僕が覚えている明日のことを
僕は明日何が起きるか知っている、未来予知できるとかそう言うのじゃなくて、なんとなく明日の昼ごはんは多分おにぎりだろうなぁーみたいな曖昧なものだったり告白が成功するかしないかわかる程度の物の時も有れば母さんが死んでしまうとかで宝くじで当選するみたいな事はできないし、次の日起きる事は全て変えられない
そしてそんな事がおきるようになったのは中学一年生のころからだったような気がする。
「聞いてよお母さん僕明日、下校中に自転車で転んで足を擦りむくみたいなんだ、だから絆創膏買っといて」
最初のうちは夢?とかデジャヴを人より受けているだけだと思って誰かに相談みたいな事はしなかった、、
それにしたとしても誰もそんな突拍子もない事信じないと思っていた。
ただ、その日は違って実際痛い!って思った。そしてちょうど絆創膏が無くなっていて、その日は絆創膏を母が買ってくるまで待つ事も何故か覚えていた。
母は突然なんて事言い出すのとか、馬鹿なこと言わないで、みたいな感じで冗談ぽく聞き流すと思っていたけど。
「あら、そうなのじゃあ今日の買い出しの時に買っておくから」
と言ってくれた。今思うとその頃から僕の異常に気づいていたのかも知れない。
中学生2年生にになると覚えている事は多くなった。夕飯は何を食べるのか、誰と遊ぶのか、抜き打ちテストがある事とか。でも前日にテストがある事がわかってもできる事は少ない。だから、僕は毎日家に帰ってからも復習と予習をするようになった。
そのおかげで成績は優秀、何が起きるか知っているからいつも冷静、、沢山モテた。でも誰ともう付き合わなかった。ドキドキしないから、僕は特別だと思っていたから。
「明日、テストあるんだって。さっき先生たちが話しているの聞いたんだ。一夜漬けでもしときなよ」
「あっそうなの、〇〇君ありがとう。〇〇君の得にはならないのに教えてくれて、そうだ今日帰りにカラオケがファミレスで勉強教えてよ!」
「ごめん、放課後は用事があるんだ、だから休み時間とかならいいけど、今日は君とは遊べないいんだごめんね」
「〇〇君が謝る必要はないよ。じゃあさっ休み時間の時教えてよ」
「うん。いいよ」
高校2年生の時、僕は母を殺した。
「母さんおはよう、今日の帰りなんだけどさ、少し遅くなると思うからよろしく」
「わかった。でもそれより遊びに行くなんて珍しい事もあるのね。中学一年生以来じゃない?まぁ、気おつけてね!」
「二人ともおはよう」
「おはよう」
(僕は突然泣き出した。それも立ったまま)
「なんだ母さんだけか?」父が多分僕の方を見た。
「おいどうした。大丈夫か!〇〇!〇〇!」
大丈夫、僕は大丈夫。
「父さん、今からみんなで病院にいこう。母さんが少し具合が悪そうなんだ。」
僕は大丈夫だから、母さんが
「私はなんともない無いけど」
なんとも無いわけない、明日母さんは死ぬ、、、
でも、僕は特別だから。母さんは死なない
「そうか?俺には全然分からないけど。本当なら母さんもあんまり無理しないで、でも〇〇が言うんだからきっと何かいつもと違うってことだろ、準備したら行くか病院に」
病院に着いた。すると進行中の大腸がんが発覚し、話し合いの末明日に手術が決まった。
「〇〇のおかげだな。手遅れになる前にがんがわかったのは。」
「〇〇、〇〇」
父さんは俺を褒めた。母さんは泣きながら俺の名前を呼んだ。安心した。
「そんな事はないよ、たまたま」
「そうか?まぁナイスだ。よく母さんを見てたな」
父さんはグッドサインを手でして笑った。
僕も安心して笑った。
母さんは泣いていた。
次の日僕は泣いた、父さんも泣いた。母さんは寝ていた。死んだように寝ていた。まるでもう起きないかのように寝ていた。
手術に失敗して、死んでしまったらしい。
嘘だ!これじゃ昨日、思い出した。今日と一緒じゃないか。
冷たい手を温めるかのように震えながら持つ父さんと、その横にいる僕。そして淡々と告げられる手術結果と謝罪。
僕はその日初めて人の血は赤くて暖かい事を知った。
特別な僕はどこにもいない、何もできないんだ、僕は
その後、少しやつれた父さんは僕が成人式の次の日に死んだ。自殺だ。
もちろん何がなんでも止めようとした。電話もしたし
実際にその場所にも行った。でも間に合わなかった。
明日がわかってもチャンスは一回しかないから。何もできない、あるのは死体と既視感と僕の影
死んだ時近くに遺書があった。
手紙と言った方がいいだろうか。
「〇〇へ
まず、成人おめでとう。そしてごめんな。
大切なものは、無くしてからその大切さを知る、みたいなことよくいうと思うだけど。まさにその通りだよ。気づいてたと思うけど俺は母さんが死んでからすぐに仕事を辞めた。意味を見失ったんだ。働く意味、家に帰る意味、笑う意味、俺が結婚した意味、生まれてきた意味、生きる意味いろんなものを無くしたでもせめてお前が大人になるまではと思って生きてきた。
だから今日なんだ。
中学生になってお前は変わったよ。自信を持つようになった。頭が良くなった。いつも思い出したかのように笑って、悲しんで、怒ってた。
母さんとは〇〇について話し合ったけど、〇〇から話させるまで待とうって決めたんだ。
それでな高校2年生の時泣いてただろ、次の日母さんが死んで意味がわかったよ。それでそれから一年はお前が母さんを助けられなかった事を実は責めてたんだ。でもなぁ、めちゃくちゃ勉強して医者になるって言ったお前を俺は見て今度は自分を責めた。
漢と漢だ。言わなくてもわかるよな。頑張れよ。」
また泣いた。
それから数年で
医者になった。沢山の人を救った。
妻ができた。
「なぁ、聞いてくれるか、俺、実は明日何が起きるか覚えてるんだ。だけどさぁ久しぶりに明日が怖いだ。
でも、それが一番嬉しいし悲しい」
「大丈夫よあなた。そんな気はしていたし、お義父さんの手紙も勝手に呼んでいたから多分ねって感じだけど知ってた」
「泣くなよ、悲しくなんかないよ。明日がわからなくても君のことは覚えてるし、待ってるから」
「〇〇、私を妻にしてくれてありがとう」
「ああ、おやすみ」