第1話 居候のポンコツ魔王は謳歌する
「ただいま~」
「ん・・・」
またかコイツ……
「おい、お前なぁ、日がな一日ゲームばっかしやがってからに……」
「うるさいなぁ、いいだろ別に、今良いトコじゃから邪魔するでない、もう少しで魔王を倒せる。邪魔するな、気が散る」
「お前は何がもう少しで魔王を倒せるだ。お前が魔王だろ」
「えーい!うるさい、うるさい。気が散るから黙っておれ、お前は小姑か」
コイツ…… 毎日毎日飽きもせず一日中ゲームして食っちゃ寝して。コイツは本当に魔王か? いや、元って言うべきなのか? うーん…… 一応は今も魔王なんだろうが…… でも力は無くしてるしなぁ……
しかしあれからもう一年か。コイツが来てから一年経つんだなぁ。俺が異世界から帰って来て一年後、コイツが現れた。
異世界から帰還して現在二年目になるが、一年前コイツはコチラの世界に来やがった・・・
~~~
一年前
俺が異世界から帰還し一年経った。
異世界での諸々を終わらせたご褒美として、神にロト8の当選番号を教えて貰い、その教えて貰った番号を二十二口分買う様に言われたが、俺はアチラの世界で約十年の時を過ごした。
二十歳で向こう行って、頼まれた諸々が終わり、帰還の為に仲間と大迷宮を攻略し、俺は既に三十歳になって居た。
異世界に行ってから十年もの時が経っており、日本に帰って来たとしても色々ややこしい事になっているだろうと思えば少し憂鬱でもあった。
だが日本に帰って来た時、十年経っていると思ったが、日付や時計をみると俺が行ってから十分しか経っていなかった。
肉体年齢も二十歳のまま。しかし精神年齢は三十歳と言う少し歪な身体である。
その事に思いを馳せて居ると声が聞こえた。
『サービス サービス♪』
うん、確かにサービスっちゃサービスだよ。しかしサービスが過ぎるんではないだろうか? 異世界で得た力、それも全て使えるのだから。
身体能力に魔法。そしてアイテムボックスに、その中に入って居た物全て。異世界で得たそれら全てをコチラに持って帰れたのだから。
そしてふと思い出した。そう、十年前の事であるが強烈に覚えて居る。ロト8確かキャリーオーバーしまくっていて、二百八十億近くになってたよな? と……
しかも次は三百億越えるのは確実だろうと言われてたよなと。俺、神に二十二口買えって言われたな?
ロト8は通常一等が十億だが、キャリーオーバー発生時は一口につき最大、十六億になる。そして二十二口分買えと……
ん? ん? ん~~~? コレは……
俺は直ぐに買いに行った。当然教えて貰った番号を二十二口買った。そして俺が買った番号が一等に当選した。一等は二十二口当選となっている。
はい、俺が一等を全て買い占めて居た訳で。因みに当選金は三百三十六億ちょいになった。
正にご褒美である、アッチで苦労した甲斐があったと言うモンだと心から思った。それから一年程は何事も無く過ごした。金があるのは素晴らしい、本当に楽しく楽しく過ごして居たのだが……
そんなこの世の春を謳歌して居た時に災いがやって来た。招かざる客人の襲来である。
それは突然だった、前触れ等全く無く、何の予兆らしき物も無く本当に突然の事だった。
ピロリンと言う何とも間抜け音楽が鳴った。そしてジャジャジャジャ~~ンとまるでファンファーレの様に鳴り響き、ボンと言う音と共に奴が現れた。
「ワーッハッハ! 我見参! 勇者め覚悟しろ」
「お前! 何で魔王がココに?」
「フッ…… 妾がここに現れた理由? 決まっておろう、勇者! 貴様を倒す為よ!」
「お前ふざけんなよ、倒してキッチリわからせてやったのに。こっちの世界まで追っかけて来んな! お前ストーカーか?」
「だ 誰がストーカーだ! まぁいい、覚悟しろ勇者、今度こそ負けん」
クソ! 家の中で暴れられたら堪らん。高い金出して買ったマンションと言うのもあるが、この家は住み心地が良いし気に入ってるんだぞ。何とか外に誘導しなければ……
