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第22話 美しき朝


「なぁなぁ、悠莉~」


「うるさいなぁ、やったら良いんだろ?」


「頼む」


「いや、頼むじゃないよ。何でお前は自分で出来ないんだ?」


「仕方ないじゃろ、自分でやったらみすぼらしくなるんじゃから。なーんか自分でやったら髪の毛が三つ編みからピコピコはみ出るんじゃよなぁ」


「・・・」


何がピコピコだよ? 意味が分からん。

それを言うなら、髪がはみ出るだけで良いだろ。


ピコピコって何だよ? もう! 何で俺は朝っぱらから魔王に三つ編みしてやらなきゃならないんだ? おかしいだろ?


そう言えばこの三つ編みって、おさげって言うんだっけ? それとも二つ結び? どっちだったかな? ん?


「おい! お前人に髪させといて化粧か? 良いご身分だな」


「時間の節約じゃ。それにさっきも言ったが、わらわが自分でやると、みすぼらしい三つ編みになるんじゃからしょうがないではないか」


「お前何でなの? 何で男の俺が出来るのに、お前はちゃんと出来ないんだ?」


「そんな事言われてもなぁ。出来ぬ物は出来ぬ。しかしお前上手いよなぁ、綺麗な三つ編みじゃ」


なら努力しろよ。こんなもん慣れだと思うぞ、やらないから益々出来ないだけじゃないのか?

と言うか俺は、お前のお母さんじゃないんだぞ。今のこの光景って、完全にお母さんが子供の髪をしてあげてる図じゃないか。


コイツめ、服だけ着て髪も化粧も全くして無かったから、なーんかおかしいと思ってたが、最初から俺に髪をやらせるつもりだったな?

何だろ? コイツのせいで俺は、日に日に髪を弄くるのが上手くなっていってるよなぁ。


ヘアセットが上手くなって損は無いが、だから? と言われればそれまでなんだよなぁ。

いやまぁ、何時か結婚して子供が生まれたら役に立つだろうけど、今はコイツの専属ヘアメイクでしかないもんな。


「おい悠莉、後ろに引っ張るなよ、化粧がしにくいではないか」


「お前ふざけんな! そんなに引っ張って無いだろ? お前が前のめりになってるからじゃないか」


「フッ……。悠莉よ、前のめりと言うのは、倒れそうな程前に傾いたと言う意味じゃぞ。わらわ倒れそうな程前に傾いておらんわ」


「毎回思うが、何でお前はそんな日本語の意味を知ってるんだよ? ネットか? なぁ? ネットか? と言うかお前、結構前に傾いてるからな」


「仕方ないじゃろ、化粧がしにくいんじゃから。鏡が見にくいんじゃぞ」


「知らんわ。髪か化粧かどっちかにしろ」


「わらわの化粧の邪魔にならぬ様に、髪をすれば良いではないか?」


「お前は本当に良いご身分だよな? 俺はプロじゃ無いんだぞ、そんな器用な真似出来るかよ」


なーにが、化粧の邪魔にならない様にだ、無茶言うなよな。

むしろ俺が言いたい。髪が結びにくいから、そのままじっとしておけと。


それにしてもコイツ……。


「ブファーー」


「うぉい! 何じゃ、どうした? お前何でいきなり吹き出したんじゃ?」


「あー…… スマン、スマン。気管に変な物が入った。ぷふっ……」


「そうか、大丈夫か? なぁ悠莉、お前最後に何か笑っておらんかったか?」


「気のせいだろ? それか俺もしかして、自分の行動で無意識で笑ったのかな? 気にすんな」


「そうか? まぁエエわい、髪頼むぞ」


「うん……」


あーやっべー。咄嗟に誤魔化したが、確かに俺は笑ったよ。だって魔王の顔がおかしかったからな。

何でコイツはアイライン引いてる時って、ブサイクになるんだろ?


アゴを引いて、口を半開きにし、アイラインを引いてる方が白目なのは仕方ないにしても、逆の目はかっぴらいてるし、鼻の穴も軽く開いてる。

コイツこれを無意識の内にやってんだよなぁ。


うん、笑わせ様としてる訳では無いのに、何故おかしいんだろ?

