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アリス、大食いチャレンジに挑む

本作の書籍が発売中です。

2巻は、8/9に発売します!


1巻はアンリミテッドでも読めるので、是非是非、ページ下のリンクからお読み頂ければ嬉しいです!(ウェブの内容とは、ほぼ別物になっています!)



挿絵(By みてみん)

 ある日のこと。

 

 俺たちは、すっかり常連となった店を訪れていた。




「師匠~! 実は、今日は食べ放題チャレンジがありまして――要はタダでご飯が食べられるんです!」


 アリスが、すっかり上機嫌でそんなことを言っていた。



「大丈夫? お金は要らないなんて言ってたけど……」

「本人、自信満々だから大丈夫…………、だろうけど念のため3人分。お金もっとくか」


 ささやきあうエミリーと俺。

 そうして俺たちは、いつもの店に入るのだった。




「よく来たな、アリス!

 今日こそは年貢の納め時! 大食いチャレンジは、新たな領域に到達したァ!」

「はいはい、おじちゃん。いつも言ってるよね」


 定位置とかしていたカウンター席に、俺たちは座る。



「来たな、大本命!」

「今回は、店も本気も本気だぞ。どうにかなるのか……?」

「大食い自慢のホッさんも陥落した。アリスの嬢ちゃんでも危ないんじゃ――」



 大食いチャレンジ。

 それはお店が用意した専門のメニューを、一定時間内に完食したら無料になるというもの。


 すでに何人もの冒険者が挑み、散っていったらしい。

 店内には、うめき声をあげながら、料金を泣く泣く支払っている冒険者の姿がった。



 アリスは、そんな様子など歯牙にもかけずに、


「師匠! デザートは、ドラゴンのソテーがいいです。

 食後の運動にもピッタリです!」

「おのれ! いつもタダ飯喰らいやがって――だがそれも今日まで!

 へい、お待ち!」



 そう言って出てきたのは、店も全幅の信頼をおく新メニューである。


「なっ!?」

「これはっ!」


 俺とエミリーは、目を丸くする。



 出てきたのは、見ているだけで胸焼けしそうな揚げ物の山であった。

 バカでかいどんぶりの上に、奇跡的なバランスで巨大な揚げ物が数メートルに渡って積まれている。


(これが店側の本気……!)


 冒険者は、基本的に大飯ぐらいが多い。

 その挑戦をはねのけてきた実績は、さもありなんといったところか。



(い、いくらするんだこれ?)


 引きつった顔になる俺をよそに、



「なるほど、今日は揚げ物で来たんですね!」


 アリスは、そんなことを笑顔でいい、パクパクと揚げ物の山に取り掛かるのであった。



***


「す、すげぇ!」

「さすがはアリスの嬢ちゃんだ。

 揚げ物をジュースのように飲み込んでやがる」

「まるでペースが落ちねえ!?」


 アリスの周囲には、ギャラリーが出来ていた。


 大食いチャレンジなどという気負いもなく。

 アリスは、巨大な唐揚げを、なんの気負いもなくパクパクと平らげていく。



「師匠! やっぱりこのお店は最高ですね!」

「あ、ああ……」


 小さい体のどこに入っていくのだろう。




 果たして大勢のギャラリーが見守る中。

 アリスは、特盛りの唐揚げをぺろりと平らげたみせた。



「そ、そんな!

 食べごたえを重視した特選肉を使っているし、量だっていつもの倍はあるのに――」

「食べごたえがあって美味しかったです

 おじちゃん、お代わり!!」

「おまえはうちを破産させる気か!?」


 崩れ落ちる店主に、笑顔でお代わりと言い放つアリス。



「アリス嬢の不敗記録は更新か!」

「やっぱりよく食べると魔法が上手くなる。古事記にもそう書いてある!」

「そんな古事記、捨てちまえ!」


 ガヤガヤと言いながら、立ち去っていく冒険者たち。



「つ、次こそはアリス嬢に負けない究極の新メニューを開発してやる!!」


 そんな店主の決意を聞きながら。

 俺たちは、店を後にするのであった。




 ――行き先は、ドラゴンの現れる迷宮。

 有言実行。アリス、まだまだ食べる気満々なのである。

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お読み頂きありがとうございます!!

▼ 10/14 発売です ▼

古代魔法
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