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003.青の街01

その街は特有の立地をしていた。海と平野と森に囲まれるというその立地は非常に珍しく、それは特有の交通網が発達に貢献していた。

波紋のように広がる水路と、波紋の中心から放射状に伸びる水路。そして街を縦断するように流れる川。それに加えて、舗装された道も水路を補うように敷かれている。これらの交通網が規則正しく整備されている(さま)は、推して誰しもにその高い技術と計画性を感じさせるものだった。気候も比較的温暖で、白や朱を基調としたレンガ造りの建造物が道や水路沿いに連なる。その景観は非常に芸術的で、この街を初めて訪れる者の多くが衝撃を受けることは想像に(かた)くない。

青の街・ラズリー、それがこの街の名前だ。


組合(ギルド)に戻ったカイリは今日の報告を行っていた。

組合は行政局によって認可された組織であり、大きく商農部門、職人部門、警邏(けいら)部門、販売部門が存在する。カイリはそのうちの警邏部門に組合員(ギルドメンバー)としての籍を置いていた。


「魔獣討伐の依頼を受けていたカイリです。依頼結果の報告に来ました」

そういいながら、カイリは受付カウンターに座っている女性に組合員証(ギルドカード)を提示する。受付カウンターは内側が高くなっているため、女性の顔は座っていても視線はカイリの顔から少し下くらいの高さにあった。

「ありがとうございます。カイリさんですね。少々お待ちください」

そう受けながら、女性はカイリから会員証を受け取る。簡単に確認を行った女性は机の下から書類を取り出しいくつか確認をすると、そこに記載を行いながら続きを促す。

「この3日間での魔獣の討伐数は7です。すべて単体で徘徊するタイプのもので討ち漏らしはなし。狼型が6体、熊型が1体で特に目立った異常はありませんでした」

魔獣の討伐数と種類、また遭遇した時の行動型などを組合の受付に伝える。そのほかにも、遭遇した場所なども伝えられる範囲で伝えた。魔獣の問題は街同士の交易などにも影響を与えるため、その情報を仔細に残し、何か問題が発生した場合に参照できるようにすることは重要であった。確認・報告の要点は決まっているので、慣れた者であればこの手順に特段時間はかからない。今回も大事(だいじ)なかったため、この報告をもって、魔獣討伐は一通りの完了を迎えた。


「今回もありがとうございます、カイリさん。報酬はまた後日お渡しします」

受付の女性は記録していた紙から視線を上げ、肩ほどまで伸ばした明るい茶髪を揺らしながら笑顔でカイリにそう言う。

「そういえば、カイリさんと同じタイミングで魔獣討伐を受けられた方も、そろそろ戻られる頃合いですね。皆さん、今回も何事も無く戻られるといいのですが」

顔を上げたことで、日が傾き、茜色に輝き始めた空が視界に入った受付の女性はそう言葉を続ける。

「こうして街に住む私たちや、街道を利用される皆さんが安心していられるのも、カイリさんたちが頑張ってくれているおかげです。本当に、いつもありがとうございます。また依頼が出たときはよろしくお願いします」

そう締めながら、女性はカイリに向かって目礼をした。

「こちらこそ、この魔獣討伐の依頼のおかげで生活が安定しているようなものなのでありがたいです。ほかの奴らも同じだと思いますよ。心配してくれて、ありがとうございます。こちらこそ、またよろしくお願いします」

カイリはそう返事をすると、目礼をして(きびす)を返した。


報告を終えたカイリは、建物のロビーで食事を摂っていた。組合員(ギルドメンバー)が待ち合わせや休憩、情報を交換したりするため、組合(ギルド)関係の建物は入ってすぐロビーになっていることが多かった。またそこで食事を済ませる組合員も一定数おり、組合が飲食物の提供を行うことも数ある収入源の一つとしていた。カイリは組合の入り口から受付までが視界に入る席に陣取り、そこを行き交う人を眺めながら夕食に手を伸ばしていた。

「仕事も一段落したし、明日は休息日にでもするか」

そう思いながら淡々と食事を続けるカイリが、彼の元に歩み寄る足音を捉えるのはそう(かた)くはなかった。


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