第18話 ラウンド菓子と夢の世界
「なぁなぁ悠莉? ちょっとエエか?」
「・・・」
コイツが家の中で俺の事を悠莉呼びする時って、基本的にロクでもない事、場合が多い。
多分だがこの顔は、何か買って欲しいとか、何かのおねだりする時の顔だ。何をねだるつもりだ?
「なぁなぁ、聞いておる?」
「聞いてるよ、で? なに?」
「あのな、あのな……。コレ見て欲しいんじゃが、わらわな、ココに行ってみたいんじゃけど……」
思わずマジマジと魔王を見てしまった。コイツがお出かけをねだる? それもゲーム関係とか、服関係を買いに行くのでは無く、それ以外の外出を? ノーパソの画面を見る限り、ゲームや服では無いみたいだけど、魔王の奴ドコに行きたいんだ?
「ん? お菓子タワー? 何だこりゃ?」
「うん、デパートにな、地方のデパートなんじゃが、お菓子売り場があってじゃな」
「あー、コレお菓子がいっぱい載ってて、回転するやつか? へえ~ まだあるんだ? 子供の頃、じいちゃんとばあちゃんに連れて行って貰ったなぁ。でも俺が中学生位の時には無くなってたっけか? それにココの何かでっかくない? 俺が子供の頃にあったのって、コレより小さかったし、何かボロかったけど…… 写真写りかな? 何か綺麗に見えるし、台も大きく見える」
「コレな、このお菓子が回ってる台って、ラウンド菓子って言うらしいんじゃが、今はGramって言うんじゃがな。この売り場の為に新しく作ったみたいでの、何でもココのは日本一大きな機械らしいんじゃ。それと……」
魔王の奴、パソコンの扱いが俺より上手くないか? ん? このノーパソやけに綺麗だな? コイツめ、パソコンとかゲームは綺麗に大事にしてるんだよなぁ……、それなら身の回りも常に綺麗にしろよ……。
「なぁなぁコレ見てくれ」
「へえ~ 回る機械って一つじゃ無いんだ? 結構いっぱいあるな? 大小…… いや、中位の大きさのもあるんだ」
「うん、何か数も結構あって、機械も色んな大きさのがあるみたいでな、ラウンド菓子の機械が日本一あって、売り場の広さも日本一らしいんじゃよ」
「しかしこのラウンド菓子だっけ? 今はgramか? この台大き過ぎないか? こんなに大きかったら子供は上の取れないだろ? ちょっと待て、コレ大人でも上の方取れなくない?」
どんだけだよ、高過ぎて上の方のお菓子取れない位高いぞ。乗り台は…… 子供用ってより大人用なのかな? 違うな、子供用と大人用の乗り台? いや、踏み台って言うんだっけか? 大人用と子供用の両方あるな。
危なくないか? 台…… ラウンド菓子? グラムか? 何かゴロが悪いと言うか、しっくり来ないな、うん、ラウンド菓子ってのがしっくりくる。しかしコレ、高さ何メーターあるんだよ、このラウンド菓子……。
見せ台ってのかな? 客寄せでこんなに大きなのを作ったのかも知れないな。基本的に中位のと、小さ目? 俺が子供の頃に見た大きさのがメインなのかも知れない。それにしても……。
「なぁ、コレってネットサーフィンして見つけたの?」
「いや、昨日お前がお風呂に入ってる時にテレビでやっておってな、それで気になってスマホで調べて、で、寝る前に部屋のパソコンで調べた」
「お前又夜更かししたな? リビングで調べたら俺に怒られると思って、ここのノーパソじゃ無く、部屋のパソコンで調べたんだろ?」
「だって気になったんじゃから仕方ないではないか」
コイツ……、リビングで夜更かししたら怒られるからって、部屋のパソコン使って調べて、結局夜更かししてるじゃないか。仕方ない奴だよ。
「で? ココに行きたいと?」
「うん、それにな、ココのデパートって屋上にゲームコーナーがあって、ゲームの筐体とか、十円ゲームとか色々あるみたいなんじゃ。ゲームも懐かしゲームとかあってじゃな、十円ゲームも、二十円とか三十円とかの十円玉で出来る懐かしゲームと言うか、自分の手を使ってやるのが色々あるみたいなんじゃ。ゲーム機の筐体も懐かしのレトロゲームってのが色々あるみたいでの、それで、それで……」
「レトロゲームなぁ。それにしてもこんな古いの良く残ってたな? しかも数も凄いじゃないか」
「何か日本中から集めて、レストアってのしたみたいじゃの。全部綺麗にしたり、修理したりしてるらしい」
この屋上ゲームコーナーえらく気合い入ってんな。広さもかなりのモンだぞ、それに種類が凄い。
十円玉弾いてやるやつとかだけでも、かなりの数と種類がある。凄いって、陳腐な言葉しか出て来ない程、只々凄い。
「それとな、それとな、ゲームコーナーは屋上にあるんじゃが、ちょっとした遊園地みたいなのもあってな、釣り堀とか金魚すくいもあって、それで……」
「落ち着け魔王。ちょっとパソコン見せてくれ」
