ハンナ・アッシリ
春になり、サヨリ様が洞窟に戻ってくる次期がきた。リアはどうしてもサヨリ様に会いたいといい、クフトについてきた。
「とりあえず、ハナと山の入り口で待っていてくれ。サヨリ様にお伺いをたててくる。断られても、文句をいうなよ。」
「会えたら、ほかほかの生パンあげますね。」
「そういういい方はやめろ!」
完全にじゃれあってる。ハナはふたりの間に割って入ることができずにいた。クフトは一人山の中に入っていった。
「ハナはサヨリ様にお会いしてるのよね。ねえ、どんな方。相当なお歳というけど、まさか見た目は子供とかいうんじゃないわよね。」
リアの話はボケなのか本心なのかよくわからない。
「見た目は90歳ぐらいのご老人でした。でももしかしたら、クフトには違って見えていてるのかも。」
「そ、そうよね。特別なお方ですものね。」
リアはそわそわしている。傍から見るとわかりやすいのに、恋って本人たちは気づかないものなんだな。だいたい、いつもは死んだような目をしているのに、二人でいるときはキラキラしてる。なのに気付かないって、まあ当人はその表情しか見たことないから仕方ないか。
ハナは退屈のあまり、哲学的な思考に陥り始めた。
「サヨリ様があってくださるそうだ。」
クフトが戻ってきた。三人はサヨリ様の待つ洞窟へと向かった。
「よく来ました。あなたがたがそろって来たということは、その時が近いということ。」
サヨリ様の言葉に促され、一同は洞窟の中に入った。
「サヨリ様。助けていただいたお礼をいいたくて、ありがとうざいました。」
リアは洞窟にいる老婆に向かって丁寧に礼を述べると、いきなり
「ハンナ・アッシリですか?」
と尋ねた。
「ふむ。気付いておったか。」
ハナにはなんのことかさっぱりだった。
「すべてをつなぐもの。その者に導かれ、まもなくわれらすべてがつながる。ついにアンナ・カムリが動き出す。」
リアはハナのことをハンナ・アッシリと呼んでいるようだ。
「すべての出来事は、運命じゃ。避けられん。結末も変わらん。しかしそれをどう捕らえるかは人の心しだい。己が運命と向き合え。そして抗え。今はそれだけじゃ。」