表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影はがし  作者: カガワ
6/6

終・影はがし

馬鹿にしやがって、映画だと?そんなはずないのに。


肩を怒らせて歩く男の手には【影剥がし 試写会】のチケットが握られている。


本当の影剥がしを見せてやる。視線を落とし男は影を見る。影は今からどれだけの【影】を食べられるのかと期待しているようだった。食べさせてやるさ、たらふく。試写会には少なくとも100人はいるだろう。


「え」

「やぁ、影山 安火狐(かげやま やすひこ)君。はじめまして」

会場は男と目の前の女の二人しかいなかった。そして女はスーツに下駄を履いていた。

「影あつめ。それで満足していればよかったのにな」

「何を言っているのか…」

会場はライトの具合なのか、影は女の背中の方に向かって伸びている。男が近づけは女は一歩後ろに下がる。

「君は()()()()()()()()、しかし()()()()()()()()()()。はじめは君は誰にも気づかれないことを喜んだのかな。怒られなくてすむと。しかし、繰り返すうちに物足りなくなった。だって、誰も君に見向きもしないんだから」

興味深い、だが醜悪だ、そう言って女は一冊の古びたノートをとりだす。その表紙には【かげ し育日記】とある。

「なんで、俺の」

「普通じゃないから、私のところに回ってきたのさ」

パラパラとノートをめくる。

「君は、()()()()()()、その認識をひろめたかったんだ。…どれくらいかかったのかな」

女はノートの表紙をもう一度見せる。

3年2組 かげ山 安火こ。

「少なくとも20年はかかったようだ」

「うるさい!!」

男は鬼のような形相で女に襲いかかる。女は後ろに飛び男との距離をとった。カランと広すぎる部屋に下駄の音が鳴る。

「自己表現なら他の方法にしろ。小説でも書いたらどうだ、【影の薄い美女】、傑作だったよ、爆笑だ」

「し、知らない!」

「あんな口調で喋る女、悪役令嬢くらいしかいないぞ」

「知らないっていっているだろ!!!」

「名無しで書いていたようだから、私がペンネームを考えておいたぞ、影山 闇ピコとは君のことなんだ」

「黙れ!俺は影使いなんだ!」

男は女の影を狙うが、女は影を背にして男には近づかせない。女は声を上げて笑う。

「君の妄想だ」

「宿題だって影にやらせた」

「母親は君が3年生の時から自分で宿題をやるようになって喜んでいたよ」

「となりのお姉さんの影をとったから気味悪がられた」

「誰だって会うたびニヤニヤと自分を眺める人間を好きにはならない」

「なら!俺の影のコレクションをみせてやる!」

そう言って男は腰に下げた虫カゴを開けた。

そこからは男のお気に入りの影たちが飛び出す。

()()()()()()()()()()

「よく見ろ!」

影は女のまわりを取り囲む。

「君にしか、見えないんだ、その影は」

「そんなはず、ない、だって俺の影は人の影を食べて、大きくなって…!!みろ!俺の影を!!」

「それは成長したからだ、すでに君は27才の大人だ」

「影剥がしは…影は」

「全て、君、一人の妄想だ。だから誰も()()()()()()()()()()()

「う…うまくいっていたんだ、影剥がしを少しずつ広めて、動画もとって」

「もぅ、やめよう。影剥がしは()()()()()

女は誰もいない会場て手を広げる。

「みてごらん、試写会の応募は君しかいなかった。誰も影剥がしに()()()()()。これが現実だ」

男は声を上げて子供のように泣き出した。

「ノート返してください」

女は男に近づき、ノートを手渡した。




「めちゃくちゃ怖かったぞ」

「あはー、お疲れ様」

おっさんと会場の片付けをしながら、カキツバタは身震いをする。

「つまらないで押し通せてよかった」

「よかったよね、持ち主は()()人間だったから。影はもう()()だったね、あれはすでに()()()()()

「あぁ、怖かった」

「まぁ、終わりだよ終わり。ソウゾウシュが諦めたのだから、もぅ、ただの影さ」

おっさんはカラカラ笑い、カキツバタはため息をついた。隠れていたやつは気楽でいいな。

「それで、この部屋を飛び回っている、()、どうするぅ?」

おっさんの呑気な声に、カキツバタは深く深くため息をついた。


影山 安火狐は今後も化け物と共に生きるのだろう。馬鹿だが死ぬほどではない。阿呆が過ぎてもやり直しができないわけではない。


だけど、()()()()()()にはできない。

願わくは、いつか、忘れられる物語。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