遊園地確かにあるな……。ミニ遊園地って言うのか、屋上もかなりの広さがあるけど、一角に無理矢理詰め込んだ遊園地って感じだ。
だけど観覧車は結構大きいな? ネットで見た、昔のデパートの屋上遊園地にある、ミニ観覧車って大きさじゃ無い。結構な大きさだ。
「凄いよなぁ、デパートの屋上に遊園地まである何ぞ本当に凄い。わらわ昨日テレビで見てビックリしたぞ」
「大昔はそうだったらしいな。俺のじいちゃんばあちゃんが子供の頃は、ギリギリそんなデパートが残ってたらしい。俺の子供の頃、と言っても十何年前だけど、全く無かったからなぁ。それにしてもこんなトコあったんだ? 初めて知ったよ」
「なんかな、レトロとかノスタルジー? ってのをコンセプトにしたらしい。周りにあるデパートが、近代的? な造りじゃから、あえてこの様なのにしたそうじゃ」
「へえ~…… 地方なのに周りにデパートが五つもあるんだ? 集中し過ぎじゃないか? で…… このデパート以外が改修と…… 新規オープンしたからこのデパートも新しく造り直したのかぁ。で、このレトロ? ノスタルジー? をコンセプトにしたデパートを造り直す時に、新築なのにわざわざこんな風にしたんだな? 出来てもう半年も経ってたんだな、知らなかったよ」
レトロやノスタルジーを売りにしてるからか、何か良い意味で哀愁を感じるな。悪くないな。うん、良いじゃないか。
「な~んか良いよなぁ、わらわ一目見て気になって、調べたら気に入っての。それとな、何か大衆食堂ってのがデパートの屋上の下の階にあって、それも気になるんじゃが」
「あっ、この風景見た事あるぞ、ここのデパートじゃ無く、昔のデパート画像をネットでだけど。それにしても古臭いな、ウエイトレスさんが着てるのってメイド服? コレ昔も昔、大昔じゃないか? 大正とか昭和初期はこうだったらしいけど、どんだけ徹底してるんだ? 嫌いじゃ無いけど……」
「なぁココって何なんじゃ? 食堂ってのは分かるんじゃが……」
「今で言うファミレス? ちょっと違うかな? 確かじいちゃんばあちゃんが昔言ってたけど、二人が子供の頃はギリギリまだこんな大衆食堂がデパートにあって、デパートに行ったら結構食べてたって言ってたっけ? 何と言われると食事処になるのかな? レストラン? になるのかな? 結構楽しみだったって言ってたな」
「レストランか。ファミレスとは違うんじゃな? 色んな料理があるんじゃなぁ。なぁレストランなのに、ラーメンとかうどんにそば、それに中華とかもあるぞ」
「節操無いよな? でもそれが良いらしい。楽しくって、ワクワクして、嬉しい気持ちになれるって言ってたな。後、お子さまランチが楽しみだって言ってたっけか?」
良いなココ、面白そうじゃないか。それにこの辺りの名産品とか買うのもアリだ。問題は地方と言う事か、ちょっと遠いってのが問題だ。
リニアで行くか、飛行機で行くのも手だけど、向こうでの移動に難アリになる。うーん…… 車か…… 向こうに行くまでに時間が掛かるな。だけど車があれば向こうでの移動手段は確保出来る。
レンタカー…… いや、どうせ行くなら自分の車で向こうに行って、途中の高速のサービスエリアとかパーキングエリアや、道の駅で買い物もしたい。そうだな、そう考えるとレンタカーは無しだ。
それにどうせ泊まりになるんだから、一泊では無く、何日か、それか一週間位は泊まり掛けで行くのも良いな。
そうだな、仕事も今は特に無いし、株主総会も無いし、税理士の先生のトコに行く予定も無い。ならちょっと長めに泊まり掛けの旅行気分で行くのもアリか? どうせ魔王の奴、デパートの屋上を一日で満足するはずないし、このデパート自体楽しむとしたら一日なんて無理だし、他の買い物を考えればちょっと長めの泊まりはアリか。
「なぁお前わらわの話を聞いておる? お子さまランチって、わらわ食べた事無いけど美味しいのか?」
「ちょっと考え事してた。お子さまランチ? 俺は好きだけどな。子供の頃食べたのは美味しかったぞ、どの店で食べてもハズレは無かったかな。お子さまランチが嫌いって奴に、俺は今まで一度も出会った事は無いかな?」
そう言えばコイツ、お子さまランチって食べた事無かったな? なら丁度良い機会か。
「そっかぁ、でもわらわ、この大人ランチって言うのも気になるんじゃが……」
「えっ? そんなんもあるの? マジ?」
「うん、あるな。ホレ見てみい」
「本当だ、こんなんもあるんだ。へえ……。アレ? 何だコレ? スーパーウルトラアルティメットアイス盛り? 何じゃこりゃ」
名前が色々と被ってるんだけど? アルティメットだけで良いんじゃ……。ネタか? 大丈夫かココ? 行くのがちょっと不安になって来たぞ。
「スーパーウルトラアルティメットパフェとか、スーパーウルトラアルティメットプリンアラモードもあるぞ」
「・・・」
大丈夫このデパート?
