私のライバルを傷つけるんじゃない!
女の子同士のお話です。
前作『仕事をクビになったおじさん、謎の空間に召喚される。「チート能力ないなら元の世界に帰らせてくれ」と言っても遅かった。~元の世界に戻れなかったのでメスガキママの赤ちゃんになりました~』は登場人物2人でしたが今作は既に2人以上いるので人数多いかもしれませんが頑張ります。
出来るだけ頑張るので応援をお願い致します。
私こと鶴川舞は衝撃的なシーンに遭遇してしまった。
誰も居ない校舎裏、私の恋のライバルであり新田花梨は思い人である及川大翔に呼び出された。
告白をするのかもしれない。そう思った私の足は思わず後をつけ、こっそりと覗き込んだ。
時間は放課後、夕日をバックにした花梨の頬は真っ赤に染まっている。
彼女はツインテールの髪の毛をくるくると指先に巻き付ける。
期待しているのか彼女はもじもじと身体を小さく揺すった。
巨大なメロンがゼリーのようにプルンと揺れる。
なんて羨ましいんだろうか、女の私から見てもスタイルが良くて妬ましい。
心の中でハンカチを噛みしめる。
いつまで妬んでいても仕方がない。
私は視線をあげる。彼らの様子を校舎の影から見守った。
甘い甘い雰囲気が漂う。まるで生クリームを舐めているかのような甘さだ。
私は思わず息を飲む。このまま負けヒロインになってしまうんだろうか。
胸が締め付けられて苦しくなる。
ただでさえぺったんこな胸なのに凹んでしまったらどうしよう。
「話って何?アタシ、暇じゃないんだけど……。ま、こんな場所に呼び出したってことはわかってるけど。」
花梨はフンと大きな鼻息を吐き出す。そして何度も何度も指先に髪の毛を絡ませる。
「いいわ、付き合ってあげる。感謝しなさいよね、あんたどんくさいからアタシがついていないとダメなんだから!」
指先をビシッと大翔の目の前に突き付けた。顔を背けると長いツインテールの髪が勢いよく揺れた。
眉を釣りあげて目を閉じる。花梨は大翔の言葉を待っているようだった。
私は再度自覚をする。私と花梨と大翔は幼馴染みの関係だ。
だけどこの二人は毎朝起こしにくる間柄。
やっぱり二人の間に割って入ることはできなかったんだなと改めて実感をする。
私はこの恋愛ゲームに負けたのだ。二人ともとてもお似合いだ。
大翔は綺麗に整った頭をかきむしる。
丸みがあって柔らかそうな印象を受けるマッシュがぐしゃりと崩れた。
「……いい加減にしろよな。」
大翔は眼鏡をクイッとかけ直した。
低い声を出して花梨を睨みつける。そして冷たく言葉を言い放った。
「上から目線でなんでもかんでも言い出して……うざったいんだよ。」
花梨は思わず言葉を失った。遠くから見てもわかるほど、ショックを受けているのが一目見てわかる。
「もううんざりなんだよ。照れ隠しなのかわからないけどさ。いくら好意があったとしてもそうやってバカにされてて付き合えると思うのか。」
大翔は言葉を吐き出し続ける。花梨の心を折ろうとするかのように畳みかけた。
「付き合えるわけないよな。ばーか、消えてくれ。」
花梨はまるで小動物かのようにぷるぷると震え出した。
あんな姿、今まで見たことがない。
私のライバルである花梨はいつも自信満々だった。
スタイルが良くてお姫様という言葉がとても似あうような女の子だった。
そんな女の子が今たった一人でボロボロになっている。
「都合が悪くなるとだんまりかよ。脳みその栄養、その無駄にでかい胸に吸い取られたんじゃないのか?なぁ、なんとか言えよ。なぁ。黙ってたらわからないんだよ!!」
大翔の毒は未だに垂れ流される。
私の頭は混乱している。
私の好きだった彼から吐き出される言葉は恋という名の道が雨にふられて泥だらけになっていくかのようだった。
優しく微笑んでくれた笑顔は見る影もなく憎しみを表している。
気が付いたら、私は二人の前に立っていた。
私の姿を見て大翔は言葉を吐き出すのをやめる。花梨は涙をゆっくりと手で拭った。
口をパクパクとさせて何かを伝えようとするもまだ言葉は出てこないようだ。
そんな花梨、ライバルの姿を見て私には新たな感情が産まれる。
彼女を守ってあげたい。お姫様には守ってあげる騎士が必要だからだ。
今、この場に存在しないなら私がなるしかない。
私はそのまま勢いよく大翔の頬を思いっきり引っ叩く。
「うるさい!これ以上花梨に何か言うな。私のライバルを傷つけるんじゃない!」
頬を引っ叩いた手でしっかりと花梨の手を掴んだ。
力を入れて体を引っ張る。花梨は驚いた様子でパチクリと瞬きをした。
「えっ、ちょ、ちょっと……。」
花梨はパクパクとした口から困惑の声を出した。
「……。」
私は無言のままズカズカと大きく地面を踏む。
一歩、一歩とその場から離れていく。
「ちょっ、待てよ。」
大翔が私を呼び止める。私はその言葉を聞いてゆっくりと振り返った。
長い髪の毛がゆらりと揺れる。
「心配しなくてもこのことは言うつもりないから。それじゃ。」
私は威圧するように大翔を睨みつけた。
大翔は何かを言いたいのか苦虫を噛み潰したように渋い顔をした。
そんな彼の姿を見て回想が頭の中を過ぎる。
なんで彼を好きだったんだろうか。
最初に出会ったとき、喧嘩をする私たちの間に割って入り仲直りをさせてくれた大翔。
その優しさに惚れたんだっけな。
だからだろう、なんで大翔は暴言を吐いたんだろうか。
頭の中に疑問が残るものの、今はそんな場面ではない。
今の花梨は花梨じゃない。
ライバルとして見てられないから助けてあげないと。
私は心の底から強く思うのであった。
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