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第20話 魔王アレクシアの尊厳


「なあ、まだか?」


「もうちょっとだよ、まさかもう無理なのか?」


「既に無理じゃ、わらわの尊厳の為にも急ぐのじゃ悠莉」


「無茶言うな、スピード違反になるだろ。だからさっき行っとけば良かったんだ、それなのにお前は」


「仕方ないじゃろ、まだ大丈夫じゃと思ってたんじゃ。大体じゃな、お前がもう着くとか言っておったからわらわもまぁエエかと思ったんじゃぞ」


「知らんわ! 俺は行っとくか? って聞いたよな? それなのにお前が大丈夫って言ったんだろ? 無茶苦茶言うな」


コイツめが…… 確かに俺はもう直ぐ高速を降りると言ったぞ、後ちょっとで到着するって言ったけど、次のパーキングエリアでトイレ行くかとも聞いたのに、それなのにコイツと来たら……。


もう! 面倒臭い奴だなコイツは。何で過ぎてから行きたい何て言うんだ? 子供か? いや、子供の方が遥かにマシだよ、まだコイツより聞き分けは良い、間違いないな。


「早く~ 漏れる~ わらわの尊厳がぁ~」


「・・・」


何が尊厳だよ? お前にそんな御大層な物があるのか? 尊厳って意味を分かって言ってるのかコイツは?


「なぁ悠莉~ まだ~」


「もうちょっとだよ。確か次はパーキングエリア…… サービスエリアだったかな? とにかくもう直ぐだから我慢しろ。大体だな、あんだけガバガバ飲んでたらそらそうなるわ、だから言ったのに」


「う~~。だってだって、美味しそうじゃったんだもん、仕方ないではないか」


「だってじゃねーよ。もう……。お前漏らすなよ、シートが汚れる。もし漏らしたら、これからお前の事を、うれション魔王って言ってやるからな」


「止めい! 誰がうれションじゃ? わらわは犬か? お前レディに向かって何と言う事を……。お前は本当に女の扱いがなっておらぬな」


「何がレディだ? お前意味分かって言ってんのか? それより本当に漏らすなよ、後ちょっとだから我慢しろ」


もし漏らしやがったら、シートを全替えしなきゃならなくなる。それは勘弁して欲しい。

しかし…… 魔王の奴、脂汗かいてるな。あんだけ飲み食いしたらそらそうなるわな。さっきもご当地アイス食ってたし、水分、水気のある物を摂りすぎだよ。


「早く~ わらわの、わらわの尊厳がぁ」


「・・・」


コイツもうオムツでもしておけば良いのに。


~~~


「おい、早く車を停めろよ」


「いや、混んでるんだよ、見て分かるだろ。それと俺もトイレに行くから、トイレ前で待っとけよ、出たらその辺ちょろちょと動き回らず、ちゃんとトイレ前で大人しく待機するんだぞ」


「分かったから早く車を停めてくれ、早く~」


「分かったよ、おっ、あそこ空いてるな」


「おい! 何か建物まで遠くないか?」


「仕方ないだろ、混んでるんだから」


何でこの時間にこんなに混んでるんだろ? もしかしてココって、有名なサービスエリアなのかな?


「おいアレクシア、急いで転ぶなよ。あっ、お前バッグを忘れてるぞ、ちゃんと持ってけ」


「もう! 急いでおるのに」


コイツ停まって即車から出やがった。どんだけ切羽詰まってるんだ? 慌てて走って、転んで漏らしたりしないよな?


「トイレ何処ぉ~?」


「一緒に行くぞ。あーあ、走らないといけないのか」


「悠莉早く~ 何処じゃ? トイレ……」


多分建物の端か真ん中だろうな。しかし人が多いな、車も駐車場に停まりまくってるし。何だろう、トイレも混んでそうな気がするなぁ。


「おいアレクシア、あの端のアレ多分トイレじゃないか?」


「ああ…… やっとじゃ」


魔王の奴ダッシュで行きやがった。焦らずとももう大丈夫だろうに。


「何で混んでおるの~?」


うーん、やっぱりか。外からは並んで居ない様に見えるけど、中は並びがあるんだろうなぁ。

それにしても魔王の奴、どんだけデカイ声で叫んでるんだ? 外にも聞こえる位デカイ声で……。

アイツ、本当に漏らしたりしないよな? 何か心配になって来たぞ。