そう思った時だった、又音が鳴ったのは。
ほよほよほよほよほ、と何とも間抜けな音楽だった。パック●ンが敵にやられた時の様な音が鳴り、魔王がボンと言う音と共に煙に包まれた。
煙が晴れた時、魔王が又現れたのだが姿が変わっていた。正確に言うと背が縮んでおり、色々と小さくなって居た魔王? になって居た。
魔王は元は大人なおねーさんで、凄くスタイルが良く、美人であり見た目だけなら凄く良い女であった。
胸は大きく美乳で、ウエストも細く、括れも素晴らしくバッチリ括れで、お尻も小尻で美尻で、脚も細く美脚であり、背も高くスラっとしてて見た目は無茶苦茶良い女だった。
それがどうだ。煙が晴れて出て来たら背は縮み、胸はぺったんこ、ウエストもぺったんこになって居た……
それだけでは無い。力も色々と失われてしまった様で明らかに弱体化したのが分かる位に見た目だけで無く、力その物が失われて居た。
魔王は強者のオーラの様な物が消えていたのだ。
「えっ? えっ? わらわ何か力が…… アレ? 何か背も縮んでないかコレ? アレ? 何か胸もスースーする。え~! わらわ何かおかしい! あー! 勇者貴様もしかしてわらわの力を奪ったな~?」
「いや、知らねーよ。と言うか何でお前こっちに来れた? あっ…… お前魔力が無くなってないか? うん、力もかなり失われてんな」
「やはり貴様が! 返せ、わらわの力を返せ!」
「いや、だから知らねーよ、俺は何もして無いからな、本当だぞ」
「では誰がわらわの力を……」
ピロリン、と又音が鳴った、そして……
『色々ややこしいから力は預かったよ♪ 自衛の為に一応の力はあるから安心してね♪ それと戸籍とかややこしい事とかその辺もちょこちょこっとしといたから安心してね~ 二人一緒に居ても周りから何にも言われたりしないから安心してね~ 大丈夫だよ~♪』
神よ、アンタか…… と言う事はあの人がコイツをこっちに送り込んだんだな…… どうせその方が面白いとかそんな理由なんだろうなぁ。
「えっ何それ? わらわ力無くしちゃったの? えっ、弱体化したのか? わらわ弱くなってる?」
うん、そうだね、間違いなく弱くなってるね、
さて、コイツどうしよう?
「おい勇者、貴様は何故わらわを見ておる? ち ちょっと待て、力を無くし弱体化したわらわをどうするつもりなのだ? ハッ! ま ま まさか…… わ わらわを手込めにするつもりか? ひ 卑猥な目でわらわを見るでない、わらわの純潔を奪うつもりであろう、わ わらわを……」
「お前人聞き悪い事を言うな! 俺はロリコンじゃ無い。それ以前の問題として無理矢理なんて人として最低な事はしないし、した事無いわ。お前は俺を何だと思って居る? と言うかまず服を着ろ。とりあえずTシャツ持って来るから上から着ろ」
「ん?・・・ んなぁ~! 何でわらわすっぽんぽんなのじゃ~ バッ、バカぁ見るな~」
「いや、見たく無いから。寧ろ見せるなそんな見苦しい物を。とりあえずTシャツ持って来るから待ってろ」
「誰が見苦しいだ! う~ 勇者に見られた~ まだ誰にも見せた事無いのに……」
「前の姿ならともかく、今のその身体見ても何とも思わねーよ。しかしお前あんな格好しといて純情か? あんなエロい格好しといて今更だと思うんだけどなぁ…… アレ? 魔王、お前が着てた服あそこにあるぞ、しかもキッチリ畳んであるんだけど? これもサービスなのか?」
ピロリン、『サービス サービス~♪』
「やかましいわ! 何でわらわをすっぽんぽんにする? すっぽんぽんにする必要あったか? しかも態々服を畳んで置いとくとは…… 悪意しか感じんぞ! う~~~ まだ誰にも見せた事無いのに…… 初めての相手が勇者……」
そんな事言われてもなぁ。俺だって見たくて見た訳じゃ無いんだけど? 俺も被害者だよなコレ?