多分だが魔王の天然っぷりと、顔のブサイクさに笑いのツボが刺激されるんだろうなぁ。


ヤベっ! 魔王の奴め更に口の開きが大きくなったぞ。しかも口の形が……。

上唇は右寄りに。下唇は左寄りに……。


笑ったらダメだ、笑ったらダメだ。

もし魔王の顔を見て笑ったのがバレたら、そしたら必ず魔王の奴はギャーギャー言う。

うん、コイツご機嫌損ねたら面倒臭くなるからな。触らぬ神に祟りなし、と……。


それにしてもコイツ、化粧要るか? 別にスッピンでも問題ないと思うんだがなぁ……。

だけどそんな事を言った日には、女心が分かってないとか抜かしやがるし、たまに何故かドヤ顔で言ったりしやがるからな。

うん、朝からイラっとしたくないから、黙って終わらせてしまおう。


うーん。コイツ髪は綺麗だよなぁ。髪は綺麗とか言ったら、それはそれでコイツはギャーギャーうるさい。


髪以外も綺麗じゃろ? だとか何とかうるさいんだよ。褒めてるんだから別に良いだろうに、本当面倒臭い奴だよ。


あっ……。コイツ眉毛の描き足しを……。

だから何でコイツは口が半開きになるんだ?

化粧の最中に変顔しなきゃ出来ないのか?

わざとやってる訳じゃ無いんだろうけど、なんでコイツは化粧中ってブサイクになるんだ?


目薬差す時もブサイクになるが、何でなんだろうな?


「おい、もう終わるけど、お前まだ?」


「後少しで終わる……。悠莉、お前今日どうするんじゃ?」


「どうって?」


「わらわが屋上のゲームコーナーに居る間じゃよ。買い物か?」


「そうだな。地下の食品売場がかなり広いし、充実してるみたいだから、色々買う。周りにもデパートががあるし、そこの地下の食品売場を見たりするつもりだ」


「相変わらずじゃなぁ……。昼は屋上の一階下の食堂街じゃっけ? 大食堂で食べるんじゃな? わらわを迎えに来るんじゃろ?」


「うん、だから昼頃はあんまチョロチョロ動き回るなよ。それと住基カード持ってるな? スマホの充電ももう一度確認しとけよ」


「したわい。何回もうるさいのう……」


「いや、お前は何回も確認しないと忘れるだろ? 迷子とか補導は勘弁してくれよ」


コイツそれでも忘れてやらかすくせ、どの口が言ってんだよ? 俺が最終確認しないと、やらかす奴だからな。

特に住基カードは大事だ。何故ならコイツは見た目がガキだから、補導員に捕まる可能性大なんだぞ。呼び出しは勘弁してほしい。


「分かっとるわ。何回も確認したから大丈夫じゃ、何なら見るか?」


「うん、見る。朝飯食いに行く前にもう一回確認する」


コイツはこうやって普段から言い聞かせて、くどい位に確認してもやらかす奴だもの。当然最終確認の為にやる。


「もう! わらわどれだけ信用が無いんじゃ……」


何回もやらかしてるからだろ。お前に対しての信用とか信頼なんてカケラも無い。

俺だっていちいち言いたくはないし、言わずに済むならどれだけ良い事か。


「おい、終わったぞ。腹減った、早く化粧終わらせてくれ」


やっと終わった。

コイツは無駄に髪が長いから、結構時間が掛かるんだよなぁ。

腰まで伸ばすなよ、ベリーショートにすれば良いのに、この金髪ロン毛魔王め。


「おっ! 良いではないか。うんうん、バッチリじゃな。やはり三つ編みは悠莉じゃ、うむ、ご苦労」


「何がご苦労だよ、お前は何様だ。良いから早くしろよ」


「わらわは魔王様じゃ」


「言うと思ったよ。なぁ、本当に早くしてくれない? あんまり遅くなったら、お前()かすだろ? 俺は朝飯はゆっくり食べたい派なんだ。遅くなったらどうせ、デパートの開店時間が~ とか言ってさっさと出ようとするし、俺はそんなの嫌だぞ」


