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第6話 家族の前でも興奮しちゃう系妹

「近づかないで」


 俺はリビングにて、妹の夏美に冷たくそんなことを言われていた。


 ただ夕食を食べ終えたので、食器をシンクに持っていこうとしていただけだ。ただ少しすれ違うだけだというのに、夏美はそう言うって俺が近づくのを拒否した。


 そんな光景は見慣れたもので、不要に近づいた俺が悪いみたいな空気が流れていた。



「お兄ちゃん! 『妹催眠アプリ~妹が俺を搾りとってくる』っていうエロマンガを入手しました! 特別にお兄ちゃんから先に使わせてあげる! あ、あと、できたら後で感想と、どこでしたかを教えてね! か、勘違いしないでよね、ただどこがお兄ちゃん的に萌えるポイントだったか知りたいだけでーー」


「俺は夏美の情緒が分からない」


 夕食を食べてしばらく経った後、夏美が俺の部屋にエロマンガと共に現れた。こちらに掲げているエロマンガはもちろん妹物。なぜそんな笑顔でエロマンガを兄に渡すことができるんだ、この妹は。


「え、なんのこと?」


「なんのことって、無意識なのか? ほら、とりあえず部屋に入れ」


「え、うん。分かった」


 夏美はお股の位置を少し直して俺の部屋に入ると、きょろきょろと部屋を見渡していた。座る場所を探しているのだろうか。


「ベッドに座っていいぞ」


「え、ベッド……うん、お兄ちゃんが言うなら」


 夏美はなぜか恥ずかしそうに顔を赤く染めると、しおらしくベッドに腰を下ろした。なんで兄のベッドに座るという行為をするだけで、そんな艶めかしいような表情をするのだろうか。


 こっちがおかしくなりそうなので、そんな顔をするのはやめて欲しい。


「……まさかとは思うけど、もう濡れてたりしないよな?」


「え? お兄ちゃんの部屋に入ったときから濡れてるけど?」


「当たり前みたいに言うな、当たり前みたいに」


「えへへっ、お兄ちゃんにお股の塗れ具合を確認されちゃった」


「絶対に人に言うなよ! 勘違いされるからな! それと喜ぶところではないから!」


「誰にも言うな? お兄ちゃんったら、私に悪戯するから塗れ具合を確認――」


「しないから! しないから、うっとりした顔をするな!」


 ちくしょう、もうこの妹は手遅れかもしれない。


 そして、俺のベッドのシーツももうダメかもしれない。


「俺1人の時と家族の前だと俺に対る反応違いすぎるだろ? あれの理由を知りたい。何か理由があったりするのか?」


 数分前の俺に対する態度と今の俺に対する態度では明らかに違いがある。それこそ、天とを地ほどの差があるのだ。


 その真相を知りたくて質問をしたというのに、夏美は仄かに頬を赤くした。なぜ今そんな反応をするんだ?


「お、お兄ちゃんは、お父さんとかお母さんのまでも、今みたいに接して欲しいの?」


「そりゃあ、そうできるなら、そうして欲しいかな」


「……分かった。お兄ちゃんがそう言うなら、私頑張るね」


「そうだな。俺たちの仲が悪いよりも、良い方が安心するだろうし……頑張る?」


 何なら話の流れがおかしい。夏美の方に視線を向けてみると、夏美は恥じらうように顔を赤くしてくねくねとしていた。


「お兄ちゃんが近くにいるとお股がぐちゅぐちゅになっちゃうんだけど、それを家族に気づかれないようにしてる私を見て、お兄ちゃんは興奮したいんだよね。えへへっ、お兄ちゃんってば鬼畜なんだから! 私、お兄ちゃんに視姦されちゃうんだ……やばい、想像しただけでお股がぐちゅぐちゅになってーー」


「違うから! なんでそっち方面に話が展開していくんだ!」


 二言目にはすぐにお股を濡らしてしまう妹。はたして、普通の会話をすることができる日なんて訪れるのだろうか。


 いや、待てよ。普通に考えれば家族に見られている状況で、濡れることなんてあり得なくないか?