「別に良いだろ、元からエロい格好してたんだし。大体俺だって見たくて見た訳じゃ無い。寧ろ見せられた被害者だぞ」
「勇者~! アレは魔王としての正装じゃぞ! 理由はどうあれわらわの裸を見たのは事実であろうが」
「いや、知らんがな。と言うかあの格好って正装だったんだな? お前の裸とかどうでも良いけど、アレが正装ってのがビックリだわ、サキュバスでももっと慎み持った格好してると思うぞ」
「お前は何と言う言い草じゃ。うら若き乙女に何と言う事を……」
うーん…… うら若き乙女っての突っ込むべき何だろうか? まぁそれは今はどうでも良い。それよりもコイツは今の状況を分かって居るのだろうか?
「ん? どうした勇者?」
「いや…… 服取って来るから。しかしそんだけ堂々としてるのに本当に恥ずかしいのか魔王?」
「はっ? 何の話だ勇者?」
「えー 本当に分かって無いんだ。お前やっぱポンコツなんだな」
「だから何の話だ? と言うか誰がポンコツだ、もしかしてわらわの事を言っておるのでは無かろうな?」
「いや、魔王、お前今の自分の状況と言うか、格好分かってるか?」
「はぁ?・・・・・・ おい! わらわすっぽんぽんのままでないか! キャ~見るな~」
「いや、だから別に見たく無いからな。Tシャツ…… 着る物持って来るから大人しく待っとけ」
~~~
あの後も大変だった。裸を見たとか謝れだとかギャー ギャーとうるさかった。
そして色々と話し合った結果、魔王が向こうに帰る迄は俺の家に居候する事となり、今に至る。
あれから一年経った訳だが、早い様なと言うか、もう一年経ったかって思いと、まだ一年かって思いと共に、魔王が居るのが当たり前になってしまっている。
コイツは力を失ったが、自衛の為の力はある訳で、身体能力は鍛えに鍛えた男よりやや強い位あり、魔法に関しては生活魔法は一通り使え、アイテムボックスも使える。
だが攻撃系の魔法は使えないし、何より魔力が極端に低くなってしまって居るので、例え攻撃魔法が使えたとしても使いたくても使えない状況だ。
それでも生活魔法は一通り使えるし、多分だが魔力の流れを弄られて、生活魔法やアイテムボックスにしか行かない様にされたのかも知れない。
力の測定がてらあの時に腕相撲をしたが、あっと言う間に負けて呆然としてた魔王の顔は今も良く覚えて居る。
魔法も生活魔法しか使えないと分かった時の顔も今も良く覚えて居る。
しかしコイツ日本に慣れ過ぎだろ。もしかしてだがもう、力を測定して弱体化した時の事を忘れてるんだろうな。
「ヨシ! 魔王を倒したぞ~ ん? おいどうした? わらわの顔をじっと見て? あー そうかそうか、お前もゲームしたいんだな。そうだな、配管工カートやろうか? 今日は負けぬぞ~」
うん、このポンコツ魔王、居候としての生活に慣れ過ぎだ。帰る気あるのか? 何なんだかなぁ……
「ホレどうした? 早くやろう。わらわ今日は勝てる気がするのじゃ、さぁ早くやろう」
本当にこのポンコツ魔王め…… 俺がお前に負ける訳無いだろ?
「返り討ちにしてやるわ」
「今日は負けん、必ず勝つ!」
「又後で泣く事になるぞ、『何で勝てぬのじゃ~』ってな」
「今日はわらわ調子が良い、必ず勝つ!」
本当、毎日こんなだよ、この一年変わらない日々だ。でも悪く無いな、一緒にゲームする相手が居るってのはな。
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