「分かっとるわい、もう終わるからもう少し待て。大体まだ時間的には問題ないんじゃぞ」


確かに今はまだ早い時間だな。今はな。

だけど時間があるからとダラダラして、結局バタバタする事になる。何時ものパターンだ。


大体がアレが無いとかコレが無いとか、もうちょっと化粧をとか化粧直しとか、まだ時間があるからゆっくりせいとか言って、結局はバタバタする事になるんだからな。


俺は少し余裕を持って行動したいんだ。コイツみたいに寸前でバタバタするのは嫌だ。

あーあ、本当に早くしてくれないかなぁ。だけどあまり急がせたら、逆に時間が掛かるから兼ね合いが難しい。本当に面倒臭い奴だよ。


「おいアレクシア、良い忘れてた、香水は食後にしろよ」


「分かっとるわい。わらわそんなにつけておらぬのに」


「そんでもだよ。つけたては匂いが強いからな。香りが落ち着くまで時間が少し掛かるんだぞ、食後につけろ」


「面倒じゃなぁ……」


どの道お前は普段つけて無いだろ? お出かけする時は妙に気合い入れるんだから。

普段から身嗜みはきっちりすれば良いのに、そしたらポンコツっぷりも多少は薄れるんだが。


まぁ無理だろうな。コイツは根がズボラだから普段からきっちりしてたら、何時か反動でズボラさとポンコツさが増すか? うん、これ以上酷くなったら俺は世話しきれない。


ん? コイツ……。


何故コイツは口紅を引く、いや、塗る? 時におちょぼ口になるんだ? あー、確認してるのか? 最終チェックでおちょぼ口になってただけか。


しかし……。コイツ本当に笑わせに来て無いのか? 確認の為に交互におちょぼ口とイーっとなる口…… ダメだ笑うな、笑ったら絶対ややこしい事になる。


おいおい、鼻の穴が微妙~に膨らんでるぞ、又か? お前は何で微妙に鼻の穴を膨らませる?

