第3章-4 ゼロから始める夢空間生活
――相変わらずユカリの暴走的な行動が止まらない。
ケイは彼女を止めようとするがそれは無理な状態である。
いくら夢空間だからとは言え、何かあった時のデメリットをユカリは全く考えない。
それから六時間後経った。
夢空間は時間帯に関係なく常に夜であり、常に夜空にはオーロラが浮いている。
ケイはすっかり身も心も疲れているが、ユカリは疲れすら全く感じない。
やはりパチンコ店で大金を手に入れた事が大きいのか、もはやユカリの感覚はおかしくなっていた。
なんと、ユカリはコンビニでタバコを購入しては、酒もガンガン飲み始めた。
自分の身体にまで歯止めが効かなくなったようだ。
ケイは自分の身体を守ろうとする意思が強く、タバコも酒もやらない。
「ユカリったら、タバコも酒もやりすぎは身体に良くないって……」
「うるさいわね!」
「うぐっ……!」
ユカリはケイの注意を聞いた事により逆上して彼の顔面を思い切り殴った。
その痛みは尋常ではなく、ケイは痛さのあまりその場に座り込んでしまった。
今まで経験した事のない痛みにより、意識が遠のきそうな様子。
その後もユカリはタバコも酒もやめる事なくどんどんやり続けた。
――それから一時間後、ユカリはタバコと酒で気分が頂点にまで高まった所でさりげなくケイの肩に手を当てた。
ケイにとって彼女がもはや味方ではなく敵に思えた。
「痛いな! 一緒にお供している僕の顔を殴りやがって……」
「あーら? 悪いかしら?」
顔面の痛さのあまり怒りを隠し切れない表情のケイを見ても、ユカリは相変わらずテンションは高いままだった。
それに彼女の顔は酒で真っ赤に染まっていて、口からはタバコの強い匂いが発していた。
今、彼女の脳には異常な状態である。
身体からはSOSが出ている事にユカリは自分でも全く気づいていない。
ケイはそんな彼女を正常な状態に戻したいと思っていても、肝心の回復魔法を覚えていない。
困りに困った結果、今度はケイがユカリの右手を引っ張っては一緒に公園に移動した。
そのケイには尋常ではない疲労感を抱えていて、今すぐにでも一休みしないと今にも倒れてしまいそうな状態である。