第8章‐2 ミラクル227
財布がないという絶望的な状況の中、妖精に救われたケイとユカリ。
昔から泣き虫は、泣き止んでから1時間後経っても目は赤くなったままだった。
久々に泣いたからか、涙腺がやられたのかも知れない。
ケイの事をいつでも面倒みるユカリは心配そうにこう言い出した。
「ケイ、私がついているから安心してね」
「早い所財布が戻ってこないと心はいつまでも傷ついたままだぜ」
本音をはっきりと口に出したケイ。
そんな彼を元気付けるように、右手に持っていたステッキを使って光の飛沫のような物をかけた。
キラキラと輝く、癒しの効果がある物である。
妖精のステッキが利いたのか、ケイは少し晴れやかな表情になったような気がした。
「妖精がお供してくれるなら、最終的に問題は解決できるよな……皆頑張ろうぜ」
「やっとその気になったわねケイ。私だってもちろん頑張るよ!」
ケイの前向きな態度により良い気分になったユカリ。
取り合えず、財布とリュックをひったくった犯人を捜し始める。
ケイとユカリはポケットにスマートフォンを閉まっていた為、調べる手段に関しては困らない。
しかし、スマートフォンだけで犯人の居場所をつきとめるのはほぼ不可能である。
とは言え、妖精にはそんな不可能を可能にする力が宿っていた。
妖精は魔力を額に集中させ、両目を閉じた。
すると、犯人の居場所が見えた――彼女の視野に映ったのは、どこかの空高い場所である。
犯人の居場所が分かった所でケイとユカリに伝える。
「ねえ、犯人はどこかの空高い場所にいるわ」
「そんな抽象的な情報だけじゃ分からないよ」
先程までの前向きは何だったのか、と感じられるような表情でケイは答えた。
でも、妖精にはしっかりと”どこかの空高い場所”へのルートを把握していた。
「ちゃんと聞いて。その”どこかの空高い場所”に行くには、深い森の中を抜けて、険しい岩山を登って、空を飛んだ先にあるわ」
「本当だろうな。ウソだったらマジ怒るから」
ちょっと不安げなケイはキレ気味に妖精に言った。