アリス、大食いチャレンジに挑む
ある日のこと。
俺たちは、すっかり常連となった店を訪れていた。
「師匠~! 実は、今日は食べ放題チャレンジがありまして――要はタダでご飯が食べられるんです!」
アリスが、すっかり上機嫌でそんなことを言っていた。
「大丈夫? お金は要らないなんて言ってたけど……」
「本人、自信満々だから大丈夫…………、だろうけど念のため3人分。お金もっとくか」
ささやきあうエミリーと俺。
そうして俺たちは、いつもの店に入るのだった。
「よく来たな、アリス!
今日こそは年貢の納め時! 大食いチャレンジは、新たな領域に到達したァ!」
「はいはい、おじちゃん。いつも言ってるよね」
定位置とかしていたカウンター席に、俺たちは座る。
「来たな、大本命!」
「今回は、店も本気も本気だぞ。どうにかなるのか……?」
「大食い自慢のホッさんも陥落した。アリスの嬢ちゃんでも危ないんじゃ――」
大食いチャレンジ。
それはお店が用意した専門のメニューを、一定時間内に完食したら無料になるというもの。
すでに何人もの冒険者が挑み、散っていったらしい。
店内には、うめき声をあげながら、料金を泣く泣く支払っている冒険者の姿がった。
アリスは、そんな様子など歯牙にもかけずに、
「師匠! デザートは、ドラゴンのソテーがいいです。
食後の運動にもピッタリです!」
「おのれ! いつもタダ飯喰らいやがって――だがそれも今日まで!
へい、お待ち!」
そう言って出てきたのは、店も全幅の信頼をおく新メニューである。
「なっ!?」
「これはっ!」
俺とエミリーは、目を丸くする。
出てきたのは、見ているだけで胸焼けしそうな揚げ物の山であった。
バカでかいどんぶりの上に、奇跡的なバランスで巨大な揚げ物が数メートルに渡って積まれている。
(これが店側の本気……!)
冒険者は、基本的に大飯ぐらいが多い。
その挑戦をはねのけてきた実績は、さもありなんといったところか。
(い、いくらするんだこれ?)
引きつった顔になる俺をよそに、
「なるほど、今日は揚げ物で来たんですね!」
アリスは、そんなことを笑顔でいい、パクパクと揚げ物の山に取り掛かるのであった。
***
「す、すげぇ!」
「さすがはアリスの嬢ちゃんだ。
揚げ物をジュースのように飲み込んでやがる」
「まるでペースが落ちねえ!?」
アリスの周囲には、ギャラリーが出来ていた。
大食いチャレンジなどという気負いもなく。
アリスは、巨大な唐揚げを、なんの気負いもなくパクパクと平らげていく。
「師匠! やっぱりこのお店は最高ですね!」
「あ、ああ……」
小さい体のどこに入っていくのだろう。
果たして大勢のギャラリーが見守る中。
アリスは、特盛りの唐揚げをぺろりと平らげたみせた。
「そ、そんな!
食べごたえを重視した特選肉を使っているし、量だっていつもの倍はあるのに――」
「食べごたえがあって美味しかったです
おじちゃん、お代わり!!」
「おまえはうちを破産させる気か!?」
崩れ落ちる店主に、笑顔でお代わりと言い放つアリス。
「アリス嬢の不敗記録は更新か!」
「やっぱりよく食べると魔法が上手くなる。古事記にもそう書いてある!」
「そんな古事記、捨てちまえ!」
ガヤガヤと言いながら、立ち去っていく冒険者たち。
「つ、次こそはアリス嬢に負けない究極の新メニューを開発してやる!!」
そんな店主の決意を聞きながら。
俺たちは、店を後にするのであった。
――行き先は、ドラゴンの現れる迷宮。
有言実行。アリス、まだまだ食べる気満々なのである。
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