~~~


魔王の奴遅いな? そんなに混んでたのかな? この車の停まり具合から見るに、トイレの中は結構混んでる可能性大だな。男子トイレは混んで無かったけど、女子はなぁ。おっ、やっと出てきた。


「遅かったな、中そんなに混んでたのか?」


「入り口から直ぐに待ちがあったわ。危ない所であった、かなり際どかったぞ」


そんであんなに大きな声が聞こえて来たのか。入り口付近まで混んでるってどんだけだよ? 女子トイレは何で混むんだろう。


「あんまりにも遅かったから、大きな方もしてるかと思ったぞ」


「違うわい、わらわ小さな方しかしておらんわ。中がもの凄く混んでただけじゃ。お前はデリカシーが無いのう……」


何がデリカシーだよ……。ただ単にお前の事を、手の掛かる子供って思ってるだけだよ。もしくは面倒臭い女って思ってるだけだ。


「なぁなぁ、アレ……」


「ん? 屋台? いや、キッチンカーか」


「なぁ悠莉、わらわアレ食べたい」


「お前まだ食うの? 夕飯食えなくなるぞ」


「だってだってアサリパウダーのフライドポテトじゃぞ、それに超ド級ロングフランクフルトじゃぞ」


アサリパウダーのフライドポテト? 何だそりゃ? フランクフルトは長さ三十センチ? デカ過ぎだろ。

それにしても屋台とか、キッチンカーが多いな。もしかしてこれがココの名物なのかな? 建物横の一角が、丸々屋台村みたいになってるじゃないか。もしかして逆側も、屋台村みたいになってるのかも知れない。

一角とは言え、結構なスペースを屋台村らしき物が占めてる。


「ちょっとだけ、なっ、ちゃんとだけ、本当にちょっとだけじゃから」


「お前エロ親父みたいな言い方を……」


ん? 何でコイツは近寄って来る?


「なぁ悠莉、耳を貸してくれ。あのな、今食べずとも、アイテムボックスの中に入れたらエエんじゃ。なっ、そしたら大丈夫じゃろ? わらわ今、アサリパウダーの一つ食べたらエエし、アイテムボックスの中に入れておけば後で食べられるし、それなら夕飯も食べられるしの」


知恵を働かせやがったな。確かにそれなら問題無い。それに車内に入ってサッと、アイテムボックスの中に入れたら問題無い。但しコイツが食べ過ぎないって大前提がある訳だが。


「お前そんな事を言って、つい食べ過ぎたとかってオチにならないだろうな?」


「ポテトは一つしか食べぬ。フランクフルトは今では無く、後で家に帰ってから食べるし大丈夫じゃ。それにわらわ夕飯は、ステーキ食べたいから控える。それにじゃ、大量に買ってアイテムボックスの中にストックしておけばエエではないか」


