【蛇足】
【注意】今のところこの話の続きを書くつもりはございません。ただ、この「不老不死の商人」を続けるならこんな感じの物語を考えていますよ、といういわば予告編みたいなものです。
「はぁ…はぁ…」
荒い息遣いを留めるように左手の手のひらを胸に当てる。彼の近くに横たわる人間はピクリとも動かない。
全く、普段から動いていないせいで体は鈍っているようだな。いや、これも老衰のせいか。だが、これでようやくはっきりした…
いや、休んでいる場合ではない。まずは隠さなくては。
剣を握る反対の手は赤く染まっていた。ポーションではなく、本物の血で。
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ルーク国王は諦めていた。
不老不死を証明することが、自身の王としての位を下げるから。疑い、そして、明らかにしてきた人生で初の挫折。
だが彼の猜疑心は止まらなかった。
何を今更疑うのか。それは忠誠心。
もし不老不死が偽であれば、フーは、執事のフーは王である私に嘘をついていることになる! それは私への裏切り以外の何物でもない。私が馬鹿正直に自身の首を切っていたらどうするつもりだったのか!
商人ロウは不老不死の効果を〝加護〟と称していた。悪意や老衰のようなもの以外からの攻撃は意味がないのだと。
ならば悪意を持って証明してやろう。忠誠が真か否か。
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「あ、ルーク国王様、フー殿をお見かけしていないでしょうか。」
遠くから、大臣が駆けてきて私に話しかけた。
「あぁフーなら先程執事を辞める言ってきたさ。なんでも田舎に帰るのだと。」
「ええ!? 急すぎやしませんか?」
「さぁな、フーも不老不死になったのだから、人生観でも変わっただろう。」
自室に1人、ルーク国王は居た。そして高らかに笑う。
我ながら名案だった。他人の不老不死を証明するのは簡単。誰か不老不死を名乗る人物を殺してしまえば良い。当然、人間としての理性的ブレーキが働く。だが躊躇しなかった。手を伸ばせばそこに答えがあるのになぜ手を引っ込めなければならないのだ。
そう、フーを殺して、生きていれば不老不死の証明、死ねば裏切りの証明。これは殺意を持った私にしか出来ないこと。
そして、今、裏切りが確定した。そして、不老不死が真っ赤な嘘であることもな。
…クハハ、あの詐欺師め。よくもこの私を騙してくれたな。この借りを返してやる。
だが、私は不老不死であることになっている。民に知られてはまずい。だから、隠密だ。ロウと一対一になれる場面を作り出し、貴様の目の前にこの生首を晒すことでお前を必ず否定する。
不老不死の商人・ロウよ。お前が不老不死を売るのであれば、私は貴様に死を売ってやる。無償でな。
我がハート王国の同盟国、ダイヤ王国の国王に不老不死を勧めた。お前はまた鴨にするため、いずれのこのこと現れるだろう。
…そこで決着をつけようじゃないか。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
前述したように、続きを投稿する予定は今のところありません。というか流れは考えてありますが、オチまで思いついておりません。
ですので、一話同様、面白い、続きが読みたい、と思ってくださったら、いいねやブックマークで教えていただけると励みになります。
よろしくお願いします。