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朝、迎えに行くから

私は悶々と考える。

花梨の最後の言葉の意味を。

いったいどんな考えを持っていったのだろうか。


もしかして私が大翔のことだと思っているんじゃないだろうか。

流石にどんな理由があろうと花梨……いや友達を傷つける相手に対しては100年の恋も冷める。


そんなことを考えているせいか、なかなか寝付くことができない。

せっかくだし今日あったことを色々と振り返るかのように思い出す。


私は放課後、大翔と帰る約束をしていた。

だから隣のクラスである大翔を迎えに行ったのだ。


今思えば大翔は私に見せつけるかのように花梨を呼び出したのではないか。

でも何のために?頭の中をぐるぐると思考を巡らせる。


ブツブツと音を立てて思考回路から煙が上がるかのように頭が熱くなる。


「……私に止めてもらうためとかじゃないよね?」

ぼそりと思っていたことを口に出す。


いやいや、流石に考えすぎ。

私は頭を左右に振って考えを消し飛ばそうとする。

余計なことは考えずに寝よう、寝よう。


私は布団を被ってまぶたを閉じた。

ピコンとスマホの音が鳴り響く。


私は眠れなかったこともあってかすぐにスマホを手にした。

メッセージだ。送信者は花梨から。

すぐに中身を確認しよう、私は画面をタップした。


メッセージは短い内容が書かれていた。

『朝、迎えに行くから。おやすみなさい。』


私は思わず笑みがこぼれる。

長い間一緒にいたけど花梨と登校をするだなんて久しぶりだ。


あまりの嬉しさに、さっきまで考えていた内容は上書き保存。

見事頭の中からは消え失せた。


『了解。』

一言メッセージを返信してスマホをベッドの上に置いた。


花梨が迎えに来るんだ、流石に朝起こされるのは嫌だし。

今まで恋のライバルとして争っていた分仲良くするチャンスだ。


さっさと寝よう。

私は再び目を閉じた。


ワクワクする気持ちを落ち着かせようと深呼吸をする。


花梨は昔から私にないものをたくさん持っていて憧れだった。

憧れだったからこそ、花梨のライバルでいたいと思っていた。


昔から花梨と私の好きなモノは同じで。

いつも1つしかない玩具を取り合いっこしていた。

大翔と最初に会った時は人形を。そして昨日までは大翔を。


これからはライバルという関係から変わっていくのかな。

私はだんだん眠気を帯びた頭でぼんやり考える。


難しいことを考えるのは、また今度にしよう。

私は思考回路の電源を落とし、意識がプツンと途切れる。



私は昔のことを思い出している。

これは幼稚園のときの記憶だろうか、私と花梨は喧嘩を止めてくれていた大翔に対して懐いていた。


喧嘩していたらすぐ仲裁してくれてみんなが仲良くできるように動いてくれる。

そんなことが出来る大翔をヒーローのように思っていた。


3人で仲良く砂のお城を作っていると花梨は唐突に言葉を言い放った。


「アタシね、大翔と結婚してあげるー!だから大翔、ずっと傍にいるのよ!」

「ずるーい!舞も、舞も、大翔と結婚するー!!だから舞のことお姫様扱いして!」


私は花梨の言葉を聞いて即座に反応する。

そして花梨と同じように大翔に対してプロポーズをした。


「嬉しいけどすぐには答えられないよ。」

大翔は困ったように笑ってやんわりと否定した。


「「えー、なんでなんでー。」」

そんな大翔の言葉を聞いて約束してくれないことに不満を覚えて2人とも頬を膨らませた。

大翔を囲むように、私と花梨は駆け寄って質問する。


「だってまだ子供ですし、大人にならないとわからないよ。」

大翔は苦笑いを浮かべて困り果てていた。

否定もせず、肯定もせず、大人になったらという言葉で逃げている。


「じゃあ、大人になったらアタシか舞、ちゃんと選びなさいよね!」

「そうなったら私たちライバルだね、花梨ちゃん!舞、負けないから。」


私と花梨は大翔を逃がさないと強引に約束を取り付ける。

その頃からだったかな、私と花梨がライバルになったのは。


「わかったけど、二人とも早すぎるよ。それじゃ約束だね!」

私たちはそれぞれ指切りげんまんと約束事のおまじないをした。

小指同士をしっかりと絡み合わせる。


そんな私たちのやり取りを建物の影から見つめる少女の姿が1人。

羨ましそうにこちらを見つめている。


「……あ。」

私が少女のことに気付くと大翔も同じように気づいた。

親指をビシッと立てて少女の方へ走っていく。


「任せて、ねぇ君名前は?」

大翔は少女に優しく呼びかけた。


「……亀島……静。」

名前を聞かれた少女はオドオドとしたまま静かに名前を答えた。


「じゃあ、静ちゃんだね。一緒に遊ぼうよ!」

「う、うんっ!」


大翔はにっこりと笑いかけると少女の手を握りしめた。

私たちの元へ引っ張ってきてそのまま4人で仲良く遊ぶのだった。



次に気が付いたときには、眩い光が窓の外から漏れていた。

チュンチュンと雀の鳴く声が聞こえる。


朝だ、起床時間だ……。

私はまだまだ眠たい頭を動かして学校に行く準備をする。


花梨が来る前にちゃんと準備をしないと。

私はテキパキと慣れた様子で準備を進めていく。


みっともないところはライバルとして見せることできないし。

私は心の中でやる気を奮い立たせる。


「舞ー!!珍しいお迎えが来てるわよー!!」

母親が私を呼ぶ声がする。


「今行く!」

私は元気よく答えた。


花梨ってばもう来たのか。

私は時計を確認する。7時20分、まだまだ家を出るのには余裕のある時間帯だ。


素直になる練習についての相談でもあったのかな。

私はそんなことを思いながら階段をゆっくりと降りていく。


そしてゆっくりと扉を開けた。

「おはよう、ごめん。今からご飯だから待ってて……え。」


私はパチパチと瞬きをする。

まだ夢の中にいるのかと思ってほっぺたをゆっくりとつねった。

僅かな痛みによって夢ではないことを実感する。


私は憎悪に満ちた声を出す。その場にいる相手に対して声をかけた。


「なんでいるの?大翔。」

私の目の前には大翔がいる。

何食わぬ顔で食卓に座って私のことを待っていたのであった。


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