 だって家族を目の前にして興奮なんてできないだろ。


 そうだ。きっと夏美は興奮すると思い込んでるだけで、実際はそんなことはないのではないだろうか。きっと何か創作でそういうものがあって、自分もそうなると思い込んでいるのだ。


 それなら、俺が教えてあげなてはならない。兄として、そんな興奮の仕方をすることなどあり得ないと。


「よし、夏美。先にリビングに行っててくれ。俺が後から行くから、俺が座るソファーにジュースを持ってきてみてくれ。可能な限り親の前で近づいてみよう」


「お、お兄ちゃんが凄い積極的だ。分かった、私頑張るからちゃんと見ててね」


 夏美は健気ようなセリフを赤くなった顔で言うと、お股の位置を直して俺の部屋を出た。


 夏美が座っいてたベッドの場所を見て、俺はリビングに行く前にタオルを探すことにしたのだった。


 そうして、俺達は互いにリビングに下りたのだった。


 リビングに入ると、先に来ていた夏美がキッチンの方で落ち着きなくうろうろとしている。


 俺がリビングに入ってきたことに気づいた夏美は、俺の方にとろんとした目を一瞬向けてきた。


 なぜ今そんな顔をこちらに向けたんだ、夏美よ。


 確認だけど、ただお股がぐちゅぐちゅなだけでいいんだよな。何か変なことしたりしてないよな。


 俺はそんな疑問を持ちながら、夏美の方に視線を向けた。


 俺がソファーに座って夏美を見ていると、夏美はゆっくりと冷蔵庫を開けて、缶のジュースを二つ手にして冷蔵庫の扉を閉めた。


 ただそれだけの仕草なのに、俺の視線をじっとりと受けとめるように時間をかけて、一つ一つの動作をしていた。


 ちらりとこちらに向けられた視線は熱く、火照っていたように見える。


 そして、夏美はそのジュースを俺のところまで持ってくると、近くにあったローテーブルに静かに置いた。


 夏美との距離わずか30センチ。


「これ、あげる」


 息が少し荒く、色っぽい口調。羞恥プレイでもしているかのように、夏美の顔は赤みを帯びていた。


「あ、ありがとう」


「はぅ」


 なんだ今の声は?


 俺の返答を受けて、夏美はよく分からない声を漏らした。


 しかし、お父さんとお母さんからすると、そんな夏美の言動以上に驚く点があったのだ。


 夏美が俺に話しかけている。その事実にのみ目がいっているようで、夏美の様子がおかしいことには気づいていないようだった。


 夏美が変な言葉を漏らしても、それに気づいたのは俺だけだったようだ。ギリギリ過ぎるだろ、ただジュースを持ってくるだけだぞ?


 そしてもう一つ、俺だけが気づいたことがあった。夏美の脚から何かが伝っていた。それは透明で微かに粘度がありそうで、その出所がどこか視線を上げていくと、そこにはお股があった。


 俺の視線がそこに向けられていることに気付いたのだろう。夏美は小さくぴくんと体を動かすと、涙目でこちらに視線を向けてきた。


 助けてくれということだろう。エマージェンシー、緊急事態である。


 まさか、本当に家族の前でもお股をぐちゅぐちゅにするとは、お兄ちゃん思わなかった。今回は流石に酷すぎたな。謝るから許して欲しい。


「夏美、上でアラーム鳴ってたぞ」


「へ?」


「消してきた方がいいんじゃないか?」


 俺の言葉を聞いてようやくその意味がわかったのか、夏美は少し急足でリビングを後にした。そして、少し遅れる形で俺もリビングをでた。


 階段を登って少し行くと、夏美は部屋の前でぺたんと座り込んでしまっていた。項垂れるように下を向く夏美を前にして、俺はかける言葉を探していた。


「……お兄ちゃんが悪いんだよ」


「ごめん。その……急ぎすぎたよな」


 力のない夏美の声。その声を聞いて、自分がしてしまったことの重さに気がついた。結果として、夏美は家族の前で辱めを受けることになってしまったのだ。もしかしたら、トラウマにもなりかねない。


 思春期の多忙な時期に俺はなんてことをしてしまったのだろうか……。


「家族の前っていう背徳感と恥ずかしさを興奮に変えるなんて、お兄ちゃん上級者すぎるよ! お兄ちゃんってば、ずっと私を視姦してくるし、垂れてきちゃうとこまで見られちゃった」


「な、夏美?」


 夏美は顔を両手で隠しながら耳を真っ赤にしていた。荒い息遣いでくてんとなっている夏美は、まるで野外でおもちゃで遊ばれた後のような表情をしていた。


「私、恥ずかしいけど頑張ったよ。お兄ちゃんも興奮した?」


「初めに違うって言ったよな?!」


 羞恥で染まった赤い頬と、熱を持ったような涙目でこちらを見上げる夏美に、俺はツッコミではない訂正を入れたのだった。


 そんな夏美の姿を見せられて何を思ったのか、ここで書き記すのはやめておこう。


 しょうがないだろ、例え妹であってもこんな姿を見せられて何も思わない訳がないのだ。


 書き記すことはできずとも、それなりに感じたことはあるということで許して欲しい。いや、本当に。


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