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041. 二人と一匹04

ハクは森の中を獣特有の機敏さで駆ける。能力(スキル)については誰に教わったかは知れないが、いつの間にか問題なく使用することができるようになっていた。

魔獣を視界にとらえたハクは、その紋様を抱える腹を意識して能力を発動させた。


カイリの眼はハクの能力(スキル)の発動を(とら)えた。ハクの腹が一瞬光を(たた)えたかと思えばその瞬間、その姿は霧散して強烈な風が吹いた。そして、魔獣の周囲を取り囲むように複数の(ゆが)みが生じた。そしてその(ゆが)みが発生源となり、無数の透明な刃が四方八方から魔獣へと襲い掛かる。

質量が小さいのであろうか、一撃一撃の威力は決して高くない。現状は魔獣の硬い外皮に(はば)まれており、小さな傷を量産するのみに留まっている。しかしそれは着実に魔獣の動きを阻害し、致命の一撃までのカウントダウンを刻む。放たれた刃は霧散することなく、継続して魔獣の姿を追尾して切り刻む。さながら止まることのないブーメランのように飛び回り攻撃を続けるその姿は、まるで刃が意思をもって(・・・・・・)動いているかのようだった。

その刃を振り切ろうと、魔獣は四肢をしならせて跳躍のためのエネルギーを()めた。熊ほどの巨体ではないため、跳躍に必要なエネルギーは瞬時に確保される。そしてそのエネルギーが解放されるまさに直前、魔獣の進行方向に強力な光の屈折が視認された。

魔獣の溜めた、そのエネルギーの開放を止める手段は既にない。阻まれることなく解放されたそのエネルギーは、魔獣の体を勢いよく射出する。その向かう先にあるのは地面と垂直に固定された、大気を固めてできた1枚の刃。吸い込まれるようにしてその刃に飛び込んでいった魔獣の体は、真っ二つに泣き別れた。


黒い(もや)へと還りつつある魔獣を背後に、一瞬の青白い光が見え、ハクの姿が再構築(・・・)される。

「大体こんな感じだ。一撃に威力を乗せることは得意じゃないが、切れ味はそれなりにいいほうだ。だからまあ、現状はカウンター気味になりがちかな」

猫の形を取り戻したハクはそう説明を追加した。

「空気に融け込んでそれを操る能力、か。確かにそんな感じだな」

カイリは事前に聞いていた内容を反芻(はんすう)する。


ハクの能力は自分の体を大気に変化させて攻撃したり、回避したりできるというものだった。また、周囲から視認されにくいというその特性を生かして、諜報(ちょうほう)にも向いているとのこと。自分の体として操作できる体積には一応の上限があるそうだが、増やせば増やすほど細かい操作が利かなくなるため、一概に最大量を使って一気に攻撃を仕掛けるのがいいとは言えないそうだ。感覚器をすべて失い、周囲をどう知覚しているのか疑問に思ったが、本人曰く、不思議とそれはできているとのこと。現状思い当たる欠点は、能力(スキル)の始動時に周囲に突風を起こしてしまう点、ということらしい。

能力(スキル)として使用している本人にも未知の部分が多いものではあるが、主にその有用性が戦闘以外の面で大きく発揮されるタイプのものであった。


ハクの能力について、先の戦闘を振り返りながら休憩をとっていた一行は、一息つき終えると再び対象を探しにかかる。休憩の際に、ものは試しとカイリはハクの能力を使用できるかという試みをした。が、サフィの時と同様、精霊を受け取ろうとした際に、純白の紋様を成していた精霊は霧散して消えてしまった。この時、カイリは初めてハクの紋様の形状を精霊を経由して視認したが、円の中に魔法陣が描かれるという、カイリのものに似たタイプだった。

ちなみに余談ではあるが、サフィはその精霊の形を捉えることはできず、ハクの腹の毛をかき分けて何とか紋様を見ることはできないかと試みたが、ハクがくすぐったそうにするのみで終わったことをここに記しておく。


「近くにはいないみたい。それっぽい気配は感じられないわ」

「同感だ。いまはそれっぽい感覚はないな」

魔獣の気配を探っていた2人から出たのはその気配はしいという言葉。

「今までずっと何かしらの反応があったから、この感覚は初めてね」

そういってサフィはカイリに視線を向けて指示を求める。

「そうだな、このまま森の中を街道と平行に進んでいこうか。何かしらの異変が残っていたとしても、それで被害が出るのは一番避けたい事態だ。今いるのはそれなりに深い位置だから、街道から森の奥まで、その両方を適度に索敵の範囲に収めるなら十分なはずだ」

広範囲を監視できるからこその手であり、サフィもハクもその方向で納得する。

「それじゃあこのまま進もうか」

そう言って一行は森の中を再び歩き出した。


その後もしばらく森の中を進んだが、2体目の魔獣以降それらしい影がサフィとハクの網にかかることはなかった。時間は刻々(こくこく)と過ぎて太陽もてっぺんへと昇り、3人の腹が鳴ったことで持参した昼食を()る。その後しばしの休息をとった後、再び探索を開始した。


沸点…?知らない子ですね。


空気:1.3 (g/l)

猫の体重:3.6~4.5 (kg)

4.0 (kg) × 1000 / 1.3 (g/l) ≒ 3000( l )

3000リットルの目安は、家庭の水道を3時間出しっぱなしにしたときの量だそうです(徳島市HP参考)。だいたい一般的な浴槽15杯分とのこと。

つまり、真面目に質量だけで換算すると結構体積あるな?

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