オタク
ハナはいくつものポーズをとらされた。立ったまま、木の実を拾う動作や寝ている格好など。
「経験ないんで。・・・小さいし参考にならないと思います。」
授乳のポーズだけはどうしてもできないと断った。他人に胸など見せられるか。それに例えTシャツ越しとはいえ、最大のコンプレックスの塊なんだ。
ハナは移住前の学校で片思いの先輩がいた。その人には彼女がいるのも知っている。その彼女の胸が大きかったので、勝手にコンプレックスを抱いていた。
「ついに、虹ロリから卒業か?」
授業が終わった学生たちが研究室へとやってきた。ハナはギョッとした。まさかこいつ自分の欲求を満たすために自分の体を使おうとしているのか?
「三次の女子なんて面倒なだけだ。学祭の展示で使うAR用だよ。体はボイドでいけるが、自然な服の動きは再現できないからね。」
「どうだか。おまえの推しキャラと同じポニテだしな。」
「人避けの鈴、効いてないじゃない。」
「さすがに研究室では止めてる。協力者ということで入校を許可してもらってるから話をあわせろよ。」
周囲に聞こえないように小声で話す。
「いつもは年寄りばかりなのに。お嬢ちゃん、このロリオタには気をつけるんだよ。なにかあったら、いつでもお兄さんが相談にのるから。」
いや、結構。絶対に信用しちゃいけない目だ。
「ヲンナ・カムリと話が出来る貴重な人材だ。」
ヲンナ・カムリというクフトの言葉に学生たちは後ずさりした。
「どうか、たたりだけは簡便してください。」
「おれ、目が回る気がする。ちょっと表に出るわ。」
「おれも、立ちくらみかな。」
「熱中症かもしれん。」
学生たちは部屋を出ていった。クフトが人避けの鈴を鳴らしたにちがいない。
クフトが校門まで送ってくれた。
「クフトは本当に女の子が嫌いなの?」
単なる興味だった。それ以上の意味はない。
「ああ、わがままだしな。」
「今日はお邪魔だったわね。」
ハナはちょっと意地悪をしたくなった。
「別に。お前はガキだからな。ロリの範疇にはない。」
ただでさえ気にしてることを言われてムッとした。まあ、ハナももともと同年代の連中とはなじみにくかったし、彼等に女と見られることも嫌だった。
門を出て百メートルほど離れた時、
「サヨリ様に何かあったら、すぐに連絡してくれ。」
クフトの声が後ろからした。