反省
「山ごと焼き払いましょう。」
「それで根絶できるのかね。」
「ミサイルを撃ち込んで、こなごなにしたら。」
「精度に問題があるし、成功しても政権がもたないぞ。」
「核爆弾なら精度もくそもない。」
「総理を犯罪者にするつもりか。」
国会では、結論がでなかった。専門家は、前回の反省から、監視しながら逐次駆除するしかないと、消極的な意見が多かった。
人は自然の前ではいかに無力であるかをコロナに続き味わった。前回はワクチンという最終手段があったが、今回は何もない。ただひたすら見つけて、数を減らすしか策がなかった。
「人間を守るためだ。サルに犠牲になってもらおう。」
まずはサルの個体数が減らないように、保護にのりだした。今回ばかりは動物保護団体も表立って抗議はできなかった。
「仮定の話は検討しておりません。」
記者から人里に蜂が下りてくる可能性を聞かれ、首相はこう繰り返した。
「いざとなったら、村ごとダムで沈めます。」
「しかたあるまい。だが、あそこは元総理の選挙区だ。さわがれては面倒だぞ。」
「区割りを変えれば問題ありません。」
国民には知らされなかったが、官邸は蜂が人里に降りてくるという最悪の事態を想定し決断していた。
世間には殺人兵器とはしらせていなかったものの、ネットでは殺人蜂の真偽のわからない噂が飛び交っていた。
「テロ組織が開発した生物兵器が逃げ出したんだ。」
「生命をもてあそんだ天罰だ。」
「蜂はタバコを臭いが嫌いだ。」
「いや、ハッカ油だ。」
あまり蜂を見たことのない街の人々は、花蜂にまで怯え始めた。
一部の人々はカムリ伝説になぞらえ、殺人蜂の女王を、破壊の王アンナ・カムリと呼ぶようになった。ハナの村は村民以外の出入りをきびしく制限された。街へ続く道では、検問が始まった。
「世の中にには、蜂を採取して名を上げようとする愚か者がいる。」
頭の薄くなった年老いた総理は、髪を染め直し、会見場に向かった。
「周辺の村への部外者の通行を制限します。この蜂は危険です。決して捕らえようなどとしないでください。」
官邸の真の狙いは、外国のスパイが蜂を手にいれることを避けることにあった。
「一般人がさされようが、餌食になろうと関係ない。ただ、国外に流出し、万一テロ組織や独裁国に女王がわたれば、世界中の脅威になる。それだけは阻止するんだ。コントロールのできない武器は兵器ではない。そのようなものはわれわれは欲していない。」
国連に加え、アメリカ大統領からの指示は絶対だった。




