。

誤解しないで下さいよ~、ボクはロリコンじゃ無いですからね~。


声を大にして言いたいよ、だけどそんな事を言えばむしろ言い訳にしか聞こえないから、言わないし言えないけど。


「悠莉、わらわ達の番じゃぞ」


「ん、乗ろうか」


後ろのカップルはどんなツラしてるんだろう?

一度も振り向かなかったから顔見てないんだよね。さてさて…… ん? ん~?


「・・・」


うん、何と言うか…… 良く言って普通。冷静に批評すると……。ねえ、本当、ねえ。

まぁ何だ、仲の良いのはとっても良い事だよ。

仲良き事は美しき(かな)だっけ? 良いんじゃないかな。


「悠莉どうした? 何で景色では無く、デパートの屋上側を見ておるんじゃ? 何ぞあるのか?」


「いや、何も無いよ。人が多いなぁって思って」


「確かに待ちが凄いのう。わらわ達が並び始めた時より更に増えておる。下の食堂街も人が多いんじゃろうな」


「激混みだろうな。俺が屋上に上がって来る時も人が多かったけど、この時間になって更に人が増えてるみたいだ」


下も人は多かったけど、屋上は更に多いな。

エレベーターもぎゅうぎゅうだったし、これ下の食堂街も激混みなんだろうな。やっぱ他所で夕飯食うか。


「おー! 滅茶苦茶景色がエエぞ悠莉」


「本当だな、街並みがネオンや光に照らされて幻想的だ。綺麗だな」


繁華街の観覧車の醍醐味だよな。上から見ると本当に綺麗だよ。それに水平線? が闇と光の境目が凄く綺麗で、これこそ幻想的な美しさがあるよ。たまには良いよなこんなのも。


「家から見える景色も中々のもんじゃが、観覧車に乗るとまた違って見える。エエもんじゃな」


「土地と言うか場所が違うからな、そりゃ違って見えるよ。だけど日が落ちる側の向こうに山が見えるからか、何か(おもむき)があるよな。なぁ、山の先に見えるのって海だよな? 上に上がるにつれ見えて来たぞ」


「海じゃな。これはこれは…… エエではないか、絶景じゃ。乗って良かったのう。ここに来て良かった」


久々に観覧車に乗ったが、やっぱ良いな。観覧車が移動するたびに少しづつ少しづつ景色が変わって、まるで万華鏡みたいだ。本当に良いな……。


ヒキニートのお家大好きの魔王ですら、来て良かったと心から言ってる。たまには旅行も良いもんだ。

あの世界で散々旅をして来たが、純粋に楽しむ目的の旅行ってのは良いもんだよ。何より命の心配が一切無いってのが良い。


「乗ってみるもんじゃな、何となく乗ってみるかと思って期待せず乗ってみたが、エエもんじゃなぁ……」


「たまには良いもんだろ?」


家に居るだけでは味わえない物ってのもあるからな。コイツももう少し外に出て色々見れば良いんだけどなぁ。

せっかくこっちに来たんだ、ならこっちでしか体験できない事や、出来ない事をもう少し味わえば良いのにとは思うが……。


「まぁたまにはエエな。なぁ、そろそろ一番上に行きそうじゃ、天辺から見る景色はどんななんじゃろ?」


「観覧車で一番上に行くのってなんか気分が良いよな。景色も独り占め気分で最高の景色だと思うぞ」


「頂点から見る景色楽しみじゃ」


本当そうだよな、天辺? 頂点? どっちでも良いが、最高の気分で景色を見られるだろうな。

良いねえ~ 本当に綺麗だ、三百六十度全てが美しい。上から下を見下ろすと気分が良くなるって良く聞くけど、完全に同感だな。下を…… ん?


俺達の後ろに並んでた恋人達か。あれって……。


「悠莉どうした? 下を見つめておるが、何かあるのか?」


「いや、うん」


あー、やっぱか。やるとは思ってたけど、やっぱやるんだ、キス。


男のお膝に対面に座ってのキッスですか?

普通は横並びで口づけを交わす物なのに、君達は向かい合わせでですか。どれだけお互いを想い合ってるんですか? 絶対あの二人って、この世界は自分達しか居ないって思ってるよね?


「なぁ悠莉、さっきから何を見ておるのじゃ?」


「うん……」


何かあの二人、付き合いたて説が有力になって来たぞ。付き合いたてならではのラブラブっぷりだもんな。間違いなく君達が日本一のバカップルだよ。俺が認め様ではないか。


「悠莉? お前何見ておるの?」


あっ、アレクシアちゃんがこっちに来ちゃった。

俺が何を見てるか気になるんだね、でもキミ近いよ。もう少し離れようね。


「何じゃ、何があるんじゃ? あっ!」


うん、アレクシア・ヘルクス君、キミも分かっちゃったんだね。そうだよ、俺達の後ろに居た二人が、口づけを交わしてるんだよ。


「ひょえ~ アヤツら何をしておるんじゃ?」


何もくそもキッスしてるんだよ。どうもこの世界はあの二人の物らしいね。それとあんまりガン見するのはどうなのかな?