「・・・」


いらん知恵を付けやがって……。


「なっ、エエじゃろ?」


「良いけど、向こうに着く時間が遅れるぞ? せっかく予定より早く着いたのに。向こうで下見がてらデパートに行けなくなっちゃうぞ」


「大丈夫じゃって、まだまだ時間的には早いからの、なぁエエじゃろ?」


仕方ないか。もし食いやがったら、コイツは夕飯を食べる事が出来ないだろう、自業自得だ。

それに旅行なんだ、多少は寄り道も必要だし、ちょっとしたトラブルも旅の楽しみでもある。まぁ良いか。


~~~


「おい、もう少し食いたいんだろうが、食ったら夕飯食べられなくなるぞ」


「分かっておる、だかアサリパウダーのフライドポテト美味しかったなぁ」


「だな、意外と美味かったな。でも夕飯の事を考えると食い過ぎになる、我慢しろ。なぁアレクシア、名残惜しそうにするな、アイテムボックスから出したいって顔してるぞ」


「美味しかったから。じゃが後の楽しみにしておこうかの。なぁ、次で降りるんじゃな?」


「そうだな。って、言ってる間に降り口だ」


やっとか、久々だなこんなに運転したのは。


「なぁなぁ悠莉、何かパッとせぬ街並みじゃな」


「一応市内だけどまだ街中じゃ無いからな。とは言え市街地も、あんまり栄えてるとは言い難いみたいだけど」


地方都市なんてそんなもんだ。四大都市や、一部都市を除いて何処も同じ様な街並みだしな。ただ城下町だと少し(おもむき)があって、栄えては無いが中々良い感じの雰囲気になるけど。


「デパートに行くのが目的じゃから、別に市街地が栄えてようが、栄えて無かろうが別にエエがな」


「そうだな、だけど今から行く所は城下町だし、繁華街に入ると、結構雰囲気があるみたいだ。それと、デパートから城が見えるらしいがそれも名物みたいだな。何なら城も見物に行くか? 名城って評判だぞ」


「城? 別にエエわい。城なんぞ見飽きてるし、ココとは違うとこじゃが前に一回行ったしの。日本の城はもうエエかな」


城なんざ攻めるか守るモンだからな、いちいち見に行く物では無いか。

と言っても俺は行くけどな、どうせ魔王の奴はデパートに入り浸りだろうし、ブラブラするついでに見に行く。何故なら日本人は、城があったらつい見に行く人種だもの。ん?


「あっ! こらアレクシア、お前バックミラーを動かそうとするな! 運転中は危ないから止めい。何度言ったら分かるんだ?」


「違うわい! ちょっと見ようと思っただけじゃ。動かす訳無かろう? わらわを何だと思っておる」


何だと思ってるだと? 何度も同じ過ちを繰り返す、ダメ女だよ。もしくは反省しない女だな。


「あっ! おいこら! お前邪魔、走行中に座席から身を乗り出すな、シートベルトを外すな」


「バカめ! シートベルトは外しておらぬわ! ビローンとなっておるが、ちゃんとしておるわ」


「いや、一緒だよ! 座れ、邪魔。何でお前は毎回、バックミラーで身嗜みチェックするんだ? 座席に付いてるサンバイザーにも鏡は付いてるだろ」


「小さいから見辛いと何度も言っておろう? 何度も同じ事を言わせるで無い!」


「何で俺は逆ギレされてんだ? もう! 良いから座れ、邪魔、危ない。後ろが見辛いだろ、とにかく座れ」


「もう……。身嗜みチェックが出来んではないか」


「いや、お前本当にダメだからな。走行中に立ち上がるな、大人しく座ってろ」


コイツ何度も何度も……。走行中は危ないから大人しくしてろって何時も言ってんのに、それなのにこのアンポンタンめが。子供か? 今時そんな危ない事、幼稚園の子供でもやらないぞ。もう!


「もう…… その鏡が一番見やすいのに…… もう!」


「お前ブツブツ煩いなぁ」


「ブツブツブツブツ」


「だから口で言うな。なぁ、お前走行中にあんな事して、そんでバランス崩して()けて、その衝撃でお漏らししたらどうするんだ? 何時か本当に漏らす事になるぞ」


「なるかぁ! わらわ子供では無いぞ、失礼な奴じゃな」


いや、冗談では無く本当に何時かやらかしそうなんだけど? さっきも漏らしそうになって尊厳が、尊厳が、って言ってたクセして説得力が無いんだよ。


「もうお前オムツしとけよ」


「する訳無かろう。お前何言っておるんじゃ? 大体じゃな、わらわ流石に漏らしたりせぬわ。お前のその発言は、失礼を通り越して呆れしか無いのう」


「なぁアレクシア、お前フラグって言葉知ってるか?」


止めてくれよ本当に。もし俺が言った通りの事になったら、引くわ~。流石にそんなんでお漏らししたら笑えない、うん、普通に引くな。


