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【番外編】ユフィの幸せな1日

 私、ユフィ・カレリンは今日人生の大きな岐路に立っていた。


 これまでの人生でもいろいろな事が有ったけれど、その中でも指折り……は言い過ぎかもしれないけど、兎も角今日は大事な日だ。


「ユフィ、こんなに洋服持ってたんだねー……ていうか、今日は一段と気合入ってるね?」


 床に広げた洋服の数々を眺めていると、同室のリンが何時ものジャージ姿で、肩越しに覗いて来た。


「ちょっと、近いってば」


「えー、いいじゃん。てかユフィは肌白いし、ちっちゃ可愛いから、フリフリの服とか似合って良いよねぇ。私とか背高いし陸上やってて黒いから、絶対無理」


 そう言って私の服を手に取って笑う彼女は、170cm近い高身長とスラリと伸びた手足からまるでファッションモデルの様だ……一方私は彼と出会ってから殆ど身長が伸びてない。


 身長差は、年々広がるばかりだ。


「私も、リンみたいな身長欲しかった……」


 ボソっとそう呟くと、リンがニッと笑い私の頭を撫でて来る。


「ユフィはそのまんまで十分可愛いんだから、それで良いんだよ。私は何時ものランニング行って来るけど、ユフィは彼とのデート頑張ってね」


「べ、別に彼氏じゃない!」


 そう叫ぶがリンは、ニシシと笑って外へ出て行った。


「もうっ……」


 そう呟きながらも、思わず口元がほころんでしまう。


 今日は、学園入学して以来初めての私の誕生日。


 学校では毎日会ってるし、週末も一緒に過ごすことが多いけど、それでも今日は特別だ。なんせ彼が、珍しく自分から誘ってくれたんだから。


 思わず鼻歌なんて歌いながら、集合時間――10時までにバッチリ準備をしなくてはいけない。


 彼と出会って5年――本当に色々あった。


 悲しい事や苦しい事も中には有ったけれど、殆どは幸せで楽しい記憶ばかり。


 この瞳――精霊眼を手に入れてからは色々なモノを見てきて、自分の境遇を呪う事も有った。


 それでもおばあ様と出会い、2人で過ごしていく内に徐々に心の闇はほぐれてきた。


 次第におばあ様と過ごす日々が当たり前になり、普通に生活できるようになるにつれ、ちょっとした欲も出て来たりして……その、年ごろの女の子としては、色々想像もしてたのは、多分そんなに変な事でも無かったと思う……思いたい。


 ただ、私のこの眼の事を知っても普通に接してくれる人なんて、おばあ様くらいしかいないと思ってた……そんなある日の事、彼と出会った。


 おばあ様へのロザリオを探しに街に出たら、偶然人にぶつかって……咄嗟に両目を開けて感情を覗いてしまったら、初対面であるはずなのに、何故か私を知っている……私への、その、深い愛情を持っているのが伝わって来て、思わずらしくもない行動を取ったりもした。


 その後、センと2人で襲われて……おばあ様と一緒に過ごした思い出の教会が燃やされて、その犯人たちを倒して……騎士団に入った。


 彼に惹かれ始めたのは、いつからだっただろうか?


 自問自答してみるけれど、良く分からない。


 出会った瞬間だったかもしれないし、廃墟となってしまった教会で震える彼を地下から引き上げた瞬間だったかもしれない……。


 ただ一つ言えるのは、私ユフィ・カレリンは、彼にどうしようもない程、心惹かれてしまっているという事実だけ。


 多分、他の事なんてどうでも良くって、胸を締め付けるこの気持ちは確かに恋なんだって自覚できるから。


「時間は――って、早くしないと」


 思わず思考の海に沈んでしまっていたが、時間は既に9:10。


 これから洋服を決めて、アクセを決めて、髪を整えなきゃいけない。


 後、昨日シャルから借りた化粧品で、慣れないお化粧なんて物にも挑戦してみようと考えているんだ。


 さぁ、急がなきゃ……そう思うけれどやっぱり口元は自然とほころんでいて。


 私の幸せな一日は、そんな風にして幕を開けた。

1週間くらい経過した時点で、番外編の方へ移動します。

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