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第13話 皆の気持ちと、決断

 夕食を食べてる間、上の空だったせいか皆に心配されたが……何でも無いと応えると、一人だけ早くに食事を終えて席を立った。


「これまで、色んなことがあったよな」


ミーティングルームへと向かう廊下を歩きながら、思わずそんな独り言が口からもれる。


 ナナとミヨコ姉に会った時の事、ユフィと会った時の事、騎士団で活動していた時の事、リーフィアやシャーロットに会った時の事、学園での日々の事……様々な思い出が湧き出しては、消えていく。


楽しいだけでは無かったが、それでも全てが鮮やかに色づいていて、かけがえのない毎日だった。


――全てが、忘れたくなどない記憶


――それらを忘れる位ならば、死んだ方がましだと思える程に


 先日戦った黒い天使――彼女は、自分を信じる全ての人の為に、身も心も削って戦い……堕ちていった様子が、日記に克明に記されていた。


 その心の在り方は尊敬されてしかるべきものだが……結局、周りも自分も不幸になってしまった彼女が正しかったとは俺には思えない。


「……だから俺は、アンタとは違う道を選ぶ事にするよ」


 そう呟きながら部屋へ入ると、既に団長が腕を組んで円卓に座って待っていた。


「団長、もう来てたんですね」


「今日の仕事は一通り終わったからな……それに、今回俺は騎士団としての意向を伝える為に来たんだ。遅れるわけにはいかないだろ」


「……ありがとうございます」


 そう言って頭を下げた後、団長と向かい合う形で席に座る。

「ルーランから聞いたが、ミヨコ達の意思を尊重するらしいな?」


 確認する様にジッと団長が俺の瞳を覗き込んできたので、頷き返す。


「そうか……分かった」


 短く団長が応えた後、俺と団長は皆が来るまで学園での生活等、さしさわりの無い会話をした……。


 ……その後、段々とメンバーが集まり始め、ミーティングルームに到着してから20分が経過したころ、部屋には本日の話し合いに参加するメンバーが全員揃う。


 メンバーとしては、騎士団の代表として団長、俺の主治医兼、医学的な見地を説明するルーランさん、そしてそれ以外は指輪の所有者たるナナ、ミヨコ姉、ユフィ、リーフィア、シャーロットと俺だけだ。


「それじゃあ、全員揃ったことだし、話し合いを始めようと思うが……今回皆に集まってもらった理由を、センの主治医でもあるルーランの方から説明させてもらう」


 そう言って団長が言うと、ルーランさんが説明を始める。


「皆には軽く説明していたけど、今回集まってもらった理由は、セン君に今後発生しうるリスクと、またそれに纏わる契約についての話よ」


 そう言ってルーランさんによって話された内容は、日中俺が説明を受けた内容とほぼ同一であり……話が進むにつれて皆の感情が、変化していくのを肌で感じ取った。


「――と言う訳で、セン君をこれ以上使徒化させないためにも、貴方達には彼の監視役になってもらいたいと考えているんだけど……ここまでの話で、何か質問とかある子はいるかしら?」


「なんで……」


 ユフィがボソリと呟いたのが聞こえ隣を見ると、鋭い目で睨んで来た。


「何でセンはいつもいつも、取り返しのつかなくなるところまでやっちゃうの!」


「……ごめん、ユフィ」


 怒っている様な、泣いている様な顔のユフィに頭を下げると、悲痛な叫びが飛んでくる。


「別に謝ってほしいわけじゃない、もっと……もっと、自分を大事にしてよ! もし、センに何かあったら、私は……」


 そう言って、言葉を詰まらせるユフィを見て、俺の胸も同時に締め付けられる。


「ねぇ、弟君」


 声がした方を向けば、目尻一杯に涙を溜めたミヨコ姉が、悲しげな顔でほほ笑む。


「……もう、終わりにしよ? 私、弟君がこれ以上傷つくのを見るのは、耐えられないよ。どこかで皆と静かに暮らそう?」


「ミヨコ姉……」


 ……出来る事なら、俺もそうしたい。


 だがそんな事をして、学園や騎士団の後ろ盾が無くなったら……天ノ御子開発機関をはじめとした各組織からすぐに狙われるのは明白だ――そう思い、俺が渋い顔をしたのが分かったのか、ミヨコ姉が首を横に振る。