「止めい! 何と不穏な事を……。もしそうなったらどうしてくれるんじゃ? そんな事を言うのは本当に止めい。そんな事になったらわらわ嫁に行けなくなるではないか……」


「心配しなくても、今のお前じゃ嫁に何か行けないよ。もし元の姿に戻ったとしても、お前みたいなズボラでポンコツ女を嫁に貰う奇特な奴は居ないよ。夢見るのは寝てから言え、な。まだ寝る時間じゃ無いぞ」


「何だとぉ! 誰がズボラじゃ? 誰がポンコツじゃ? 確かに今のこの姿では無理かも知れぬが、元の姿に戻ったら引く手数多じゃ。本当にお前は失礼な奴じゃな。本当に本当~に! 女の扱いがなっておらぬ。レディに対して何たる事を……」


何がレディだ? 突っ込まないからな、このアンポンタンが。コイツの恐ろしい所は、自分がズボラでポンコツだって自覚が一切無いトコだな。己れを知れ、己れを。


何と言うか、自覚無しはタチが悪いって良く言うけど、自覚無しってある意味無敵だよなぁ。


「悠莉、お前聞いておるか?」


「聞いてる聞いてる」


「お前絶対聞いておらんだろう? とにかく止めい、言うで無いぞ。フラグになったら大変じゃ。そんな事になったら嫁に行けぬ。もしお前の目の前でそんな事になったら、本当に嫁に行けぬ。そんな事になったら責任取って、お前に嫁に貰って貰わねば、ならぬではないか。勘弁してくれ」


「こっちのセリフだよ。俺が勘弁して欲しいわ。何が悲しくってお前みたいなちんちくりんを嫁に貰わなきゃならないんだ? 俺の好みはシ●マ様なんだよ。お前みたいなちんちくりんのポンコツズボラ女はゴメンだね。しかもお漏らしした女? 断固拒否する」


「はぁ? わらわ可愛いじゃろ? 大体なんじゃ? シ●マ? あんなの只のババアではないか。それにまだ漏らしておらぬわ!」



はぁ? コイツ今なんて言った? はぁ? ババア?


「お前コラ…… 今何つった? 俺のシ●マ様がババア? お前…… 自分で言ってる意味分かってんだろうな? それにお前が可愛い? ハッ! お前が可愛いのは声だけだろ? 己れを知れ、己れを。それとシ●マ様はババアじゃ無い! 大人な女なだけだ。 お前マジで修正してやろうか?」


このポンコツ改造ロリめが! 言うに事欠いて俺のシ●マ様をババアだと? マジで万死に値するな。


「何だとぉ! 誰が声が可愛いだけじゃ? それとババアをババアといって何が悪い? シ●マはババアじゃろうが?」


「様を付けろやこのデコ助野郎が! シ●マ様だ、様を付けろ。それにババア言うな」


何呼び捨てにしてくれちゃってんだ? しかもババア呼ばわり? コイツ本当に修正してろうか?


「何が様じゃ? シ●マはシ●マじゃろうが。そんな事言ったら、わらわ魔王様じゃぞ。それにババアも事実ではないか?」


「お前…… 又言ったな? しかもババアとも言ったな? お前…… シ●マ様は俺の嫁だぞ。貴様…… 水分たっぷり摂取させて、膀胱押しまくってやろうか?」


「アホかぁ! そんな事されたら、本当にシャレにならぬではないか! 冗談抜きで漏れてしまうわ。それにお前、それセクハラって言うんじゃぞ。本当にやるなよ、フリとかでは無く、本当に止めい」


何がセクハラだ? 言葉の意味分かって言ってるのかな? お前みたいなちんちくりんに対してはセクハラでは無く、教育って言うんだよ。


「お前黙るなよ。本当に止めろよ」


「フッ……」


「鼻で笑ったな? おい、不安になるから止めい」


精々不安になっていろ。震えて眠れ! シ●マ様をババア呼び、及び、呼び捨てにする等ふざけた事を抜かしたんだ。本当にやってやろうか? うん、糸を使ってやればセクハラにはなるまい。そうだな、直接触らなければOKだろう?


糸で拘束し、糸で膀胱を押せば全く問題無いな。そうだな、それならセクハラでは無い、うん、カケラも問題無い。

俺のシ●マ様をババア呼び等と侮辱しやかったんだ、当然の報いだね。


「ちょっ! 悠莉、お前本当にやるなよ、いや、本当に。流石にそれはシャレにならんぞ」


「何だ? ならお前のお腹に魔法を、極大魔法を、ゼロ距離射撃の方が良いのか?」


「アホか、そんな事されたらわらわ爆散するではないか!」


「俺のシ●マ様を侮辱した罰だ。アレクシアよ、星の屑となれ!」


「何が星の屑になれじゃ? そんな事になったら、わらわ死んでしまうわい」


「・・・」


「だからそこで黙るなよ! 何かわらわ本当に不安になって来たぞ」


チッ……。 俺のシ●マ様を……。

シ●マ様がいかに、素晴らしい方かと言うのを、教育してやらなければならないな。

そして悲劇のヒロインだと言うのも、コイツには、分からせてやらないといけない。

どれだけ悲しみを背負っているか、どれだけ良い女かを教育してやる!