鏡を見下ろす様にするその姿。自分でその姿に違和感は無いのか? 良しじゃないよ、笑わせるつもりが無いなら、普通に化粧しろよ……。


こんの野郎、いや、女郎(めろう)め。

何がわらわ可愛いだ? 変顔を止めろ、笑っちゃうだろ? 化粧するその姿だけでもヤバいのに、台詞つきは本当に止めろ。笑っちゃうじゃないかよ。


「三つ編みも化粧もバッチリじゃな」


何がバッチリだよ、お前普段は髪は下ろしてるし、セットのセの字も無いだろ。それに化粧も全くしないクセしやがって。

何だろう? さっきまでの笑いと言うか、おかしさが無くなったぞ。

まぁ良いや、終わったならさっさと飯食いに行こう。


「アレクシア、もう良いな? 終わったなら持ち物の最終確認して、朝飯食いに行こう」


「そうじゃな、行こうか。しかしわらわ可愛いのう、絶世の美少女じゃ」


「・・・」


俺はつっこまんぞ。


~~~


「なぁ、ふと思ったんだけど。今から飯食いに行くのに、口紅塗っても意味ないんじゃ無いか? 食い終わったらまた口紅塗るんだろ? 食後に塗れば良かったんじゃないか?」


「何を言う、嗜みじゃ嗜み。口紅を差すのは女の嗜みじゃぞ」


「・・・」


毎度思うがつっこみ待ちか? 普段化粧なんてちっともやらないクセ、どの口が言ってんだ?

本当コイツは、お出かけしたら、ここぞとばかりに無駄に化粧するよな? 別に良いんだけど。


一応は口紅だけか? グロスは塗らないのかな?

化粧って手順が面倒だよなぁ、グロスを先に塗って次に口紅とか。口紅を先に塗って次にグロスとか、ちょっとした違いを出す為に手順が違ったりして、訳が分からなくなる。

女って大変だよな、俺には無理だ。男で良かったよ。


「どうした? わらわをみつめて? ははぁーん、さてはわらわの美少女っぷりに見とれておったな」


「お前は朝っぱらから幸せそうだな。そんな事よりさっさと行くぞ、ここの朝ビュッフェは結構評判が良いみたいだからな」


このホテルの朝ビュッフェは五千円也だからな、ちょっとは期待してしまう。とは言え宿泊客は四千円に割引されてるが、それでも高い。

四大都市では朝ビュッフェが八千円とかってあるし、五千円ならちょっと高いが、そう珍しくはないが、地方都市ではちょっと珍しい。


都会は高いもんなぁ。

一万三千円の朝ビュッフェってのもあるし。

旅行で泊まる事でもないと、中々行こうって気にはならないな。


「お前褒めろよ、せっかくオシャレしたのに。あーあ、オシャレしがいが無いなぁ。わらわ気合い入れてオシャレしたんじゃがなぁ~」


「普段からやれよ。お前は普段が普段だからなぁ」


「じゃからこそじゃ、たまに気合い入れてオシャレした時こそ褒めぬか。女心が分からぬ奴じゃ」


もうつっこまんからな。と言うかお前は今、ロリになっている事を忘れてないか?

元の姿に戻って、そんでオシャレしたらちっとは褒めてやるよ。

だがコイツは、サキュバスの方が慎み持ってるだろ? って格好してたクセ、どの口が言うんだろうな? まぁ良い、コイツにいちいちつっこんでたらキリが無い。

それにコイツは褒めたら調子にのるから、あまり褒めたくない。

調子にのったら面倒臭い奴になるから、放置一択が正しい。おっと! 到着かな?


「ここか? おっ! 中々どうして、良い感じのビュッフェだな」


「雰囲気あるのう。いい匂いが……。食欲を刺激するではないか」


「ここってネットで見た時、全体的に美味そうだったが、オムレツが特に美味そうだったんだよなぁ。目の前で焼いてくれて、そんで見た目も綺麗で、ふんわりと焼けたオムレツが美味そうに見えたんだ。楽しみだよ」


「エエな、わらわもオムレツは絶対食べる」


「フレンチトーストも有名みたいだな、後ホットケーキな」


うちではパンケーキと言わず、ホットケーキって言ってたから、パンケーキって何か違和感があるんだよなぁ。

これって家庭によって言い方が違うから、激論になったりするので、気を付けないと割と揉める。

言い方なんて人それぞれだから、揉めなくてもいいのにって、昔は思ってたなぁ。

食は(こだわ)りがある奴が多いから、仕方ないとはいえ、アレって何であそこまで拘るんだろ?


「なぁ悠莉、席はここでエエか?」


「ん? 良いんじゃないか。おっ、ここからも城が見えるな。街並みも見えるし、城も見える窓際の良い席なのに、何で空いてるんだ?」


「丁度食べ終わった者と、入れ替わりになったみたいじゃな。タイミングが良かったんじゃろ」


あーそうか、タイミングが良かったのか。

こんだけ混んでるのに、運が良いな。幸先良い。

一日の始まりがこうだと、一日が良い日になりそうな気がするな。




「こんなもんか? あとはオムレツだけか。それにしてもお前、取りすぎじゃないか? 足りなかったら又取りに行けば良いのに」


「又取りに行くのは面倒じゃ」


「出来立てとか、温かいのを食べられるのに。知らないぞ、食べきれなくても」


「大丈夫じゃ」


本当かぁ~? 朝食ビュッフェやバイキングあるあるだが、取り過ぎて食えなくなるのはある意味お約束だからな。

欲張って取って、食えなくなるとか良く見る光景だぞ。


大量に残すとか止めてくれよな。まるで俺がコイツに、何も食わせてないみたいに思われるからな。それにお行儀も悪いし。


「俺プレーンとチーズにするけど、お前は?」


「うーん……。全入れ?」


「言うと思ったよ」


確かに具材は好きに選べるぞ、だけど具材を全部ってお前……。

具材全部だと味が混ざってどうなんだ? 美味いのか? でも高級ホテルだもんなぁ、不味い事はないかな。


まぁいいや、俺はシンプルにプレーンを最初に食べる。プレーンが一番美味いって言うもんな。


