表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影はがし  作者: カガワ
1/6

影剥がし

()()()()って知っているか?


「なんだ、それ?肩甲骨剥がしと関係あるか?」

「ない。逆になんだよ、肩甲骨剥がしって」

「俺も知らんけど」

なら、言うなよ。ケンイチは呆れた様子で席から立とうとする。気が短い奴だ。

「わるい、わるい、ちゃんと聞くって、もう、口挟まないから、影剥がしについて教えてくれよ」

「別に俺もそこまで話したいわけじゃないぞ。友達の友達から聞いただけだし」

へそを曲げたのか、なかなか続きを話さない。

「わかった、この影剥がしで再生数稼げたら、焼肉おごるからさ!な?頼むよ」

「ま、それならいいか」


影剥がしってのは知る人ぞ知る、まだ新しい…()()()ってやつだ。コックリさんとか、ひとりかくれんぼとか、そういう系。


場所は、真っ暗な部屋じゃないとだめだ。ドアにはガムテープを貼ること、もし、部屋が一階なら窓にも貼れよ。万が一にも()()()()()()()()()

部屋が用意できたら、なるべく部屋の中央に座る。

「影さん影さん、遊びましょう。あなたがかくれて、わたしがみつける。ふたりでひとりが今からひとりでふたり。影さん、影さん、隠れてください」

って、言い終わったら目を閉じて30秒声に出して数える。あかりをつけて、自分の足元を見ると影がなくなっている、ソレが影剥がし。


あとは影を見つけて「影さんみーつけた」っていって、目をつぶる。10秒待って目を開いたら元通り。


「は?それ面白いか?」

「お前が夏だしホラー企画やりたいって言うから探してきたんたぞ!」

「明かりをつけて影がなくなっていましたー、それだけ?オチ弱すぎじゃん」

「やっているやつの動画みたら、隠れた影が部屋中飛び回るから結構怖かったぞ」

「すでに撮ってるヤツいるのかよ」

「あ、でも、全然再生数伸びてないし、まだまだこれからがブームって感じ、…多分」

ケンイチの語気が段々と弱くなってくる。確かに動画のネタを頼んだか、これでは小学生の噂話レベルだ。

「その動画絶対トリックだろ。その影、飛び回るのとか編集で入れるのも面倒だしなぁ」

「いや、本気で驚いているように見えたけどなぁ」

ケンイチは自分のスマホを操作して、動画を見せてくる。俺は首を振って動画を止めさせる。

「俺、なるべく他の動画とか見ないようにしているから。まぁ、いいか、嘘なら嘘で、ネタにすれば」

静止画の中に冴えないオタクっぽい男が映っている。再生数は僅か12回。

「お前が、準備が楽で!部屋で撮れて!金がかからないのって言うからだろ!!」

「まぁ、その条件は満たしているな」

ガムテープは部屋にあったはずだ。せいぜい塗装を剥がさないように気をつけよう。夏休みスペシャルとして、生放送でやれば、少しは数字も稼げるかもしれない。


【トモのトモダチちゃんねる】

はーい、トモダチのみんな、こんばんは、トモだよー!こんな時間に生放送で驚いた?一応枠は2時間でとっているけど企画が終わり次第終了ね、俺も眠いしー、アハハ。

はい、それで今日は、前から言ってたホラー回ね!怖い人は今のうちにやめておいてね、まぁ、そんなに怖くないと思うけど…


みんなはさぁ、()()()()って知っている?俺も最近きいたんだけどね、自分の影とかくれんぼして、影を自分から剥がしちゃうんだって。あんまり怖くないよね、でもさ、よく考えてみたら、影がなかったらそれってホラーじゃない。


今、自分の影ある?部屋暗い人は明かりつけてー!


つけた?その影がなくなるって、よく考えてみたら怖いよね。影が剥がれたらどうなっちゃうのかな?


それでは、影剥がし、やっていきます。ちょっと準備するから待ってねー!


録画できているか不安だがPCの部屋から移動し、カメラだけ持って準備した部屋に移動する。

部屋に入り手早くテープでドアをふさぎ、カメラを設置する。真っ暗闇でやらねばならないので、カメラからは何も見えないだろうが仕方がない。


みんなー!見えないかもしれないけど、影剥がしは真っ暗闇でないとできないからしばらく我慢してー!そのかわり、ガンガン話すからねー!


「影さん影さん、遊びましょう。あなたがかくれて、わたしがみつける。ふたりでひとりが今からひとりでふたり。影さん、影さん、隠れてください」


30秒数える。

そして、目を開けて、部屋の明かりをつけた。


「うわぁ!!!マジで影がなくなっている!!」

ケンイチの言った通り、影剥がしは成功したということだろうか、足元にもどこにも俺の影はない。

「みんな、みえる?俺の影マジでないよね!?トリックとかじゃないよ、ほら、カメラの影はあるのに俺の影だけない!」

影がない、それは不思議な感覚だ。影のない足はひどく無防備に見えた。

興奮は次第におさまりつつあった。

影が激しく逃げ回るといったが、影は部屋のどこにも見当たらない。隠れているのだろうか。

「はい、じゃぁ、影探していきますー」

探しても探しても見つからない、おかしいなー、とヘラヘラ笑うが額の汗の量は増えるばかりだ。広い部屋ではない、なのに影が見つからない。

「ちょっと、影剥がしに詳しいトモダチにきいてみるねー」

そう言いながらケンイチに電話する。

「…なんだよ」

「悪いな、寝てたか」

「何時だと思ってんだ」

迷惑そうなケンイチに苛立つ、お前が持ってきた企画だろうが。生放送の時間も伝えたんだから見ていろよ。

「なぁ、影がみつからないんだ」

「影剥がしか?」

「手順どおりにやったのに、部屋の扉のガムテープ、真っ暗な部屋、怪しげな呪文、目をつぶって30秒数える、明かりをつける、なぁ、あってるよな」

「あっている…と、思う。影は暗闇に隠れているんだ、()()()()()()照らしたか?」

「は?え?()()()()()()()から、この部屋に()()()()()()()ぞ」


さぁて、影はどこに隠れたのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