~~~


「分かったから、分かったからもう……。お前たま~に面倒臭くなるのう……」


「誰が面倒臭いだ? 良いかアレクシア。シ●マ様は、幸せにならなければいけないんだ。俺がもしあの世界に転生したら必ず、そう、必ず! 俺がシ●マ様を幸せにする。そして嫁にする。シ●マ様は救われなければならない(ひと)なんだぞ」


「分かったから。もう…… 勘弁してくれ……」


コイツ…… うんざりした顔しやがって。

本当にけしからん奴だよ、俺のお嫁ちゃんをババア呼ばわりしやがって。シー◯様は大人な女なだけであり、決してババアでは無い。


そう、シ●マ様は大人の魅力溢れた素敵な(ひと)だ。ババア呼ばわりする奴はぶたなければならない。


「おい、極大魔法をゼロ距離で撃ち込むのは、本当にやめろよ、シャレにならん」


「俺の極大魔法、それも広域殲滅極大魔法は、魔力を練るのに時間が掛かる。只の極大魔法なら、お前なら防げるだろ?」


「おい、お前なぁ……。悠莉、お前の只の極大魔法は防げても、痛いではないか、勘弁してくれ……。それと広域殲滅極大魔法? 確かに魔力を練るのに時間が掛かるが、お前も魔法を発動させてると、相手に全く感じさせ無いじゃろ? 大体じゃなそれ以前の問題として、魔力自体を練っておると分からない以上、いつ何時(なんどき)魔法を撃ち込まれるか分からんではないか。お前、魔力を全く感じさせないし、しかも無詠唱でいきなり使われてみろ? そんなの防げん可能性大じゃぞ」


「魔力の隠蔽や、魔力自体を感じさせ無いなんて基本中の基本だぞ。魔法の発動、いや、魔力を練るのが相手に分かったら、今から魔法を使いますって言ってる様なもんじゃないか。それにそんな事言い始めたら、お前だって出来るだろ? ビックリしたんだぞ、お前が俺と同じ様に魔力や、魔法の発動自体を感じさせず、いきなり撃ち込んで来た時は、本当にビックリしたんだからな」


「そりゃのう。わらわこれでも魔王と呼ばれておったんじゃ、出来ん訳が無い。とは言えかなり苦労したし、出来る様になるまで大変じゃったがな」


コイツめ、俺が使うのを見ただけで覚えるって、どんだけだよ? コイツも大概だよな。伊達に魔王だった訳ではないって事か。


「あの世界でも、魔力自体を感じさせず、魔法の発動を一切感じさせずに出来る奴なんて、数える位しか居ないのに、何でお前みたいなポンコツが……」


「ポンコツ言うな。それを言い始めたらお前なんぞ、魔法自体が無い世界から来て、出来ておるではないか? お前のあの不可視の糸、アレわらわ初めて受けた時、あの時は本当に死ぬかと思ったんじゃからな。助かったのは、運が良かっただけの事、只それだけの事じゃ」


うん、俺も生き残るのに必死だった、だから色々頑張った。そして俺の不可視の糸は、魔力、魔法発動の完全隠蔽の応用だからな。

だが運が良かったとは言え、まさかコイツに防がれるとは思ってもみなかった。


運も実力の内、確かにそうだよ。

生き残る奴ってのは、実力だけじゃダメだ。運ってのも必要だって、あの世界で良く分かったし、実感した。


俺が今こうして、無事日本に帰って来れたのは、運が良かったってのもある。

そして魔王の奴も生き残り、こうして日本に来て、今俺と旅行出来てるのも運が良かったからだ。お互い運が悪かったら、間違いなく死んでた。


しかし……。まさか俺が魔王と一緒に住んで、一緒に生活を共にし、しかも二人で旅行に行くなんて人生分からん物だよ。


「なぁなぁ悠莉? もうホテルに着く?」


「そろそろだと思うけど何で?」


「わらわお手洗いに行きたい……」


「お前また? さっき行ったばっかなのに」


「仕方ないじゃろ! 何か不味いかも……。なぁ急いでくれ、わらわの尊厳の為にも急ぐのじゃ」


「スピード違反で捕まるわ。もう! コンビニがあったら停まるから、そこで行け」


「早く~ だけど綺麗なトイレがある所じゃぞ。わらわ綺麗なトコでないとイヤじゃ~」


「・・・」


コンビニのトイレは、ほとんどが綺麗な所が多いよ。数時間事に定期的に掃除してるから、結構綺麗なトコが多いんだ。しかし……。


コイツもう本当にオムツしたら良いのに……。


20時と22時にも投稿します。

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