「おいアレクシア行こ」


「うん、なぁ悠莉、オムレツ美味しそうじゃなぁ」


具材は中に入れるタイプのオムレツか。

見た目だけなら俺のとそう変わらない。パッと見ただのプレーンオムレツに見えるが、コイツのはオムレツの欲張りセットだからな。


具材全部入れって子供かよ? 別に良いんだけど。

しかしコイツのオムレツでっかいなぁ……。俺のオムレツの倍近い大きさぞ。本当に食いきれるのか? 気のせいか俺がコイツの食べ切れなかったのを、食わないといけない気がするんだけど? 嫌な未来予想図だなぁ。


コイツ昨日ステーキ大食いしてたし、ましてや欲張って色々皿に盛ってたから、多分俺がコイツのを食わないといけないんだろうな。

初日だから俺もあまりうるさく言わないけど、もし食いきれなかったら明日からは、ちゃんと止めよう。


「おっほ~ 美味しそうじゃなぁ」


「よし食おう、いただきます」


まずはオムレツからだな。プレーンオムレツのお味はと。


「おっ! プレーンオムレツうめ~。シンプルだけど卵の味が際立ってるな。バターの風味も良い、美味いな」


「コレも色んな味が混ざって美味しい。わらわこのオムレツ好き」


お前の混ざりすぎだと思うぞ。そんだけ具材が入ってたら、カオスだよカオス。

スパニッシュオムレツより具材が入ってるんじゃないか?


「良いな、卵も良いのを使ってるのかな? プレーンオムレツ美味い。当たりだ、大当たりだ」


「・・・」


「これ、俺が同じ具材と、調理器具使っても同じ物が作れないな。何だろう? やっぱ火加減かな? 香ばしさはあるけど、バターの風味に焦げ臭さが一切無いんだよなぁ。バター本来の香りそのまま上手く焼いてるよな? 卵の火加減も絶妙だし、卵はシンプルだから腕によって違いが分かるか。確かにそうだよ、コレ食ったら分かるわ。美味いなぁ」


「なっ、なぁ……」


「おーっ、チーズオムレツも良いぞ~。こっちも火加減が絶妙だ。チーズの風味も最高だな。良いなぁ、最高だよ」


「なぁ、悠莉?」


コイツさっきから何だ? 気のせいかおねだりする時の顔してるよな?


「どうした?」


「あのな、あのな、わらわにもそれ一口くれぬか?」


「お前は何で毎度毎度俺が食ってる物を欲しがる? 何でお前は俺のを食いたがるの?」


「だってだって、悠莉の美味しそうなんじゃもん」


何がだってだ? もんじゃねーよ。

美味しそう? 美味いよ。

シンプルだけどそれだけに卵の味が、素材の素晴らしさが良く分かる逸品だ。

料理人の腕も良いんだろうが、素材自体も凄く良い物を使ってるんだろうな。


それにしても……。俺のを一口って間接キッス、小学生の頃なら結婚しなきゃとか言われるんだぞ。

とは言え今更だがな。コイツも俺もお互いそんな事をいちいち気にしない程度には、一緒に居るし、間接キッスとかそんな事を気にしない歳だ。


ましてやお互い一緒に居るのが当たり前になってるし、俺もコイツの食いかけ飲みかけは、当たり前の様に口に出来る。それはコイツにも言える事だ。

だからと言って、俺が食ってる物を食いたがるのとは話が別問題。


「今日はアホみたいに欲張って皿に盛ってるから無理かも知れないけど、明日の朝に食えば良いだろ?」


「えー……、わらわ今日食べたい。なっ、一口だけ」


このクソロリ金髪……。コレって一口やらなきゃ収まらないパターンか? 欲張って具材全部入れにするからだ。

どうせ一週間位ここに泊まるんだから、毎朝少しづつ具材を増やしていけばいい物を、それなのに初日から全入れしやがって。


どうする? これってやらないと、新たに取りに行くかも知れないな。

今でさえ食いきれるのかって位に持って来てる。

これ以上新たに追加しやがったら間違いなく、俺がコイツの残した物を食べなきゃならなくなるだろう。

ビュッフェとかバイキングの食べ放題で残すなど、非常~によろしくない。と言うかお行儀悪いし、食材を無駄にするのは俺は大嫌いだ。


この欲張り魔王めが。仕方ない、一口食えばコイツも納得するか。


「お前一口分だけだぞ」


「やった~。分かっておる」


「おーい! アレクシア、お前、俺は一口分だけって言ったよな? それなのに何ガバッと取ってんだ?」


「良いではないか、わらわにとってこれは一口じゃ」


何が一口だよ? 又だよ、又コイツやりやがった。お前の一口はそんなにデカイのか? 毎回、毎回コイツは……。


「おい、このオムレツはふわふわになる様に焼いてるんだぞ。それなのにそんなに取ったら、自分の皿に運ぶまでに間違いなく落とすぞ、良いのか? 悪い事は言わん、もう少し小さく切った方が良いぞ」


「ふふん、わらわの叡智を侮るでない。お前のオムレツの皿を、わらわのオムレツのある皿の所に持ってきて、わらわの皿の空いたスペースに入れたら良いんじゃ」


コイツ、ちっとは考えてるな。確かにそれならオムレツを途中で落とす事は無いか。

だがアレクシア君、食べ過ぎて昼飯があまり食えなくなると言う事を考えているのかな?


昼は君が楽しみにしてた、デパートの大食堂で食べるのだが忘れていないか?

まぁ良いだろう、今日の昼には分かる事だ。そうなれば明日からは少しは控えるだろう。


「美味しいなぁコレ。わらわも明日の朝はコレにする。明日はプレーンとチーズのオムレツにしてみようかな」


お前は明日の朝食より、今日のその大量の朝食を何とかしろ。


「ここのホテルのご飯美味しいなぁ」


デパートの大食堂で食べる昼食も美味しいと良いな。

腹いっぱいの状態で食べる昼ご飯が美味しいかは、神のみぞ知るだな。

明日も投稿します。

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