「男と向かい合わせに座っておるぞ、男の膝に何で向かい合わせに座っておるんじゃ?」


口づけがしやすいんだろうね。それともあれかな? 無理な体勢で顔を見るのでは無く、あの体勢なら顔が見やすいとかじゃないかな?


「はわわ…… 大胆じゃな、こんな所でチッスするとは。誰かに見られたらどうするんじゃ?」


そうだね、実際キミ今見てるもんね。


「ヒー、何たるふしだらな……」


普通に口づけしてるだけだろ?

キミは何でそんなに照れてるんだい?

意外とキミって純情だよね。あんなはしたない格好しといて、本当、中身は純情って狙ってるのかな?


あっ、アレクシアちゃん顔を手で覆い始めたぞ。キャー、何て声キミから初めて聞いたよ。

所で魔王君、キミ目を手で覆ってるけど、指の隙間から見てるよね? そしてその隙間が少しづつ広がってるのは、ボクの気のせいかな?


指が目の辺りで緩いV字になってるけど、思いっきり見てるよね? ガン見だよね?


「おい悠莉、アヤツら何しておる? えっ? 何じゃアレ?」


だから口づけを交わしてるんだよ、見たら分かるよね? カマトトぶってるのかな?

そしてキミ今、完全に目の辺りの指がV字になってるね。何? 服は着ておるよな? だって?

着てるに決まってるだろ? 女の方はズボンだったけど、一切動いていないじゃないかね。


何だって? 観覧車揺れておらぬかだって? そら風で少しは揺れるよ。と言うかキミがギャーギャー騒ぐから、俺達が乗ってる箱の方がよっぽど揺れてるよ。


「はわわわわ……」


キミ動揺してる割にはガン見してるよね? そんなに興味津々なのかい? キミって二十歳越えてるよね? まるで小学生か中学生みたいなリアクションだね。

それにあの二人、大して激しい口づけしてる訳じゃないだろ? 極普通のキッスだと思うよ。

映画とかドラマでやるキスの方が、よっぽど激しいと思うんだけど?


所でアレクシア君、キミさっきまでV字ではあったが、目の辺りにあった指がお口にまで下がっちゃったね。お口を手の指で押さえてるけど、目は釘付けになっちゃってるよ。

良いかい? 世間ではそれをガン見って言うんだけど、分かってるかな? キミって純情な割には興味津々って、どんな属性を狙ってるんだい?


「おい悠莉、お前は何でそんなに冷静なのじゃ? 何かわらわがアホみたいではないか」


「そんな事言われてもなぁ……」


そら俺だって彼女が居た事はあるし、一緒に観覧車に乗ってキス位した事ある。

あの二人に比べれば軽い軽いキスだけど、した事あるし。まぁ何だ、俺がしたのは小鳥キスだったし、横合いに座りあっての軽い小鳥キスだけど。


「えっ、何? アニメとか漫画で見た事あるけど、本当に観覧車でキ、キッスしたりするんじゃなぁ。ヒェー、あの二人キ、キッスしておるぞ」


「そうだな、キスしてるな。だけどいかがわしい事をしてる訳でも無いし、ただキスしてるだけじゃないか」


うん、キスだけで、いかがわしい事は一切していない。対面に座ってってのは少しビックリしたけど、只それだけの事。


魔王君、キミはアニメや漫画でもっとハードなのを見てるはずだけど、リアルは違うって事かな?

人がキスしてる場面って、生きてたら、外に出ればたまに見る事あるんだが、キミはお外にあんまり出ないから見ないんだね。

お外で、いわゆる路チューって案外見たりするんだよね。観覧車でってのはあまり見ないけど、それは観覧車にしょっちゅう乗っていないからだけど。


うーん魔王君、キミお顔からお手てが完全に離れちゃったね。窓際にお手てを置いて、ガン見しちゃってるね。目がかっぴらいてるけど、ちょっと見過ぎじゃないかな。


おっと、こんな事してたら観覧車が頂点から完全に下がっちゃてたよ。魔王の奴、結局頂点から景色を見て無いよな? これは言わない方が良いかな。


「大胆じゃのう……。こんな所でとは……」


もう後ろの二人が見えなくなるから、席に戻るんですね。キミって欲望に忠実だね。


しかし…… これってこの観覧車に乗ってるカップル達は、キスしてる奴多いのかな? お年寄り達もしてたりするんだろうか? ん?


チラッと後ろのカップルを見ると、女の方と目が合った。何故か俺は会釈をしてしまったが、女の方も目礼して来たが器用だな。

消え行く後ろの箱を見ながらそんな事を思った。


「事実は小説より奇なりとか言うが、本当にそうじゃなぁ……」


「・・・」


魔王君、キミはまだ動揺してるのかな?

キミが言ったのはちょっと意味が違うと思うんだけど。


「ハァ…… 何か疲れてしもうたわい。なぁ悠莉、ご飯はパワーの出る物が食べたい」


お前はこれ以上パワーを付けたら手がつけられなくなるよ。


「あっ! 一番上で景色見るの忘れておった!」


違う事に興味津々だったもんな、まだこっちには居るんだ、また乗れば良い。まぁ何だ、仕方ないよそんな日もあるさ。

明日も投稿します。

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