「ゴメン……そんな事無理なのは、分かってる。でも、弟君を失うくらいなら、私は何を捨ててでも逃げるから」


 ミヨコ姉が、コレまで聞いたこと無い程に強い声でそう言ったので、思わず息を飲んだ。


「……お兄ちゃん」


「なんだ? ナナ」


 話の間ずっと俯いていたナナが、困った様な顔でこちらを見て来る。


「私は、お兄ちゃんが私とミヨコお姉ちゃんの為に、天使について調べてくれてたのを知ってる……だから、お兄ちゃんには感謝してるし、お兄ちゃんがくれた今の生活はすっごく幸せ」


 そう言ってほほ笑んでくれるが、すぐにその顔は悲しげなものになる。


「だけど、もうお兄ちゃんだけが頑張る必要は無いと思うの。もっと、私達を頼ってくれると嬉しいな」


「……ありがとう、ナナ」


 優しく、包み込む様な声でそう言われて、俺は思わず感謝すると共に首を垂れた。


「セン……ごめんなさい」


 突然、リーフィアに謝られて俺は逆に慌てる。


「どうかしたのか? リーフィア」


「私は以前、センたちが伯爵家へ奇襲をかけた時にはその場に居なくて……今回は現場にはいたけど、結局なにも力になれなかったわ」


「いや、そんな事はないだろ」


 そう言ってリーフィアの言葉を否定しようとするが、リーフィアは首を振った。


「いいえ、私の力不足だったのは事実だわ……でも、だからこそ、今回の件でセンが雷天を使えなくなった分も含めて、強くなるから。絶対に、強くなってみせるから……」


 強い瞳で言われて――拳から血がにじむ程強い思いで言われて、俺は静かに頷いた。


「ねぇ、セン……私には、かつてセン達に何があったのかは分からない」


 そこで一旦話を区切ったシャーロットが、俺を改めて見つめてくると、珍しくも悲しげな声で続きを言った。


「だけど……もし、私から初めての友人――セン・アステリオスを奪っていくつもりなら、私は貴方を一生恨み続けるわ」


「……ああ、分かったよ」


 不器用だけど、真摯なシャーロットの気持ちを改めて受け止める。


 皆の……一人一人の思いを、改めてぶつけられた俺は、申し訳なさと共に、彼女達に対する深い感謝の気持ちを覚えた。


だから、その気持ちを皆に伝えようと思う。


「ごめん、そして今までこんな俺について来てくれて、本当にありがとう」


 そう言うと、一人一人へ頭を下げる。


「聞いての通り、俺はこのまま行けば、後1,2回も雷天を使ってしまったら、人として戻れなくなるんだと思う」


 そう言うと、皆が悲痛な顔をした。


「正直、今回の話を聞いて俺も恐怖を感じた……だから、原則雷天を使うつもりは無い……だけど、俺はもし皆の中の誰かが危険な状況でかつ、他に方法が無いのなら、雷天を使いたい」


 雷天を使いたいと言った瞬間、皆が目を見開くが言葉を続ける。


「この思いは――皆を何があっても守りたいという気持ちだけは譲れない。……だから、皆で今後の話をして行くためにも、出来れば指輪の契約を結んで欲しい」


――支離滅裂な事を言っているかもしれない


――理解されないかもしれない


――でも、これだけは譲れない気持ちだから


 ……そう思って頭を下げると、皆は大きなため息と、幾つかの愚痴を言いながらも了承してくれた。

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