1. 古代魔術師、勇者パーティを追放される
「オリオン! 貴様は今日かぎりでクビだ!」
それは突然の宣告だった。
声の主は、パーティリーダーの勇者オリバー。話があると宿の個室に呼び出され、部屋に入った矢先の出来事であった。
「オリバー、いきなりどうしたんだ? これまで一緒に頑張ってきたじゃないか!」
「黙れ! この寄生虫が!」
オリバーと俺は、生まれ故郷を同じくする幼馴染だ。旅立ちから実に4年、数々の困難を共に乗り越えてきた大切な仲間だと俺は思っていたのだが……。
「寄生虫って、どういうことだよ?」
「はん。どうやらパーティのお荷物は、自覚すら無いらしいな!」
オリバーは、一方的にまくしたてた。
「魔法師として、我が勇者パーティに所属しておきながら、ろくに基礎魔法すら使えない。これまでパーティに居られたことをありがたく思え!」
オリバーの言うことは事実だ。
この世界の魔法は、炎・水・土・風・闇・光の6属性に分類される。そして俺の使う魔法は、その6属性魔法のいずれにも属さなかった。
「たしかに俺の使う魔法は、カテゴリエラーとしてギルドでのランク付けは最底辺だ。それでも俺の魔法はパーティに欠かせないものだって、みんな言ってくれていたじゃないか!?」
俺が使うのは、6属性魔法には当てはまらない固有魔法だ。ギルドでは評価されない力ではあったが、修練を積み、支援魔法に攻撃魔法と、パーティの戦力として十分役に立ってきたはずだ。
「黙れえ! おまえの魔法なんて、あっても無くても変わらねえんだよ!」
俺の言葉に、激昂したようにオリバーは喚き散らす。
「それに6属性魔法すらろくに使えない落ちこぼれが、メンバーに居るだけで、恥ずかしくて仕方がない。ずっと目障りだったんだよ!」
喚き散らすオリバーを見て、俺は愕然とした。
オリバーとは、勇者に選ばれてからずっと一緒に旅をしてきた。幼馴染で、大切な仲間だと思っていたのに、裏ではそんなことを考えていたのか。
「本当に良いのか? このパーティーで、魔法はすべて俺が担ってきた。俺の使う支援魔法が無ければ戦力は大きく下がる。それに魔法攻撃しか効かない相手が出てくれば――」
「はっはっは。役立たずのおまえに代わって、すでに優秀な魔法使いをスカウトしている! クワッド・エレメンタルのベテランだ!」
クワッド・エレメンタル。
すなわち4属性まで属性を組み合わせて、魔法を発動できる上級魔法使いだ。俺も固有魔法しか使えない代わりに、必死に修練を重ねて、似たようなことはできるようになったけど、オリバーが俺のことを要らないと言うのなら……。
「分かったよ、そういうことなら仕方ない。オリバー、これまで一緒に旅が出来て良かったよ。どうか君たちの旅に、これからも精霊の加護があらんことを――」
「ふっはっは、それはどうも! 基礎魔法すら使えない魔法使いが、この先どうやって生き残るか楽しみにしているよ。ひっひっひ、案外野垂れ死んじまうかもな!」
オリバーは、底意地悪い顔で笑った。
そうして俺は、勇者オリバーのパーティを追放されたのだった。
◆◇◆◇◆
勇者オリバーは、まだ知らない。
魔術師オリオンを追放したことにより、勇者パーティの戦力はガタ落ちになり、国中の信頼を失っていくことを。さらには、大切なパーティメンバーに見切りを付けられることを。
勇者オリバーの破滅は、ここから始まることになる。
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