第2章-3 屋敷と異世界生活
「ほら、笑って笑って」
「ユカリ! そんなに写真撮ってどうするんだよ。インスタには挙げるなよ」
「はいはい、しないわよ」
写真を撮る事を嫌がっているケイに対し、彼を可愛がる事に熱心のユカリ。
二人共今いる場所は異世界の街通りである。
人が多い中、相変わらず陽気のユカリは自分の綺麗な脚を見せびらかそうとスカートを思い切り短くしていた。
近くにいる何人かの男性はユカリの脚に注目しているが、それでも彼女は全く気にしようとしない。
ケイは人見知りなのか、周囲の視線が集まる事には苦手なのかびくびくしている様子。
それに対しユカリは常にテンションが高めであり、ケイと手を繋いだままだった。
ユカリの荒い行動っぷりに呆れたケイは強めに言ってやろうと口を開く――
「ユカリ! 少しは空気読もうぜ……僕を可愛がりすぎなんじゃないのか? 君は僕のお姉さんじゃないんだぞ」
「あら、ごめんね」
――その時、近くで犬の吠える声が聞こえてきた。
「ワン!ワン!」
「うわっ、こんな人口密度の高い街に犬でもいるのか? ……聞き違いだよな」
ケイは犬が苦手なのか、さりげなくユカリの肩をつかんだ。
そんな彼に対してユカリは全く動じる事なく、犬の吠える声を聞いて可愛いと思っている様子。
「異世界にまで犬がいるとは、異世界最高ねー!」
「ユカリ、少しは緊張感持ってから物を言え! それと少しは慎重になったらどうなんだー!」
ユカリの暴走を止めようと大きめの声を言ったケイ。
街中で大声を上げた事を恥ずかしく思っているのか、赤面した。
――それから時間が少し経つと、森の中から何匹かの野犬が襲って来た。
それを見たユカリは先程までは高揚な表情から戦闘に対する真剣な表情へと早変わりした。
強力な魔法で一掃してやろうと右手を前方へ向けたまま魔力を集中させて――
「”マジックブリザード”!」
猛烈な吹雪が野犬に襲い掛かった。
風速も凄まじく、一瞬で野犬を雪で凍り漬けにさせた。
そのダメージ量は異様に大きく、見ているケイは心まで凍り付けになりそうなレベルだった。
ユカリは前もって魔力に極振りしていたからか、なんとあっさり野犬を一掃した。
思い通りに軽々と野犬を一掃した事により自分でガッツポーズをしたユカリ。
「ビクトリー! この世で私の魔力を超える者はいないわね!」
「自分で誇張するように言いやがって。僕も負けていられないぜ」