「なぁ、それでな、屋上はゲームコーナーと遊園地とか、他にも遊ぶのが色々あるけど、ペットショップもあるんじゃが、何でなんじゃ?」
「えっ、そんなのもあるのか? 本当だ…… 何でペットショップがデパートの屋上に…… 何で?」
意味が分からん、何でこんなモンがデパートの屋上にあるんだ? 普通は、いや、ペットショップ自体あるのがおかしいのか? でも本当に何で?
「なぁ悠莉、これって普通の事なのか?」
「いや、俺も初めて見た。本当、何でなんだろうな? ちょっとスマホで調べてみる」
「わらわもパソコンで調べてみる」
なーんだ、そんな理由か、だけどなるほどだな。単純だけど意味は分かる。なるほどだよ。
魔王の奴も分かったみたいだな、しきりに頷いて居る。へえ~ とか言いながら何度も頷いてるな。
「魔王見た? 簡単な理由だな」
「そうじゃな、集客の為か。昔はペットショップって珍しかったみたいじゃし、色んな年齢の客を集める為か。しかしペットトリマーも横の店には居るんじゃな」
「理由が分かったら簡単な事だよな。でも魔王、これペットトリマーの店? ペット美容室は多分ペットショップと一緒の店だと思うぞ。店舗が二つじゃ無く、一つの店じゃないかな? いや、そう考えるとデカイな。トリマーさんが居るこのペットショップ、結構な大きさだぞ。このデパートどんだけ大きいんだよ? 屋上もかなりのデカさじゃないか?」
「本当じゃ、別々の店では無く、一緒の店じゃな。あっ、ペットショップの中ってペット用品もかなり取り扱っておるな。店もでっかいし、この屋上どんだけ広いんじゃ? デパート自体も…… なぁなぁ、ここ日本一大きなデパートらしいぞ」
「そうなの? 本当だ、書いてあるな。なぁ、ここ滅茶苦茶混んでそうなんだけど?」
あんま混んでるトコは行きたく無いんだけど…… 魔王の奴、かなり行きたがってるし、楽しみにしてそうなんだよなぁ。多分俺が嫌って、言わないと思ってるんだろうけど、行きたがってるよなぁ。
正直俺も行ってみたいって思ってるけど、かなり混んでそうなんだよなぁ……。
「みたいじゃな……。でも平日はそうでも無いみたいじゃぞ。日曜や祝日が特に混んでて、それと土曜が混むみたいじゃな」
「地方だし、平日ならそんなもんか? パソコン俺にもちょっと見せてくれ。あー、やっぱ土日祝日は激混みみたいだな、土曜がちょっとマシ? そんでも激混みじゃないか、人が歩けない程混んでるぞ」
「じゃな。でもホレ、平日はそうでも無いぞ」
「だな。それにしても、リニューアルオープンして半年でまだこんなに混んでるんだ? 何々……、郷愁を感じる為に、お年寄りが全国から旅行がてら来てるのか。ノスタルジアをアナタに? 郷愁もノスタルジアも意味は一緒だろ? 適当な記事だな」
「ちょっと他のも……。何かこの記事も年寄りが結構来店してると書いてあるのう。観光名所になっておるらしい」
じいちゃんとばあちゃんが、ココに行ったら喜びそうだな。行ってみて、良かったら二人にも旅行をプレゼントするかな? ネットではお年寄りが結構行ってて、しかも懐かしさを感じ、喜んでるみたいだからな。うん、行ってみてだが、記事通り本当にこのままの雰囲気で、楽しめるなら二人には旅行をプレゼントするか。
「なぁ? わらわ行きたいんじゃが…… ダメかの悠莉?」
「良いよ、俺も行ってみたいからな。でも泊まりになるぞ、良いのか?」
「それは構わぬ、どうせ一日、それも日帰りでは十分楽しめんから。一泊はしたいと思っておったし」
「ついでだ、一週間位行こうじゃないか。車で行って、途中のSAとかPA、それに道の駅とかで色々食ったり買ったり、その土地土地の名産品を楽しみながら行こう。向こうでも二、三日泊まって、周りを観光するのも良いかもな。せっかく遠出するんだし、たまには良いと思うけどどうだ?」
「たまにはエエか。それにココは行きたいし、二、三日位は余裕で遊べそうじゃしな。なぁなぁ、ゲームコーナーに行くんじゃから、臨時でお小遣いはくれよ」
「分かったよ、しようがない。臨時小遣いか、たまには良いか」
「やったぁ~! 楽しみじゃのう」
魔王の奴、嬉しそうにしやがって。たまの事だ、小遣いは弾んでやるか。
22時にも投稿します。